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作者:

まったく暗闇の中にいて目が見えているということは体のどこかがおかしくなっているということはどうして分かるのだろう。見えなくなっているということは聞こえなくなっているということとどこが違うのだろう。それはきっといまだに知らないことだらけだから。まだ起こらないことだらけだから。目の前で寝そべっている人たちがいて。その人たちは多分息をしていなかったとしても。通り過ぎる中で覚えた言葉が言葉が私の邪魔をするのだ。身動きできなくなるのだ。ここから生きて帰れるわけはないのだと。誰かが私に囁いて納得してしまった。今日より昨日より明日よりいつか。いつかよりそれから。私たちにはこれからのことを話す権利がある。今までのことを償う必要が急に訪れた時。体を硬らせてしまった。そのいつかが来て終わるのか始まるのかが曖昧なまま。波打ち際にいる。足跡は消えてしまった。傷は残った。


その日私たちは道を間違えていて遠くの街まで行くつもりが気がついたら夜の海にいた。

鯨に飲み込まれたつもりはなかったがもっと大きなものが光とは真逆の方向を指していた。歩みを進めるべきではないと誰かが言ったがそれを聞くものはいなかった。朝が来る前にここを離れなければ。さもないと私たちどこまで行っても体が持ち堪えそうにない。日が暮れてしまって。それを眺めてるだけの人たちはここにいる権利はない。船を漕ぎ出せばいつか暗礁にぶつかるだろう。大波が私たちを攫うだろう。息を止めていても汚染される空気には勝てない。いつからここに来た。私たちが問う。お前たちが生まれる前からだ。私たちは答える。それはなかなか骨が折れる作業だ。




でもいつかはそうでないって言いたい。私には本来別の道があったはずだって思いたい。目が覚めても閉じていてもいつの間にか訪れる希望の光には目を背けてここに立っていたい。憧れが私を変えたのだ。憧れが私をおかしくさせた。おかしいのは元からかもしれない。おかしいのは初めからかもしれない。ねえ、そうじゃないって言って欲しい。私はおかしくないよ。間違ってないよって言って欲しい。それが最後の言葉だった。息絶えた。ここから先は。自明だ。私には分かってる。私には分かってるはずなのだ。


体が壊れてしまうよ。体がおかしくなってしまうよ。至って正常なままだ。至って異常な私の心は喰い荒らしてしまうだろう。全てを喰い破ってしまうだろう。呪われた身体。呪われた心。呪われた私。そのままでいいって思えた。思った側から間違いだ。何度だって手を出してやる。足を出してやる。頭を出してやる。ここで最後の噴煙を上げる。後になってから後悔するといい。



だから最後に聴いていて。私の心の在り処はどこにある。消えてしまったのならもう一度はない。今一度はない。それが分かってないのか。それが分からないのか。傷口は癒えない。膿を出し続けている。おぞましいまま腐らせてしまうのは私の身体か。性根は初めから腐ってるし。どこに行けばいいのかは分かってる。このままどうなってしまうのかも分かってる。沈む船に乗って空を睨む異教徒で食人種で有色人種の私だ。



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