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ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。  作者: トロ猫


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ホットワイン

 子供たちが再びあやとりを始めたので、一番聞きたかった貨幣について尋ねるとハインツが丁寧に説明してくれた。

 この国には、銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨、虹色金貨があるという。金貨までは市井でも取引されているが、それ以上の貨幣は大きな取引をする商人や貴族の間で取引されているらしい。虹色金貨は上級貴族が稀に使う硬貨なので、ほとんど出回らないということだった。

 ハインツが銅貨、銀貨、それから金貨を取り出し価値を説明する。

 銅貨十枚で大銅貨、大銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨。この辺は日本と数え方が変わらないのでよかった。


「屋台の串でしたら大銅貨一枚ほど、一般のお食事処なら大銅貨三枚から銀貨一枚ほどでしょうか」


 説明が意外と庶民的なのに驚いていたら、ハインツが笑いながら言う。


「私は元々孤児でしたので、市井に長く住んでおりました」


 聞けば、ハインツは平民より高い魔力と固有スキルを買われ十代の頃にラドクリス子爵家の養子になったそうだ。それから、ロワーズの実家であるクライスト侯爵家に見習いとして上がり、いままで仕えてきたそうだ。なんだかハインツのことが少し知れてよかった。

 それからしばらく、お金についてハインツから学ぶ。

 都市部の四人家族だと月に金貨十枚もあれば生活できるということだった。串の大銅貨が百円くらいなら銅貨が十円、銀貨が千円くらいで金貨十枚は十万円ほどだろうか……。

 そんな話をして、子供たちも寝た所で私もいつの間にか目を閉じていた。


 ガタンとソリ馬車が何かにぶつかるので目が覚める。ガタガタと揺れるソリ馬車が徐々に減速する。ロワーズが小窓から外を確かめ言う。


「予定より少し遅いが、到着したな。この辺りは雪が薄いのでしばらく揺れる。紐を持て」


 共に眠っていたシオンとアイリスを起こし、全員で紐を握る。

 ガタガタと揺れながら森の入り口にある停留場へ到着した。ソリ馬車から降りると地面のところどころには雪が溶け、地面が見えた。

 停留所には小さなログハウスがいくつかあり、今日はここに一泊停泊したのち馬車に乗り換え北の塔に向かうという。第一団で野営地を出たレズリーやリリアたちは、無事に北の塔へと出発したそうだ。

 シオンとアイリスはやけに大人しい。


「二人とも寒いの?」

「ううん。ぼくだいじょうぶ」

「俺も寒くはない」


 二人の表情はやや疲れている。昼過ぎ、外は明るさもあるけれど今日は早朝に起きて準備をしたので私も少し眠たい。

 欠伸をするシオンを抱き上げる。アイリスも抱こうとしたが、やめろと拒否される。


「エマ様。こちらへどうぞ」


 ロワーズたちは停留所の騎士達と何やら仕事があるようだったので、一先ず別れ、ハインツに案内されたログハウスに入って驚く。


「温かい……」


 鑑定したけど、ごく普通のログハウスだ。ハインツが笑顔で言う。


「レズリー副団長の指示で、暖炉の薪を焚かせていたようですね」

「そうだったのですね。あとでお礼を言います」

「それでは、夕食時にまた。それまで、ごゆっくりお過ごしください」


 ハインツがログハウスを出ると、半分すでに眠っているシオンの靴を脱がせ暖炉の前にあるソファへ寝かせる。持っていたひざ掛けを掛けるとクロが現れアイリスが驚く。


「マーク大丈夫よ。紙芝居の時もいたでしょ」

「急に現れたからびっくりしただけだ」


 クロが急に現れたのは私が疲れているからだろうか。クロを消そうとしたが、消えずにゆらゆら揺れる火を叩くと、一瞬だけどクロの動作と共に動いた。


「え?」


 クロにもう一度火を叩くように念じるが、プイと首を逸らされ消えていった。実体はないはずだから気のせいよね? 妄想魔法が他人に接触可能になるのは本当にすごく、困る。

 アイリスは先ほどのクロの行動には気づいていないよう、胡坐をかきながらソファに座る。


「マーク、せめて靴は脱いで。ソファが汚れるでしょ」

「クリーンすればいいだろ?」

「気持ちの問題だからね。それはマークのソファではないでしょ?」

「分かった」


 靴を脱いでゴロンとソファに横になったアイリスがいつの間にか眠った頃にロワーズとハインツがログハウスにやって来た。

 全員で食事を取り、二部屋あるうち一つを子供たちと使わせてもらう。二人をクリーンして、少しだけ光の魔法で遊んでいたらシオンとアイリスはいつの間にか眠っていた。


(どうしよう……)


 疲れていたはずなのに、全く眠れない。なんでこんなに目が覚めているのだろうか? 

 カランと物音がしたので部屋からログハウスにあるテーブル辺りを覗けば、人影が見えた。

 ライトを唱えると人影はロワーズだった。部屋着で前髪のあるロワーズはいつもより少し幼い感じだ。


「起こしてしまったか?」

「いえ、起きていましたが……夜中にどうされたのですか? ハインツさんは?」

「寝る前に晩酌をしようかと……ハインツは俺の健康にうるさいのでこっそり部屋を出て来た。若いが美味い赤ワインがある。エマも一杯どうだ?」

「口止め料ですか?」

「友好の証だ」


 ロワーズをジト目で見る。赤ワインは高価だとロワーズ自身が言っていた、明らかにハインツにバレないように口止め料だと思うけど。でも、私も眠れないし、こちらの赤ワインが気になるので晩酌に付き合う。


「では、いただきます」


 ロワーズに注がれた赤ワインを一口飲み、吹き出しそうになる。なにこれ、蛾の味がする。蛾は食べたことないけど、食べたらこんな味がする、はず。


「味はどうだ?」

(不味いです)


 そんなことは言えずにロワーズが赤ワインを躊躇なく飲み笑うのを眺める。


「どうした? 飲まないのか?」

「肌寒いので少し温めてもいいですか?」


 そう言い、暖炉に設置した鍋に赤ワイン、オレンジジュース、それから角砂糖を入れ少し煮詰める。本当はクローブとかシナモンを入れた方が美味しけれど……なんちゃってホットワインを味見する。


「美味しい……」


 砂糖のおかげで、赤ワインからは先ほどの苦みが取れている。ロワーズと視線が合えば物欲しそうにしていたので、ホットワインを分ける。ゆっくりとホットワインを飲むとロワーズが目を見開いた。


「これは、美味いな。心まで温まる味だ」

「美味しいですよね」


 結局、ロワーズとホットワインを飲みながら会話が弾み、ベッドに横になる頃には外はやや明るくなっていた。結局眠ることできていないじゃない! 馬車の中で眠ればいいっか。


「エマ、おはよう」


 シオンが目を擦りながら挨拶する。やや疲れた表情で挨拶を返す。


「おはよう……」


 熟睡していたアイリスも起こし、準備後に用意された馬車に乗るとすぐに出発した。

 馬車の中で寝れるかな、なんて暢気に考えてた自分を殴りたい。


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