進むしかない道
棒は樫の木でできているようで、ものすごく丈夫だった。
「つえ代わりに使えるな」
そういって、ブンッと振った瞬間、手が一瞬緩んだ拍子に棒は縦に2つに分かれ、さらに長細い二つの杖になった。
「私の杖にもなるようね」
彼女はかなり楽しげに言った。
だが、1m30cmぐらいある杖だから、彼女の体格に対して少しばかり大きい印象があった。
杖と比べると、彼女は頭半分ほど杖より長いぐらいだった。
「そんなことよりも、この穴から向こうをのぞいてみたら、道は二股に分かれているっていうことだろ?どちらを進んでも道ということは……」
「どっちに進んでも最終的にゴールにたどり着けるということかな?」
彼女は杖をつきながら遊んでいる。
箱は床に置かれているように見えるが、宙に浮かんでいるようにも見える。
どちらにせよ、この箱がなければこの迷宮から出ることはできないのだ。
さらに、封印されている中身が、最も重要なような気もする。
そんなことを考えながら、杖をひきぬいた穴をのぞくと、確かに目の前で二股に分かれているのが見えた。
右側の道は、徐々に下にさがりながらまっすぐに伸びており、左側の道は徐々に上がっているように見える。
外に出ないと、何も起こらないことは分かっていた。
「外にいこう」
杖があった穴は、取っ手代わりになりそのまま手前側に引っ張ったら、何の振動もなくするすると開いた。
風も起こらず、それどころか空気が動いている感覚すらない状況で、俺たちは部屋からの一歩目を踏み出した。
「右か左か」
俺たちが廊下へ出ると、彼女に聞いてみた。
廊下の屋根には、一定の間隔で明り取り用の窓が天井に開けられていた。
天井の窓にははめ殺しになっているガラス化プラスチックのような透明な板がはめ込まれており、外に出ることはできない。
「杖に聞いてみよう」
彼女の答えは、杖を静かに直立させ、手を離し倒れた方向に進むというものだった。
「別にどっちに行ってもいいのなら、こうやって進んだほうがおもしろいでしょ」
彼女は俺にかなり輝かしい笑顔を向けた。
「とにかく、進めばどうにかなるか」
笑顔を見ていると、なんとかなるような気もしてきた。
真っすぐな道を徐々に上がりながら歩いていると、箱から音が出てきた。
どう考えても電子音にしか聞こえないその甲高い音に気づいてみてみると、消え去った1枚の封印紙のすぐ横にはってある紙からのようだった。
「これが合図になっているようだね」
彼女と一緒に見ると、次の文章が書かれていた。
「一つでも二つでもありえなく、存在するは目の前の道」
振り返ると、今まで歩いてきた道が見えない。
「これ、壁だよ」
「戻ることはできないっていうことか。わざわざこれで教えてくれなくても…」
そう言っても、すでに表示された紙は、解いた瞬間に箱に吸収されていった。
「こうやって消えていくんだね」
「問題は、この道を進んでいくと何が待ち構えているかだ」
俺は、ポツリポツリと光っている点を目指しながら、歩いて行った。




