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水攻め

通路を進むと、再び電子音が聞こえてきた。

「今度は何だって?」

俺があの箱を持っている彼女に聞いた。

「扉があってもあけてはならない。いざというとき開ければいいかも」

「扉なんて見当たらないけど……」

俺が周りを見回してみると、鍵がかかり開きそうにない鉄でできた扉が俺たちの右手の通路にあった。

「これのことか、でもどうやって開けるんだ?」

取っ手の部分には何重にも鎖が巻きつけられており、さらに南京錠で留められていた。

「開くわけないじゃない。こんなに厳重にされてちゃ」

清らかな服を身にまとい、すこしばかり体重が軽くなった印象があるが、そんなことはなく、前と体重は変わらないようだった。

だが、それでもその鍵を壊すための力にはならず、傷がついても壊れることはなかった。

周りを見回していると、いつの間にか前後を壁で挟まれるように、退路がふさがれていた。

「ちょ、ちょっとー!」

彼女が壁に向かって走っていくが、俺は扉の横にあるレバーに気付いた。

手錠が着いている腕を思いっきり引っ張ると、彼女は躓いたように転びそうになった。

あわてて彼女の体と地面の隙間に俺の体を差し込み、どうにか受け止めた。

「急に何よ」

通路の壁にもたれながら、彼女は服についたほこりを払っていた。

当然のように、俺に向かって怒っている。

「レバーを見つけたんだ。引っ張ればどうにかなるかもしれない」

俺は、そのレバーのところへ彼女を案内した。

「じゃあ、さっさとひきましょう」

彼女はすぐに、俺が見つけたレバーを引こうと取っ手をつかんだ。

だが、手前に倒そうとしても、鎖が邪魔をして扉が動かない。

「役立たず!」

彼女が叫ぶと、突然、沸騰している水のような音が四方から聞こえてきた。

反響してさらに不気味さが増している。

「何?あの音」

「俺が聞きたいよ」

彼女は俺の腕にしがみついてくる。

突然、ゴトッと壁の一部が崩れ、黄色い水が勢い良く入り始めた。

「水攻め!」

冗談抜きで死にそうな状況だ。

1分ほどで、俺の膝にまで達する勢いで、さらに水かさが上がる速さが速くなっているような気もする。

その時、ここから脱出するための案が出てきた。

扉の鎖が溶け始めたのだ。

俺たちと扉と壁が無事なのに、なぜか鎖だけが解けていく。

「わかった!」

俺が唐突に叫んだせいで、彼女はとっさに耳を覆おうとした。

「どうしたのよ!」

激しい水音で、声を張り上げていないと二人とも会話もままならない。

「レバーに近いのは!」

「私!」

南京錠が水面に浮かび上がり、完全に鎖はとけ切られていた。

「思いっきり引っ張れ!」

レバーに手をとどかせ、グイっと手前に引っ張るのが、うっすらと見えた。

とたんに扉が開かれ、その口で液体を飲み干し始めた。

同時に、流れてくる液体も見る見る間に少なくなり、何事もなかったかのように壁自体も片方消えた。

「扉ごと消えているって…」

「壁も消えてるから、先に進めるし、それでいいことにしようよ。ここから脱出するのが問題なんでしょ?」

「そうだったね」

どうにか進めることができるようになった俺たちは、箱を持ったまま残り10枚の封印になったのを確認してから、後ろに壁が迫ってくるのを出来るだけ無視して、歩き出した。

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