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 服を剥ぎ取られ裸同然でノイズキャンセルされても尚、モリヤは鋭い眼光で私を睨む。

 マーカスがため息を吐きながら言う。


「エマ嬢、助かる。猿轡が弱かったようだな。尋問をすれば大人しくなるであろう」

「尋問ですか……」


 別にモリヤがどうなろうが知らない。けれど、人が尋問されているシーンとか見たくはない。

 私の顰めた顔を察したのか、マーカスが苦笑いしながら言う。


「ああ、エマ嬢が思っているような尋問ではない。自白剤を使う」


 自白剤も普通に生きていたら、目にするものではない。拷問を伴う尋問よりマシ……なのだろうか? マーカスは話を濁したが、モリヤは後に極刑になるのだと思う。


「あの……奴隷だった方々はどうなるのでしょうか?」

「違法奴隷か……リーヌの状況次第だが、北の砦に輸送だろう。問題はエルフ族だ。エルフ族の国は同盟国なのだが……エルフ族は、話が通じない者が多い」

「そうなんですか……」


 最終的にはロワーズが判断、国への報告がされるだろうとマーカスは予想していた。

 奴隷にされていた人たちに視線を移す。全員が虚な目をしがらどこか遠くを見ていた。すぐにでも奴隷印から解放してあげたいが、騎士たちの前でまとめてそんなことをすれば余計な噂が立ってしまう。今できるのは、彼らを綺麗にして傷を癒すことだけだ。

 まとめて奴隷にされた全員にヒールと清浄クリーンを掛ける。

 奴隷にされた人の殆どが人族だった。亞人はエルフ族の子、それから猫人族が一人いた。こちらの猫人族の子は、耳も尻尾もちゃんとあった。鑑定をすれば、十六歳の男の子。野営地で保護した猫人族のアリアとどことなく顔が似ていた。

 マーカスが農夫の格好に着替えた騎士のラドに伝言を言づける。


「ラド、こちらの状況を副隊長に伝達してきてくれ」

「はい。かしこまりました」


 ラドは四十歳の騎士で普段は渋い感じの男性なのだが、ところどころに泥を塗り、髪を乱した姿はまるで別人のようだった。

 リーヌに向け急いで出発したラドを見送ると、マーカスが口角を上げ言う。


「さて、ヤモリよ。お前は、俺と今から楽しい時間だ」


 マーカスに向けヤモリが何か言っているが、聞こえない。


「あ、サイレントにしたままです。解きますね」


 サイレントを解いた直後から、ヤモリの大声が森に響いたく。本当に、五月蠅い。シオンたちにも届きそうな声にイラッとする。

 暗殺者って寡黙なイメージだったが、モリヤのせいで完全にイメージが崩れた。舌を噛んだりしないように猿轡されているはずなんだけど、なんでこんなに叫べるのだろう。土拘束を解いたら、さっさとシオンとマークの元に戻ろう。


「エマ嬢、奴を抑えるので、地面への拘束を解いてくれ。自白剤は立たせて呑ませる必要がある」

「は、はい」


 マーカスの指示で数人の騎士に抑えられたモリヤの土拘束を解くと、モリヤが暴れ始める。あんなに細いのにどこからそんな力が出ているのだろう。


「しっかり抑えろ」

「あーうおーおい! んーはなへー!」


 マーカスが、ドロっとした白い液体をモリヤの口の中に流し込む。噂の自白剤だろうか?

 すると、モリヤが騎士の一人を凄まじい力で押しのけた。

 え? 危ない!


土拘束アースバインド


 ヤモリのみを立ったまま拘束する。見れば、私が折った方じゃない片手がぐちゃぐちゃになっていた。騎士が確認すれば何か魔道具を肌の中に仕込んでいたらしい。

でも、それは最後の悪あがきだったのかもしれない。すぐにヤモリの目がトロンとなり、酔っ払ったように頭がユラユラと左右に揺れ始めた

 自白剤の効果? こんなに早く、効き始めるの? 

 マーカスと騎士たちがモリヤを囲み、このまま尋問が始まるみたいだけど……どうしよう。シオンたちの元に戻るタイミングを完全に失った。静かに去ってもいいけど、土拘束してしまった。解除もいるだろう。

 マーカスも、たぶん、今は私のこと忘れている感じだ。

 結局、見たくもないモリヤの尋問を見ることになった。


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