割れ目
箱から電子音がまた鳴った時は、またかと思い慣れたように封印している短冊をみた。
「次は何だって?」
箱を持っている彼女に聞いてみる。
「一つはすべて、すべては一つ。つながらないものも一つにつながる」
そういうと、目の前には大きな割れ目が広がっていた。
「わわっ」
一瞬前まではなかったのに、急にできたせいで彼女はその割れ目に落ちそうになった。
手錠の鎖がピンと張る。
俺はとっさにつながっていない手で彼女の手首をつかんだ。
「落ちるな!」
割れ目の壁に足をついて、彼女はこちら側へ登ってきた。
「かなり深いみたいで、底が見えないや」
それでも彼女は底のほうに目をやっていた。
「で、どうやって向こう側へ渡れと?」
「この文章がヒントみたいだけど…ロープも紐も見当たらないし……」
俺たちは、何も手が出せずにいた。
「つながらないものも一つに……」
ここから戻ることもできない。
相変わらず後ろには壁が迫っていた。
「……ここから向こうまでの距離ではジャンプしてもぎりぎり届くかどうか…」
「ほかに道はないよ」
彼女はそういうと、足回りのストレッチを始めた。
「もしかして…」
「そのもしかしてよ」
アキレス腱を伸ばしながら、彼女は俺に断言する。
「やるしか、ここから出れる道はない」
そう言って、俺にもストレッチをするようにといった。
数分ほど経つと、二人とも準備はできた。
目標の通路はすでに見えているし、飛び移れる自信はあまりないがすることはできるだけしたい。
「こうなると、死ぬときは一緒っていうことか」
彼女の顔を見ながら言った。
「行くよ」
後ろの壁まで下がり、助走をつけて思いっきりとんだ。
空中を飛んでいる時の感覚は、ほとんどない。
気づいたら割れ目はなくなっていた。
着地する衝撃を両足の膝を折ることで押さえると、飛んだはずの割れ目を探した。
「全ては一つになるっていうことか」
俺がつぶやいた時、彼女は割れ目があったとこでジャンプをしていた。
「何にもならないよ」
「多分、この課題をクリアできたんだと思う。先へ行こう。こんなところは、早く出て行くのに限るからな」
俺はそう言って、彼女を連れてゆっくりと歩き出した。




