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ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。  作者: トロ猫


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謎のお茶会

 クッキーとジュースでおやつをしながら紙芝居、紺ずきんちゃんたちを披露する。勇者シオンとマークでウルフに飲み込まれたお婆さんたちを探す旅だ。お婆さんが揃えば恐竜が願い事を叶えてくれるという壮大なストーリー……この紙芝居にはいつもよりアイリスの食い付きがよかった。アイリスは冒険話が好きなのかもしれない。シオンシンデレラとマークシンデレラのストーリーにしなくてよかった。

 次の紙芝居を何にするか考えていると、ドアからノック音とメイドのデイジーが挨拶をする声が聞こえたのですぐに返事をする。


「どうぞ、入ってください」

「失礼しま――きゃあ!」


 ドアを開け、部屋に入って来たデイジーが紅茶のトレーを運びながら盛大に鳥黐に引っかかってしまい転ぶ。


(ああ! 罠のことをすっかり忘れていた!)


 急いでデイジーを起こしながら声をかける。


「デイジーさんごめんなさい。大丈夫?」

「は、はい。でも、なんですか? このベタベタ」

「魔法だけど、今、消すから」

「魔法ですか? いったいなぜ?」


 デイジーが解せぬという顔で私を見ている間に鳥黐魔法を消す。怪我はないようでよかった。


「トレーも無事そうで――ヒィ」


 トレーを確認するため顔を上げると、ドアの裏側に立っていたヨハンと目が合う。

え? この人……いつからここいたの? あの変な物音はこの人だったってこと? 紙芝居とかおやつと二時間近くは経ったと思うんだけど……。

 これ、声をかけるべき?


「ヨ、ヨハンさん。どうされたのですか? いつからそこにいたのですか?」

「君に会いにきたのだけど、ドアの前に魔法の気配がしたものだから……どうしようか考えていたらメイドが丁度来てね、先に入ってもらったのだよ。良かったよ、僕が先に入らなくて」


 二時間も? 怖い怖い。それに、デイジーを犠牲にするのはどうなの?


「普通にノックすればいいだけの話だと思いますが……」

「エマ嬢は僕が普通にノックしたら開けてくれていたのかな?」

「それは――」


 開けるわけがないけど、お帰りくださいくらいは返事をしてやった。それより、昨日、賭けに負けたくせになんで来たの? デイジーもヨハンの存在にオロオロしているとヨハンが満面の笑顔で言う。


「でしょ? 絶対に開けてくれないだろうなと思っていた」

「……それで、なんの御用でしょうか?」

「うーん。僕、エマ嬢にいろいろ興味を持ってしまったから。少し話せるかと思って」


 ヨハンから敵意は感じないが笑顔が黒い。どうしていいかわからず立っているデイジーにはとりあえず紅茶の準備を頼み、ヨハンに営業スマイルをする。


「ヨハン様、昨日は賭けに負けましたよね」

「確かに『砦を案内する』のは諦めたよ。エマ嬢とはお茶をしに来たんだ。デイジーちゃん、僕のもお願いね」

「は、はい」


 貴族の『お願い』には逆らえないのだろう、デイジーがヨハンの分の紅茶の準備を始める。


「……分かりました。でも、子供たちを昨日のように怖がらせないって約束してください」


 断ってもどうせ帰らなそうだし、仕方ない……お茶くらいで帰ってくれるなら。


「もちろんだ。そう言ってもらえて嬉しいよ」


 紅茶の準備が終わり、デイジーが退室する。

 シオンとアイリスも着席して四人で紅茶を飲みながら、目の前にいるヨハンに視線を移す。


「それで、お話とは?」

「単刀直入に尋ねるけど、エマ嬢は昨日、僕に何をしたのだい?」


 昨日とは、魔法でヘルニアを治したことだろう。


「腰の痛みがあるようでしたので治したまでです」

「そうか……それならなぜ僕の腰が痛いと分かったのか知りたいね」

「なんとなくです」


 キリッとした顔で言う。答えたくない。


「なんとなく――ねぇ。治したのは光魔法……そして先程の床は初めて見る魔法だった。やはり銀髪は噂通り全属性なのかい?」


 ロワーズの弟だから魔法のことに関してもある程度露見しても問題なさそうだったけど、失敗したかも……シオンとアイリスを見ればつまらなそうに紅茶を啜っていた。話を逸らそう。


「腰の痛みはその後、大丈夫ですか?」

「ん? ああ。すこぶるね。昨晩はここ数か月で一番熟睡したよ。手足もまったく痛くないよ。あれほど痛かったのに……君には感謝している」

「そうですか。それはよかったです。重い荷物を持ち上げる際は気をつけてください。腰だけではなく膝を使ってください。もし、タバコを吸われているなら、禁煙をおすすめします。ヘルニアは体質にもよるものらしいのでクセになってしまうと困ると思いますので」

「へぇ。詳しんだね。たばことへるにあってなんだい?」

「タバコは植物の葉をパイプで吸うものですが……この国にはないのですかしょうか?」

「ぱいぷで吸う? 知らないな。へるにあとはどんな病気なんだい?」

「ヘルニアは、ヨハンさんが腰の痛かった病気の名前です」


 この国にはタバコがない? 地球でも中世時代にはタバコはなかったような気がする。薬と称して使われた時代もあった話は聞いたことあるけど……まだこの国には、存在しないのかもしれない。

 ヘルニアの説明――は専門家ではないからそこまで詳しく知らないんだけド……私の知識は以前同じ病気を患っていた同僚から聞いた話だけだ。確か――


「病気とは言いましたが……人によっては怪我だという見解もあります。詳しくは知りませんが、腰を重労働させる仕事や姿勢の悪さ、それから体質的な原因もあるみたいです」

「へぇ……どこでその知識を手に入れたのか気になるが――」

「こ、故郷では当たり前のことでしたので」

「故郷ってどこだろうか?」


 ヨハンを軽くにらみながら言う。


「それは、尋問ですか?」

「いいや、ただの興味だよ。あと兄上とはどんな関係なかも気になるね。子供のことは否定していたけど、本当に兄上の子じゃないのか?」


 そんなの自分の兄貴に聞け! と罵りたいのをグッと抑える。


「違います。大体、シオンもマークもロワーズさんには似ていないでしょ? 私たちは今、ロワーズさんに保護していただいている身です。ロワーズさんに確認をしていただければ――」

「エマ様、失礼してもよろしいでしょうか?」


 話の途中でドアの外からリリアの声が聞こえるとヨハンが焦ったような声を出す。


「げ、リリア」


 悪戯が見つかったような子供の顔をするヨハンの隣で口角を上げ大声で言う。


「リリアさん、どうぞお入りください」

「ま、まて! うわ、リリア」


 リリアが入るとあからさまにバツの悪い顔をするヨハン。


「ヨハン坊っちゃま。坊っちゃまは、こちらで何をされているのでしょうか? 坊っちゃまはロワーズ様の許可を得てこちらにいるのでしょうか? 坊っちゃま」


 嫌がらせかのようにリリアの坊ちゃま攻撃が連打される。


「リリア、頼むから坊っちゃまはやめてくれ」

「子供のような真似をやめていただければ、すぐにでもやめますよ」


 リリアがヨハンを見下ろしながら冷静に言う。


「分かったよ。リリア、僕の負けだ。君には逆らえないな。仕方ない……今日は諦めるか。エマ嬢、また今度話しましょう」

「……ご遠慮したいですね」

「つれないなぁ。まぁ、僕は諦めないけど」

「坊っちゃま!」


 そうリリアに怒鳴られ未練がましそうに部屋を去るヨハンにシオンがトドメを刺す。


「ばいばい。ぼっちゃまさん」


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