僕の最強の幼馴染
短いです。
頭カラッポ状態で読んで頂けると幸いです。
僕の名前は高木冬馬、高校1年生。
どこにでもいるような男子高校生だ。
そんな僕にも唯一といっていい特徴がある。
幼馴染で恋人の北条紗奈。文武両道、容姿端麗でおまけに北条グループの令嬢である。
幼いころから僕は空手をやっていて、その帰りに公園で泣いていた紗奈を見つけ、家まで送り届けたことがきっかけで仲良くなった。
当時6歳の紗奈は引っ越してきたばかりで、迷子になっていた。送り届けた家が豪邸でビックリしたのを憶えている。
小・中学校は紗奈が私立に通っていたので別々だったが、迷子の一件から家にお呼ばれされてずっと一緒に遊んでいた。
中学2年生の頃、紗奈から告白され、僕も紗奈の事が好きだったからそこから付き合うようになった。
学校が別々だったから不安になって告白したとの事だった。
中学生の頃は紗奈との関係をあまり深く考える事は無く、いつも一緒にいる紗奈と付き合っているだけという感覚だった。
高校受験を意識するようになると、紗奈から
「私も公立にしようかな。冬馬と一緒がいいし。」
紗奈が公立?うーん、だったら…。
「僕が私立受けるよ。成績なら何とかなりそうだし。」
紗奈はすごくお金持ちの家だが、僕の家もそこそこ生活には余裕があるので私立を受けても問題ないはずだ。
「本当?冬馬と一緒に高校生活を送れるなんて楽しみね!」
「それは受かってから言ってよ。」
「そうね。そうと決まればこれからは毎日私の家で勉強するわよ!」
「わかったよ。よろしくね。」
そんなワケで無事同じ私立に進学出来た。
入学式当日、一緒に登校していると僕は度肝を抜かれた。
「紗奈様!おはようございます!」
「えぇ、おはよう」
紗奈様…?えっ?なにこれ?
「紗奈、『紗奈様』って何?」
「私が北条グループの人間だからよ。周りも色んな企業の社長の子供が多いの。私が言わせてるわけじゃないわ。」
紗奈はエスカレーター式の私立だから同級生は受験組以外は知ってるのか。にしても紗奈様って…。
「何か私の親衛隊みたいなのもいて鬱陶しいのよね。」
親衛隊?!なんだそりゃ。そんなの漫画の中だけじゃないの?
現実離れした現状に面食らっていると掲示板の前に着いた。
「冬馬とは別のクラスね。せっかく同じ学校に通えるならクラスも一緒が良かったのに。」
「まぁ、それはしょうがないよ。じゃあまた後でね。」
そう言って紗奈と別れ、自分の教室へと入る。
「ねぇ、アンタ受験組でしょ?なんで紗奈様と一緒に登校してるわけ?」
おっと、イキナリだな。自己紹介も無しになんでケンカ腰なんだ?
「初めまして。紗奈の幼馴染で恋人の高木冬馬です、よろしく」
「はぁ?幼馴染?恋人?なんで紗奈様がアンタみたいなやつと?!」
いや失礼すぎるでしょ。この学校ってこんな人ばっかりなのかな…。
それだけ言ってその女の子はグループの中に戻っていった。
「何か絡まれてたね。俺も受験組だからちょっとびっくりだよ」
良かった、受験組の人もいるんだよな。なんとか孤立せずに済みそうかな?
入学式当日は授業もなかったのでそれ以降は何事もなく終わった。
…が、翌日から問題が起きた。
「ちょっと話があるんだけど。」
そう言って僕を空き教室に呼び出したのは昨日の女の子だ。
周りに男子3人、女子3人。何事?
「なに?話って?」
「アンタ受験組ってことは一般家庭の生徒よね?そんな庶民が紗奈様と付き合っていいわけがないわ!別れなさいよ!」
「えっ?何言ってるの?」
「つり合いが取れてないって言ってんの!わからないかなぁ!?」
「そんなの君達には関係ないよね?」
「あるわよ!私達は紗奈様の親衛隊なんだから!今までだっておかしなヤツから紗奈様を守ってきたんだから!」
あー。これ昨日紗奈が言ってたヤツか…。どうしようかな…。
「紗奈様には西田君みたいな人がお似合いなの!」
「西田君って誰?」
3人居た男子の一人が前に出てくる。
「僕だよ、西田物産の跡取り息子さ。君みたいな一般庶民では紗奈様と付き合うのは無理があるだろう?別れた方がいい。」
「嫌だね。君達からそんな事言われる筋合いはないよ。」
「よく考えてみろよ?将来の事考えているか?北条グループを君程度の人間が背負って立てるとでも?」
うっ…。紗奈のおじさんとおばさんには良くしてもらっているがいざ北条グループとなると…。
「即答出来ないだろ?そういうことだ。早めに別れるんだぞ?」
「別れないと後悔することになるわよ!」
言いたい事だけ言って彼等は去っていった。
親衛隊とやらに呼び出された後、僕は悩んでいた。
もちろん紗奈と別れる気はない。とは言え北条グループか…。
僕なんかでは想像もつかない世界だな…。
紗奈と一緒に生きていく為には何が必要なんだろう?うーん…。
「何か悩み事?」
一緒に登校していると紗奈が声を掛けてくる。
「うん、紗奈と一緒に生きていく為に何が必要なのかと思って。」
「漠然としてるわね。私と結婚する為にってこと?」
「それもあるけど…。紗奈は北条グループを受け継ぐんだよね?」
「まぁ全部私一人でってワケじゃないけどある程度はね。」
「僕が紗奈と将来結婚するとして、大分力不足じゃない?」
「能力が足りないという事なら私も一緒。だから2人で頑張ればいいんじゃない?」
「紗奈は優秀じゃないか。僕はかなり努力が必要に思えるけど?」
「冬馬は資質の部分で優れていると思うわ。肝が据わっているというか、物怖じしないでしょ?」
「そうかな?」
「そうよ。大抵家に呼んだ友達は皆オドオドしてまともに私の両親に挨拶すら出来ないのよ?」
「そうなの?」
「うん、それに今まで面倒事があっても、冬馬って絶対テンパらないじゃない。」
「あー、まぁあんまりあたふたはしないかな?」
「そういう事って訓練してもなかなか克服することは難しいのよ?十分凄い資質だと思うけど。」
「そんなもんかな?」
「うん、だから不安になるのはしょうがない、正直私だって不安に感じることもあるし。」
「そうなんだ。」
「そう、だから2人で頑張りましょうっていう事。」
「そうだね。うん、なんかスッキリしたよ。」
「なら良かったわ。てっきりこの学校が性に合わないとかで悩んでるのかと思ったわ。」
「あー、まぁ大丈夫だよ。受験組の人も結構いるし。」
「それならいいんだけど。ねぇ、今日はお昼中庭で食べましょうよ。天気もいいし。」
「いいよ、じゃ昼休みに中庭で。」
それからは特に何事もなく1週間が過ぎた頃、
「今日の帰りに空き教室に来なさい」
例の親衛隊とやらにまた呼び出された。
紗奈に一緒に帰れないことを伝えると、「私も一緒に行くわ」とついてきた。
事のあらましを掻い摘んで説明すると「何で私に言わなかったの!」とちょっとご立腹の様子。
いやぁ、大したことじゃないと思ってたし。
空き教室到着。教室にはこの間の親衛隊とやらが7人、プラス男子生徒5人。ずいぶん多いな。
僕に痛い目を見せようってところかな。今までもこんな事してたのかな…。
「えっ?!紗奈様?!どうしてこちらに?」
「どうしてって、冬馬は私の彼氏だからに決まってるでしょ。それで、何の用で冬馬を呼び出したの?」
「い、いえ、その男自身やその周辺を調査したのですが、特にこれといった長所もなく紗奈様には相応しくないかと思いまして…。」
「それで?」
「紗奈様にはこの西田物産の跡取り息子の西田君のような人が相応しいと思います!」
「西田です。紗奈様、こんな男に紗奈様と付き合う資格はありません。僕ならあなたに見合うと思いますが。」
「そうです!ですからその男を説得しようと…。」
「……説得?こんな大人数で?」
あ。ヤバい。
「ふざけないで!!!!!!!!!!!」
うおぅ、久しぶりに紗奈の大声聞いたなぁ。
「ねぇ?!!!何の権限があって私の彼氏をあなた達が決めるの?!ねぇ?!あなたは私の何?家族でも友達でもないのに!」
まぁ家族や友達でも勝手に彼氏決めないけどね。
「相応しくない?付き合う資格?…私が!!!冬馬の事を好き!!!これ以上の資格があるなら言ってみなさい!!!」
ありがとね、紗奈。僕も好きだよ。
「えっ…で…でも私達は紗奈様のことを思って…。」
「誰も頼んでない!!!大体あなた達誰よ!!!碌に挨拶もしたこともないのに!!」
「わ、私は紗奈様にお近づきになるなんて畏れ多くて…。」
「だったら一生遠巻きにでも見てなさい!!関わってこないで!!」
「そんなぁ…。」
「それと、西村君でしたっけ?」
違うよ、紗奈。それじゃひ〇ゆきだよ。
「西田です…。」
「あなた自分なら相応しいと言ったわね?どこが?私あなたの事大嫌いなのだけど!」
「え…どっどうしてですか?!」
「私の彼氏をバカにするような男を好きになるワケないじゃない!馬鹿じゃないの?!」
「そ、そんな…。」
「こんな人数集めて何しようとしてたんだか…。家の力を使って全力でこの人たち追い込みたいのだけど、どうする冬馬?」
(まずいよ、北条グループ敵にまわしたらただじゃすまないよ…。)
(俺だって西田に脅されて連れてこられたんだけど…)
(僕だって言う事聞かないとお父さんがクビにされるから…)
なんか周りにいる人たち怯えちゃってるよ。
「いや、そこまでしなくて良いよ。」
「いいの?…なら全員で冬馬に謝罪しなさい!」
「「申し訳ありませんでした!」」
「うん、わかった」
「これからは私たちに関わらないように!下手に絡んできたら本気で潰すから。」
「「わかりました!」」
2人でその場を後にする。
「落ち着いた?紗奈、大丈夫?」
「うん。…なんか疲れたわ。」
「帰りにお茶でもしてこうよ。」
「そうね、そうしましょう。」
僕たちは前から紗奈が行きたいと言っていたカフェに着いた。
「で?冬馬は一人で何とかしようと思ってたの?」
「まぁね。荒事には慣れてるし。」
小さいころから空手やってるからね。死にはしないでしょ。
「ねぇ、小学校3年生の頃のこと覚えてる?」
「3年生の頃?」
「野良犬から冬馬が助けてくれた時の事よ。」
「ああ、そんな事もあったかな?」
「私を庇って血だらけになった冬馬が震えてた私を慰めてくれたじゃない?」
「あぁ、そしたら紗奈泣き出しちゃったんだよなぁ。よっぽど野良犬が怖かったんだと思って、泣き止んでくれなくて困ったよ。」
「野良犬が怖くて泣いたんじゃないの。冬馬が死んじゃうんじゃないかって思って怖くなったのよ。」
「そうだったの?なかなか泣き止まないから焦ったよ。」
「そうね、珍しく冬馬があたふたしてたわね。ふふっ。」
「しょうがないだろ?好きな子が泣いてたらどうしたらいいのかわからなくなるよ。」
「5~6人の不良に囲まれても動じない冬馬がねぇ?…もう、本当に…。冬馬、好きよ。」
「?うん、僕も好きだよ、紗奈。」
「そういう事だから冬馬が危険な目にあうのはちょっとトラウマがあるのよ。だから私の事も頼ってほしいの。」
「そっか、そういう事ならわかったよ。これからは気を付ける。」
「そうして頂戴。」
本当は僕が紗奈を守りたかったけど、今日の紗奈は最強だったなぁ。
「…帰りましょうか、今日はお爺様とお婆様が久し振りに冬馬と話したいって。夕食一緒出来るわよね?」
「うん、じゃあお邪魔するよ。」
「じゃあ行きましょう。」
そうして2人で歩く。
まだまだ将来の事を考えると不安は尽きないが、紗奈と2人でなら乗り越えてい
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!むっ、むしっ虫がっ!腕にっ!腕に着いたのっ!とうまっ!とって!取って!冬馬ぁぁぁ!とってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「えっ?紗奈?」
紗奈が叫びながら前を走っていく。取ってって言いながら何で走って行っちゃうかなぁ。
僕は急いで紗奈を追い掛けた。
お読み頂きありがとうございました!