リーヌへ
部屋に戻ると、子供たちが楽しそうに魔法で遊んでいた。その姿にほっこりした直後、今から相談することを考えどんよりした気持ちになる。
レズリーは断るべきだと言っていたが、私は一応雇われの身だ。ハインツのことはもちろん、子供奴隷という話も気にはなっていた。
私の鑑定があれば、ハインツや子供たちが助かる。ロワーズの身内を心配する気持ちも分かる。きっと私は行くべきなんだと思う。
はぁ……私は、いつからこんなお人好しになったんだ。
今回は特別報酬も頂けるということだった。
私の中で一番大切なのは、アイリスとシオンと自分の安全だ。でも、お金も大切だし、知り合いを見捨てるような人間にはなりたくない。ましてやハインツに何かあれば、どう子供たちにそれを説明できるのだろうか……。
子供たちに素直に今の状況を説明する。
「――というわけなの。正直、迷っているのよ」
アイリスがシオンに視線を移しながら言う。
「俺はどっちでもいいけど……シオンは?」
「ぼくはエマとならどこでもだいじょうぶ」
「断ることもできるのよ」
「でも、そしたらハインツさんが……」
元々ヨハンとハインツがリーヌに向かったのは、私の鑑定に小麦粉に石が混入されていると表示されたからだ。それに対しての責任感も少しある。
「あぶなかったら、ぼくのまほうでマークも守る!」
そう力強くシオンが言うと、アイリスも驚いたみたいで目を見開いていた。
シオンは怯えた子供から、少しづつ少年へと成長しているように感じた。
シオンの安全空間は絶対的な守りだ。私の魔法やスキルを駆使しても破ることはできない。
きっと大丈夫だ。
「うん。じゃあ、ハインツさん助けに行こう」
「「うん」」
◇◇◇
夜明け前、まだ暗い中、北の砦を出発した。
移動手段は、騎士団用の速度の出せる馬車だ。馬車の中は異様に狭く、揺れが凄い。私と子供たちはこれに抱き合うように乗り、ロワーズやレズリーを含む騎士団は馬に乗って移動した。
馬車の揺れの凄さにシオンが怯えながら抱き着いてくる。アイリスも、この揺れは怖いようでギュッと私の袖を掴んだ。
「シオン、アイリス、大丈夫だよ。ほら」
シオンとアイリスを両方抱き、水魔法で回りをガードする。揺れはするが、これで馬車に体をぶつけても痛くはない。
「フワフワだね」
「本当だな」
アイリスとシオンが、私の水魔法をツンツンしながら笑う。笑う余裕があるならよかった。
「そうだ。テレビでも見る?」
「美少女戦士の話か! 見たい!」
「ぼくも!」
妄想魔法でテレビを出すと、子供たちはそれに釘付けになった。それからは二人に話しかけても、私の存在も馬車移動していることも忘れたかのように無言でテレビを見ていた。




