第十九話
「リツ、何があったのですか? 顔、真っ青です」
頭を抱えていたらティカが俺に近づいてきた。
俺はティカにさっきの出来事を話した。
「……アキさんがどういう方なのか分からないので、あまり何とも言えませんが、話を聞く限りだと危険人物だと思いました」
「俺もそう思う。あと、ないとは言い切れないけど、ティカに怪我を負わせるかも」
「……リツ、何か護身具はないですか」
杖は流石にこの世界では持ち歩けませんので。とティカは付け足した。
護身具……アイテムボックスで探してみる。ずらっと並んだ項目をスライドしていくと、スタンガンの項目があった。
スタンガンの項目を押すとスタンガンが現れた。それをティカに渡す。これならバレにくいし、殺傷力もそこまで高くないはず……使った事ないから分からないけど。
「これは?」
「スタンガン、電気が出るやつ……? 確か、ここ押したら……」
出ると思うボタンを押したら電気っぽい黄色の線が一瞬出た。これを相手に押し付けたら麻痺させる事が出来る、とティカに伝えた。
「ありがとうございます」
「使う機会がない事を望むけど、厳しいかな……なんでこうなった」
「元々そういう方だったのでは?」
「そう……かもしれない」
否定が出来ない。まず父親がああいう感じだったから……あれか。親が親なら子も子。だっけ。
父親は政府側だから最悪な事になる覚悟をしておいた方がいいかもしれない。
ああ、さようなら俺の平穏。ティカだけが癒し。恋心伝えれなくて今の家暮らし。普通なら絶好の告白場面なんだろうが、学校での出来事が大きすぎて告白すらできない。
とりあえず、何かあるまで警戒を解かないように……。高坂の糸の能力がどこまで使えるのか分からないけど……。
ティカに高坂の能力について話した。ティカは警戒を解かないように気をつけます。と頷いた。
片やダンジョンしか潜ってないだろう一般人、片やモンスターが日常的にいる世界のエルフ。そして俺。
レベル差もあるから大丈夫だろうけど……不安だ。
この後は特に高坂が家に来る事はなくて普通に過ごせた。
だけど気を抜く事はしなかった。何があるか分からないし、警戒するに越した事はない。
「リツ、一緒に寝れますね」
「うん」
部屋で一人で寝るのはいざという時危ないので一緒にリビングで毛布を敷いて寝る事にした。家に結界魔法と察知魔法張ったから何かあったらすぐに起きれる。
前はドキドキしたのに今は不安な気持ちしかない。どうして。
一緒に向かいあって寝る。ティカやっぱりかわいい……すき……。
「おやすみなさい。リツ」
「……おやすみ。ティカ」
絶好の告白場面なのに……!!! 不安が勝ってドキドキすらしない……!!!
……はあ……寝よう……おやすみ。