第二十三話
「いつこんなに強くなった?」
「さぁ? 秋ちゃん天才だから忘れちゃった!!」
「そうか」
剣をこっちに投げてきたと思ったら、高坂が一瞬で剣まで近づいてきた。
あっぶない!
キィン――
「短剣だけじゃ危ないよ?」
「ハッ言ってろっ!」
短剣で上手く防御は出来たけど、高坂の攻撃、初見殺しなんだけど!!
攻撃しようとしたらすぐに糸で逃げられる。
厄介。これはすぐには片付かない。
「ねえ律くん。私、頑張ったんだけどね〜」
「何を頑張ったんだか」
「好きを伝えること?」
「あれは吊り橋効果。嘘に惑わされるなよ」
話しかけてくるのうざいな。好きとか言われても困る。それに俺は高坂は好きじゃない。
「嘘じゃないよ! 私、律くんが好き! ねえ、付き合って?」
「ここまでやらかしておいてそれは都合がいいね。死ね」
「おねがーい!」
うざい。とてもうざいしすばしっこくて攻撃が当たらない。
こいつ頭やばいな。この状態で付き合ってって言うやついる???
早く殺そう。
「あ! もしかしてあの子がいるから付き合ってくれない?」
「お前とは死んでもごめんだね」
「あの子を殺せば付き合ってくれる?」
「聞けよ」
ティカ何も悪くない。何なんだこいつ。自分大好きっ子?
高坂の移動を躱して一発斬りつける。浅いけど入った。
「いたっ……酷いよ律くん!」
「死期が遠のいたね。さっさと殺してやるから大人しくしてろ」
人殺しはしたくないけど、こいつを人として見れない。人型の喋るモンスターに見えてくる。
「リツ! 加戦します!」
魔法陣を壊し終わったっぽいティカが加戦に来てくれた。ありがたいけど、こいつの攻撃は初見殺し。俺が守らないと。
「かわいいね、かわいいね。羨ましいなぁ」
「リツを脅かすアナタを許しません」
「いいなあ。いいなあ!」
「っ――ティカぁ!!」
高坂が一瞬でティカの元に、剣を振り上げて――駄目だ、駄目だ!!!
……あ、れ、高坂の動き止まった……?
「ぁ……ぇ……?」
高坂はゆっくりと地面に倒れた。ティカの手には俺が渡したスタンガン。
咄嗟に使ったのか。よかっ、よかった。
……っ、今は高坂だ。痺れてる今がチャンス。
「リツ、ワタシがやります」
「いい、俺がやる。俺が始末しないといけない」
ティカの手を汚すわけにはいかない。
短剣を握り、力を込めて。深呼吸。
「り、つ、く――」
「しね」
そのまま。心臓目掛けて振り下ろす。
「ぁ……ぁ……」
高坂は少しずつ動かなくなっていく。完全に動かなくなったのを確認してから短剣を引き抜いた。