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ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。  作者: トロ猫


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ヨハンとの賭け

「それでは、ヨハンさんと呼ばせていただきます」


 案内のことはスルーして、返事をすればヨハンが軽く微笑む。案内を断りたいのを察してくれたのだろうか……それなら嬉しいけれど。

それにしても椎間板ヘルニアなんて……痛さを伴っているはずだ。けれどヨハンの表情からはそのような感じは見受けられない。今は痛くないのか、隠すのがうまいのか。

 ヨハンの顔を観察すれば、再び目が合う。


「エマ嬢は、僕に案内されると何か不都合な事があるのかな?」


 あ、全然察してくれていない。


「そ、そんな事はないですよ」

「僕も兄上の客人と仲良くなりたいだけだよ。北の砦は退屈でね。面白い事を探していたのだよ。いいだろう?」


 雰囲気的に流されそうだ。ヨハンの満面の笑みが怖い。どうしよう……。

そうだ――


「ヨハンさん。それならば、明日のおつきあいするかしないかで賭けをしませんか? 私が賭けに勝ったら案内はなしで、負けたら案内をお願いします」

「賭けか……興味深いね。いいよ。どんな賭け?」


 よしっ。乗ってきた。


「それでは、私がヨハンさんの悩みを一つ解決出来るかどうかで賭けませんか?」

「僕の悩み? 目の前にいる君のことかな?」


 満面の笑みで言われても、目が笑ってないって……ヨハンが私の存在を怪しんでいるのは十分伝わったけど、その笑顔のせいでシオンやマークが完全に静かになってしまった。

 ロワーズが呆れながらヨハンに苦言する。


「ヨハン。あまり客人で遊ぶな」

「冗談だよ。分かった。それでは、エマ嬢、僕の悩みを一つ解決してみて」


 やや笑いながらヨハンが言う。私なんかが自分の悩みを解決できるはずもない、きっとそう思っているのだろう。

 ロワーズに視線を移す。一応、賭けの確認をすれば口角を上げながら頷かれる。ロワーズもこの賭けがどう転ぶのか気になっているかのような表情だ。


「分かりました。それでは、ヨハンさんに少し触れますがよろしいでしょうか?」

「いいよ」


 ヨハンの肩に触れ、ゆっくりと腰に手を当てた。ヨハンの体がビクッと揺れる。痛かったのかな?


「大丈夫ですか?」

「ああ。少し驚いただけだ。続けてくれ」

「分かりました。何か不安でしたら遠慮なく言って下さいね」


 実は以前同僚が椎間板ヘルニアだったので、毎日のように痛みの詳細などを聞いていた。そのおかげで少しは病気の原因も分かっている。

 ヨハンの腰に魔力を通して、神経が圧迫されている位置を発見する。そこに集中してヒールを掛けると、すぐにヨハンの表情が和らいだような気がした。


「いかがでしょうか? ヨハンさんの一つの問題が解決しましたか」

「……」


 ヨハンがみるみると眉間に皺を寄せ私を見下ろす。あれ? もしかして効かなかった? ヨハンの身体から手を離そうとしたらガシッと腕を掴まれる。


「え?」

「一体、何をした?」


 先程までのチャラい声のヨハンではなく、低い凄みのある声に子供たちが畏まる。


「ヨハン。何をしている。エマから手を離せ」


 ロワーズの叱咤でヨハンが私から手を離す。結構な力で腕を握られた。体力のレベルのせいかそこまで痛くはないけど、少し赤く後はついている。


「エマ、うでが……うでだいじょうぶ?」

「大丈夫だよ」


 不安そうに私の腕を見るシオンに言う。

 アイリスも心配そうにしているので、安心させるためにアイリスを撫でると、可愛らしく照れた。


「ぼくも!」


 はいはい、とシオンの腕を撫でる。


「ロワーズさんもなでなでをご希望ですか?」


 ロワーズがこちらを見ていたのでジョークを言ってみる。


「な、何を言っている。ヨハン、エマ嬢に謝罪せよ。淑女の手を無粋に握るのは失礼だ」

「エマ嬢……申し訳ありませんでした。なんせ大変驚いてしまったものですから。しかし興味深い。ますます貴女が気になりますね」


 どうやらヨハンの中で私は警戒する人物から興味深い人物に変わったようだけど、これもこれでどうなのだろう。


「それで、ヨハン、エマ、賭けはどちらが勝ったのだ?」

「文句なしにエマ嬢ですよ。確かに僕の悩みを一つ取り除いてくれた――僕の興味は増えたけどね……」


 最後にヨハンが何かつぶやいたけど、なんて言ったのは聞こえなかった。

賭けは私の勝ちで明日のヨハンの案内はナシになった。よかったよかった。ヨハンの目線が痛いけどね。


「残念ですが、案内()諦めます」


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