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ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。  作者: トロ猫


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迷路と虹

 アイリスとシオンを連れて外に出る。護衛なので、ディエゴとアリアナも一緒だ。

 私の魔法について、アリアナとディエゴはロワーズからある程度説明を受けていると聞いた。二人には小さい規模の魔法は見せていた。でも、今回の迷路のような大型の魔法は初めて見せる。護衛なのだから、変に隠しても意味がない。

 誰も来ないという練習場にアリアナの案内で到着した。テニスコート二枚分くらいの広さのちょうどいい場所だ。


「それでは、ここに迷路を作りますね」

「分かりました……」

「全体に作るので少し離れていてください」

「はい……」


 アリアナが困惑した表情で後ろに下がる。たぶん、アリアナもディエゴも私が作ろうとしている迷路の範囲を想像できていないと思う。一応全体に作ると注意はした。

 土魔法の土壁(アースウォール)を応用して、先程卓上に出した迷路の大きい版を練習場に作る。現れたのは、縦横二十メートルくらいの大きさの迷路。魔力は十二分に足りた。意外と魔力の減りを感じないのに驚いたほどだ。


「こ、これ程の魔力とは」


 アリアナが呆然と迷路を見つめながら言う。

 ディエゴは目を見開いたまま無言だった。

 二人は驚いているようだが、正直私も驚いている。ちゃんと大きな迷路が作れるのか、半信半疑だったのだ。出来なかったら、小さい迷路を作る予定だった。きちんと完成したからよかった。

 迷路のは、子供たちがぶつかっても痛くないように角がある部分は丸めた。

妄想魔法の猫はいつの間にかすでに現れていた。


「クロ、こうやって勝手に現れるのは、本当に困るのだけど……」


 私の苦言も聞かずに尻を向けてどこかに駆けて行く猫は放置して、子供たちを確認すれば二人とも目を輝かせていた。


「すげぇ! エマ、遊んできていいか?」

「何かあったら、大きい声を出してね」

「分かった! シオン、行くぜ!」

「うん!」


 二人ともあっという間に迷路に入っていった。猫もいつの間にかどこかへと消えていた。あの猫、どこいった? そういえば、猫が現れたなら鼠も絶対いるはずと思ったけど、鼠はいなかった。


「まぁ、いなくてもいいか……」


 そう口にした途端、魔力が少し抜けたのが分かった。すると、目の前に巨大モルモットが現れた。その大きさ、大人のカバサイズ。

 ああ、鼠を考えた時につい一緒に研究用モルモットのことを考えてしまったから? あー、このスキル、本当に厄介!

 モルモットは、入り口の辺りをウロウロしているので、これは鼠と同じパターンかと思ったけど……モルモットは巨漢過ぎて迷路の中に入れないらしい。実態がないので、本当は壁を通り抜けられるのだけど、こういうところだけ表現が細かいよ。


「あはは」


 モルモットの鈍感な姿に思わず声を出して笑ってしまうと、アリアナが珍しく声を荒げながら私の腕を握る。


「エ、エマ様、これは巨大な鼠ですか? どうやって出しているのですか! いえ、それよりもあれは鼠ですか!」


 そう叫ぶアリアナの顔色が悪い。もしかして、鼠系が苦手なのかな?


「これは……ギニー・ピッグです。ブタです!」


 嘘だけどね。しっかりこれは鼠の仲間だ。

 アリアナが私を訝しげに見ながら、口を噤む。

 私も鼠が大好きでなわけではない。でも、モルモットは可愛いと思う。つぶらな瞳が愛らしいと思うけど――ああ、そんなことを考えていると妄想魔法でモルモットにリボンが付いてしまった。

 ディエゴが私をジト目で見ながら言う。


「リボンが付いても、ありゃ、絶対に鼠だろ」


 ディエゴ! 静かに!  


「わ、私は子供たちの様子を見てきます」


 モルモットの近くにいたくないのか、アリアナは入り口を避け、迷路の壁を飛び越えて中へと入っていった。軽々と壁を飛び越えて行き感じ、アリアナの運動神経は相当よさそうだ。

 モルモットは、未だに入り口の辺りをウロウロしている。これはもう放置しておこう。

 迷路の真横に土魔法で塔を作り、ディエゴと一緒に登る。塔の上からは、迷路の中がよく見えた。

 子供たちは、迷路の四分の一地点に作った白鳥の噴水前にいた。猫は、迷路の上で堂々と昼寝中。アリアナはというと……


「ディエゴさん、アリアナさんのあれは迷子になっていますよね?」

「アリアナは、運動神経はいいが極度の方向音痴です」

「そうなんだ……」


 嘘でしょ? これ、子供たちのために初心者用の迷路を作ったのだけど。行き止まりも前半はひとつしかないのに、アリアナは同じ場所をぐるぐると回り同じ行き止まりに何度も戻っている。このままじゃ、一生抜けられそうもない。

 仕方ない、あの迷路の上で寝そべっている猫に案内させよう。妄想魔法でアリアナの側に猫を――


「あ、間違えた! 違う違う!」


 間違えて鼠を出してしまう。


「ぎゃあああああ」


 悲鳴と共にアリアナが四方に暴れて、行き止まりを壊して逃げていくのが見えた。

 再びディエゴにジト目で見られるのを感じた。


「エマ様……今のはわざとですか?」

「違います」


 本当にわざとじゃないんです、違うんです! 猫も鼠も自分勝手なんです。

 指示もしてないのに、案内のために出してしまった鼠はアリアナを追いかけているし……肝心の猫は――


「今度はお城の上で毛繕いかい!」


 そんなアリアナの事件とは対照的に、アイリスとシオンは無事に中心地に建てていたお城に到着していた。このお城には橋が掛けており、中に入れるようにしていた。妄想魔法で二人のために城に虹をかけるとアイリスとシオンの喜ぶ声が聞こえた。

 ディエゴが目を見開きながら尋ねる。


「エマ様……虹まで出せるのですか?」

「実は虹は誰にでも出せます」

「本当ですか?」


 ディエゴは半信半疑のようだ。


「太陽に背を向けて、その辺に霧噴射していれば虹は現れるんですよ」

「うーん……」


 ディエゴは信じてないようなので、子供たちが戻ってきたら霧噴射で人工虹を披露しよう。今日は晴天だし、虹もできるだろう。

 鼠が消えアリアナの迷路の破壊活動も落ち着いたので、せっせと破壊された壁を土魔法で修復する。

 アリアナは、出口近くの行き止まりで息を整えていた。子供たちはというと、アリアナとは反対側のルートにあるジャングルジムで遊んでいた。

 猫はようやくアリアナを発見、ゴールまで案内するかと思いきやゴロンとアリアナの足元で寝転んだ。役立たずだ、あの猫は。

 子供たちはそれから結構な時間遊んで、出口から出てきた。アリアナは可哀想だったので迎えに行った。


「それじゃあ、最後に虹を作ろうか?」

「虹? 城でも出たな」

「あれは魔法だけど、これは魔法じゃなくても出る虹だから」

「おおきなにじ?」

「うーん。どうだろう。お城のより小さいかも」


 子供たちもだけど、ディエゴも興味津々のようだ。

 日中の虹は、冬の方が出やすいけど異世界はどうだろう? 今から作るのは人工虹だけどね。虹のイリュージョン? にチャレンジする。

 まずは生活魔法の(アクア)で霧噴射をして虹を探す。法則はあったのだけど、ぼんやりとしか覚えてない。じゃんじゃん霧噴射しまくれば、そのうち現れるでしょ。

 霧噴射を連続で空中に振りまくと、虹が現れた。そんな大層な虹ではなかったけど、子供たちもディエゴも大興奮だった。

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