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ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。  作者: トロ猫


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寒さを凌ぐために

 二時間ほど走り、短時間の休憩に入る。

 子供たちは平気そうだけど、私はテレビのせいでやや酔ってしまった。自分にヒールを掛けると、酔いは消える。だけど、酔う度にそれをするのも億劫だった、なので途中からはテレビから視線を逸らし、小窓から見える景色を眺めていた。

 馬たちには水を、私たちも軽食をとった。

 ゴム味の干し肉が配られたけど、私も子供たちも嚙み切れず、クッキーとジュースで腹を満たした。他の騎士にもクッキーを配ろうとしたが、レズリーに止められる。


「騎士は慣れているから、気にしなくてもいいよ」

「分かりました」


 再び出発の時になると、ロワーズに小さなクッションのようなものを渡される。


「この馬車の中は寒い。これを腰元にあてておくといい」

「これは、なんですか?」

「暖かくなる魔道具だ。大した効果はないが、少しくらい寒さを凌げるだろう」


 素直にクッションを受け取ると、確かに暖かかった。鑑定をする。


発熱小枕

 発熱付与された小枕


「ありがとうございます。大切に使います」


 後から聞いたけど、これは騎士たちが馬乗りの寒さを凌ぐために身に着けているものだという。確かに暖かったけど、結構着込んでいるおかげで凄い寒いということはなかった。ロワーズ、寒くなかったのだろうか……。

 それから同じように走り、休憩を数回取った。

 レズリーに湯気の出ていた飲み物を渡される。鑑定せずに飲み、即噴き出す。これ、お酒! しかも度数凄いやつ。


「なんですか! これ!」


 喉を通ってしまった酒は、燃えるように全身に広がり身体が熱くなる。


「寒さ対策用の火酒だよ。騎士団もこの辺りの領民も旅路には必ず飲むから――」

「あ! マークとシオンに与えるのはやめてください!」


 火酒を二人に渡そうとする騎士に文句を言う。


「なんだよ。これ、身体が熱くなるんだぜ」

「子供にはまだ早い!」


 文句を言うアイリスを無視して火酒を完全に断る。

 モコモコに着込んだシオンが、上目遣いで尋ねる。


「あれであたたかくなるの?」

「もしかして寒いの?」

「ううん。ぼく、ぜんぜんさむくないよ」


 シオンは寒さ耐性があるからか平気そうだが、アイリスのほうはブルブルと震えている。それでも火酒を飲ませるわけにいかないので、アイリスをガチョウ印の耐寒効果が付いているダウンジャケットの中に入れ抱きしめる。


「今、暖かくするから」


 焚火を連想しながら火魔法を使うと、人魂のようなものが現れた。正直、ひとつじゃ足りないので、たくさん出すとポポポと音を立てながら私たちを人魂が囲んだ。


「あったけぇな」


 アイリスの震えていた唇が止まる。よかった。


「これは、火魔法だね。ここまでの数を浮かせるのは初めて見たけれど、暖かいね」


 レズリーが人魂の側に手を翳しながら言う。

 他の騎士たちも驚いていたものの、人魂で暖を取り始めたのでさほど気にしていないようだ。


「エマちゃん、あと数十分走ればリーヌが見えてくると思う。エマちゃんたちと部隊の半数はリーヌの外で待機してもらうから、そのつもりでね」

「分かりました」

「馬車の中は寒くないかい?」

「今日はリリアから着せてもらった股引も穿いているので、そこまで寒くないですね」


 ロワーズから発熱の小枕ももらった。


「……他の騎士の前では、股引の話はしなくていいからね」


 レズリーが自分の唇に手を当て笑うけど、目が笑っていない。股引の話は余計だったみたい。


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