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野営地

 更に一時間半ほど歩いたところで、ようやく目的地である黒騎士団の野営地が見えてきた。私の歩幅に合わせたため予定していた時間よりも到着は遅れたが、日没前までに無事に野営地へ到着することができたので良かった。

 ダウンジャケットを覗きシオンに声を掛ける。


「大丈夫? 寒くない?」

「大丈夫」


 シオンは口数は少ないけれど、受け答えはきちんと出来る。泣き叫んでも不思議ではないと思うのだけれど、どうなのだろう? 周りに子供がいなかったので良く分からない。

 野営地は森に開いた広い平地に位置する場所にあり、想像よりも大所帯で滞在している。レズリーによると、ここには黒騎士団の第三部隊それから上級騎士の従者などを含む三百人規模がいる野営地だそうだ。遠目でも規模が大きいことが分かる。野営地には無数のキャラバンテントの様な天幕が張ってあり、周辺はまだそこまで暗くないのにたくさんの灯りで照らされていた。まるで野営地が大きな村のようだ。


 野営地に入る前にロワーズが足を止め、自分のマントを私の頭に被せる。


「急になんですか!」

「これを被って髪を隠せ」


 銀髪はこの国では珍しいと聞いていたが、そこまでして隠すほどのことなの? 野営地を取り仕切る人がそう言うので強く反対はしないが、やや大げさかなと感じた。


「エマちゃん、ごめんね。少しの辛抱だから」 

「かなり歩きにくいですが、これ怪しい人になってないですか?」

「そ、そんなことはないよ。可愛い小熊さんだ」


 レズリー、それ絶対嘘でしょ。

 野営地の入り口で見張りをしていた騎士の数人がロワーズに気づき、すぐに駆け足で前にならぶと胸に手を当てながら一斉に敬礼をした。


「クライスト団長、レズリー副団長にご挨拶申し上げます」


 敬礼した騎士たちをマントの中から覗けば、十四、五歳の成人をまだ迎えてないだろう少年少女だった。ロワーズは手を上げ、中心にいた少女騎士に声を掛ける。


「レーナ、何か変わったことはあったか?」

「ございません! 本日の野営巡回も異常なしでございます!」

「そうか、なら良い。全員配置へ戻れ」

「はっ。失礼します!」


 少年少女騎士が自分の配置へと戻る。全員がチラチラと何度も私を見ていたのには気づいた。私だってきっと同じ立場だったらこの異様な光景を凝視していたと思う。だって、絶対傍から見たら今の私は海坊主のマスコットだから……。


「あんな若い子たちも騎士になって頑張っているのですね」

「……然程、そなたと年齢は変わらないだろ」


 ロワーズが呆れたように言う。お世辞なのか? さすがに十五歳の子と変わらないと言われるのは居心地が悪い。


「今回は特にあれくらいの年齢の子は多いんだよ」


 レズリーが補足するには、野営地には成人前の騎士見習いの少年少女も大人に混じって訓練しているという。異世界の若者は逞しいな。

 感心しながら遠くにいる騎士たちを見れば、一台の大きな馬車が停まるのが見えた。マントの中からだから良く見えないけれど、華やかな恰好をした十数人の女性たちが馬車から降りてくる。フワフワとした衣装に腰の細そうな女性たち。あれは、きっと騎士ではない。こういう場所には珍しくない夜のプロレスお友達だ。女性たちを凝視していたらレズリーに視界を妨げられる。


「今日、エマちゃんが泊まる場所に案内するから足元に気を付けてついてきてくれるかい」

「はい。ありがとうございます」


 ロワーズとレズリーに案内され泊まる場所とやらに向かうが、先ほどからすれ違う騎士たちの視線が痛い。それはそうだよね。全身を真っ黒に覆った海坊主が行進中なんだもの。中からの視界は悪く、靴がまたスポスポし始めたのが分かった。前を行くロワーズにもう少しゆっくり歩いてほしいと伝えようとしたら何かに躓く。


「ああ!」


 転ぶ! シオンが危ない! そう思ったら無意識にクルリと軽やかなステップで回転してそのまま背中が何かにぶつかる。


「おい、大丈夫か!」

「大丈夫ですが……マントが飛んで」


 ぶつかった先はロワーズの胸の中だった。しかも、回転した勢いで被っていたマントが飛んでいき、辺りにいた騎士たちの前で姿が露わになる。

 すぐに『銀髪だ』と辺りにいた騎士たちが囁く声が聞こえた。飛んで行ったマントを拾いに行ことしたらロワーズに止められる。


「クソ、マントなどどうでも良い。いいから早く来い」


 レズリーとロワーズに囲まれるように移動。通り過ぎる騎士全員、男女問わずジロジロと不躾に見られる。中には惚けた視線もあり、そんな風な目を向けられるのに慣れてないので、なんだか変な気分になり案内された天幕へ急いで入った。


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