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ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。  作者: トロ猫


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北の砦への帰路 2

 ロワーズが眠ったアイリスを見ながらフッと笑う。


「よく懐いているな。二日前の騒がしい小僧とは思えないな」

「マークはいい子ですよ。子供は少し騒がしいくらいが良いのではないでしょうか?」

「あれが少しとは、エマは忍耐力が高いな」


 特に返事はしなかった。その後、ロワーズとの会話が途切れてしまう。


「う、うーん」


 シオンが何か夢を見ているのか、苦しそうに唸り始めたので頭をしばらく撫でる。いつの間にか口ずさんでいた子守歌でシオンの表情も穏やかになった。よかった。


「聞いたことのない言葉だ。故郷の歌か?」


 ロワーズが落ち着いたシオンを見ながら言う。歌はこちらの言葉に翻訳されないのか。


「いえ。故郷から少し離れた国の子守唄なんですが……気に入っていて、思わず歌ってしまったようです」

「どのような子守唄なのだ?」


 ロワーズは何か会話を続けようとしているのかもしれない。子守歌について説明をする。


「母親が泣いている子供をあやしながら、いろんな物を買ってあげる約束をするのです。物まね鳥だったり指輪だったり、そしてそれがいなくなったり壊れたりしても母はあなたの側にいつまでもいますよ、と そんな歌です」

「いい歌だな」

「子守歌はこちらにもありますか?」

「ああ、乳母が昔歌ってくれたな。歌詞まではよく覚えてないが、安心した記憶はある」


 ロワーズが何かを思い出したように笑ったので尋ねる。


「悪戯ですか?」

「ああ、よく分かったな。昔、乳母に叱られたのを思い出していた」


 お互い目を合わせ笑った声でアイリスが起きてしまう。


「ん……俺、いつの間に寝てたんだ!」


 アイリスが急に起き上がり、席の端へと移動する。


「マーク、どうしたの?」

「いや、その、膝の上で寝るつもりじゃなかったから」


 ああ、そんなことか。アイリスは疲れて寝落ちしてそのまま膝にシオンとなだれ込んできたのだけれど、今は少し恥ずかしそうだ。


「よく眠れるでしょ。私の膝」

「まぁまぁだな」


 熟睡していた癖に……素直じゃないアイリスにひざ掛けを巻くと小さくお礼を言われたので鼻をツンと触る。


「可愛いね」

「なんだよ、それ」


 二度目の休憩場所に停まり、食事を取る。

 またあのゴム肉なのかと思ったけど、雑穀のスープとパンだった。味が濃かったけど、美味しかった。スープで温まった身体でも外の凍るような気温で冷めていく。


「お身体を冷やさないよう、こちらもどうぞ」


 食後にハインツから透明な液体が入ったグラスを渡される。匂いを嗅げばヴォッカのような酒だ。これを一気飲みして体を温めるという。アイリスがグラスに手を伸ばそうとしたが、ハインツに軽やかに避けられていた。


(この量なら酔いはしないだろうけど……)


 グッとグラスを飲み干せば、喉を通る酒で一気に身体が火照るのが分かり、自然と声が出る。


「カッー。何これ!」

「北部では有名な焔の水です。温まりましたでしょう?」

「温まりましたけど、喉がまだ熱いです」


 辺りを見れば騎士たちも一気飲みをしていた。慣れているのか何事もないかのように通常運行だ。体格も大きいし、酔わないだろう。

 子供たちとソリ馬車に戻ろうとしたら、騎士たちの声が聞こえた。


「ホワイトウルフだ!」


 急いでシオンとアイリスを両腕に抱え索敵をすれば、十数頭の狼の気配を感じる。見える範囲にいるはずなのに見えない。白く雪に擬態しているのか。


(とにかく子供たちを安全なところに――)


「エマ様、大丈夫ですよ」


 ハインツがそう言うと、悲痛な獣の声が聞こえた。狼たちはすぐに騎士たちにほとんど討伐された。

 惨劇を見せないためにすぐにシオンとアイリスを馬車に乗せ、二人に謝る。


「急に抱えてごめんね。びっくりしちゃって」

「ぼくはだいじょうぶだよ」

「俺も別に……」


 ハインツに子供たちを任せ、怪我人がいないかロワーズに確認する。


「エマ、ホワイトウルフなんて下級の魔物で騎士は怪我などしない」

「そ、そうなんですね」


 普通に結構大きな狼だと思うのだけれど……誰も焦っている様子もないので、大した魔物ではないようだ。雪の上に飛び散った鮮明な赤い血を眺める。


(赤い血……)


 こちらに来て二週間ちょっとで血を見る回数が地球で生きてきた約四十年より断然多くなっている。これに慣れることができるの? 狼の死骸を捌き始めた騎士から逃げるようにソリ馬車へと乗り込む。

 再びソリ馬車が出発する。しばらく無言で過ごしていたが、子供たちが暇そうだったので持っていた紐であやとりをすることにした。川、蝶々、箒、橋など、覚えているあやとりを二人に教える。あやとりはアイリスが一番楽しそうに遊んでいた。


「一本の紐でこんな遊びができるとは、面白いですね、エマ様」


 途中から一緒に遊び始めたハインツの覚えが一番早かった。ロワーズも挑戦していたが、うん……ただただ不器用だった。

 あやとりが一段落しておやつのチョコとクッキーを出したら子供たちの目が輝いた。アイリスは、初チョコで口の周りがチョコだらけになっていたので拭いてあげる。

 ロワーズにチョコを渡せば、苦言をいただく。


「エマ、またこのような物を……」


 そんなことを言いつつ、ロワーズの口元にもチョコが少し付いていた。笑いながらアイリスを拭いたように口元を拭いてあげると、ロワーズの耳が真っ赤になっていた。


「あ、つい子供たちにするのと一緒に……なんだか、すみません」

「いや、謝らなくていい」


 お互い目を合わせ気まずくなる。


「ホホホ。若いですね。あのクッキーに続き、このちょこと言う物は値段の付けられない美味しさですね。いろいろとご馳走様でした。エマ様」


 ハインツが揶揄いながら言うとロワーズは苦笑いをした。


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