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ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。  作者: トロ猫


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ぶっつけ治療

え? 何をそんなにブチ切れて――


「《《ヤモリ》》! 私は黒騎士団のアリアナだ! 貴様の相手は、私がする!」


 アリアナが力強く言う。

 あ……モリヤの顔が爬虫類っぽいので、勢いでヤモリと言ってしまった。この世界にもヤモリがいるんだ……。

 モリヤがイラついたように言い放つ。


「勝手に話を進めるな! 俺はヤモリじゃねぇ。おい! 銀髪女! 鑑定があんなら、ちゃんと読めや!」


 ヤモリという名前で呼ばれるのは、この暗殺者にとって煩わしいのか額には青筋が見える。でもこの人……私が鑑定持ちなのを知っている。どこまで知って、一体誰の依頼で私を狙ったのか。いや、今はそんなことを考えている暇はない。

 顔を上げ、真顔で言う。


「……ヤモリです!」

「銀髪女……てめぇは簡単に死ねると思うなよ」


 他人を小馬鹿にした態度なのだから、自分だって馬鹿にされる覚悟がないと。それに怒りからかモリヤに隙が生まれたのを逃さなかった。

 アリアナの助けになるかどうかは分からないが、モリヤの足元に水球ウォーターボールで鳥黐を数個投げる。

 ヤモリが水球を避けずに笑う。


「おいおい。そんな、水の下級魔法が俺に効くはずが――っておい! なんだこれ!? クソッ」

「アリアナ、今です!」


 鳥黐に引っかかっているモリヤとアリアナが戦闘になる。アリアナは強い、けれどモリヤもそんなアリアナの長剣を短剣だけで受け止めている。

 アリアナが頑張ってくれている間、私は自分と意識の薄れ始めたディエゴの周辺を土壁で囲んだ。

 ぐったりとしたディエゴの上半身を起こし声を掛ける。


「ディエゴ! 聞こえる?」


 反応はない。

 肩に刺さった毒の短剣を抜こうとするが、剣のグリップだけが取れる仕様になっていた。なんて意地悪い。

 早く、残りの刃を身体から取り出さないと。

 傷口にグッと指を入れ、残りの刃を掴み抉り出す。すると、大量に血が噴き出してしまう。

 刃は全て取れたと思うけど、血の量が多くて傷口の状態が分からない。これ、大丈夫なの? 水魔法で傷口を洗う、今は全て魔法だよりだ。


「【洗浄 (クリーン)】【治療キュア】【治癒ヒール】」


 考えつく、治癒の魔法を全て試す。

 ディエゴの肩の傷が超速再生されていく。これで、大丈夫かと思ったが、ディエゴの顔色も意識も戻らない。もしかして、血を流しすぎた? 傷を塞いでも血までは戻らない……輸血なんて出来ない。


「どうしよう……」


 そういえば、魔力を初めて感じた時、まるで血液の流れのようだった。魔力と血は関係があるかもしれない。試す価値はある。ディエゴが助かるなら……。

 直接ディエゴに向けて魔力を注いでみる。初めての試みで、魔力がディエゴを包むのは見えたけど、私の魔力が届かないのか何も変化はなかった。

 外からが無理なら、中に直接入れるしかない。

 水魔法の水に、ヒールを使い私の魔力をいっぱいに込める。これならば、口から体内に入るはずだよね?

 ディエゴを起こし、声を掛ける。


「ディエゴ、飲んで。お願い」


 ディエゴからの反応がない。それならば、魔力を込めた小さな水球を直接ディエゴの口に流し込んでいく。すると、ディエゴの喉からゴクっと音が聞こえた。


「飲んでくれた……」

「ん、俺は……」


 ディエゴの目がゆっくりと開く。気が付いた! 


「よかったぁ」

「エマ様が治療をしてくれたのですか?」

「ぶっつけやっつけだったけどね」


 軽く笑うと、外から土壁が攻撃を受ける音が聞こえた。そうだ……暗殺者に襲撃されていたんだ。安心して気を抜いていた。

 ディエゴが立ち上がり、眉間に皺を寄せ。


「エマ様、状況は?」

「今、二十人程の暗殺者の集団に襲撃されています。実際に集団を操っているのはヤモリと言う奴で、残りは隷属された奴隷です。アリアナさんが今、ヤモリと一対一で戦っています。ディエゴさんは戦えますか?」

「大丈夫です。どういう訳か以前より身体が軽く、力がみなぎっている」

「なら応戦しましょう」


 こんな状況、普通は怖いはずなのに。精神耐性(強)のおかげか、今は襲撃者に苛立ちしか感じない。


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