表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

うなぎ・ウナギ・鰻

土用の丑の日を前に思うこと。皆さん。お願いですから『ちゃんとした鰻』を食べてください!

作者: 鶴舞麟太郎

 今年の土用の丑の日。鰻を食べる予定はありますか?




 皆さん、今年、2022年は、夏の土用のうしの日が、なんと、2日もあるそうです。


 それが原因なのか定かではありませんが、今年も職場の親睦会で、うなぎ弁当を頼むようです。しかも、頼む業者を確認したら、去年と一緒!


 おいおい、お前ら、アレで良かったの!?(※私は昨年絶望しました)


 ですから、私は、鰻以外のメニューを増やすように、強硬に主張しました。




 冒頭から、こんなことを言っているくらいだから、わかると思いますが、私は、アンチ鰻弁当派です。








 でもね、私は鰻を食べるのが大好きなんです。


 鰻大好き人間の私が、1年の内で、最も鰻が脚光を浴びるこの日に、なぜ、鰻弁当を忌み嫌うのか。疑問に思った方は、この後に書いてあることをよく読んでください。


 なお、これから書くことは、昨年8月に投稿した『土用の丑の日に思ったこと。「みんなスーパーで鰻を買うな! いや、お願いします!買わないでください!!」』と、かぶる内容もあります。ただ、今回、新しい情報も入れましたので、既読の方も、「ああ、もうそんな季節なんだな!」とでも、思っていただければ幸いです。








 まず、最初に確認しておきます。



『土用の丑の日は鰻の旬』







 ……実はこれは、ガセです。




 江戸時代、夏場は鰻が売れなかったそうです。



 「えっ!?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、考えてみれば当たり前です。


 人間、暑い時期には、さっぱりしたものが食べたくなりますよね。


 夏バテとか健康云々(うんぬん)は別にして、食欲もないし、盛り蕎麦そばとか素麺そうめんとかでさっぱりと済ませたい。これが人情ではないでしょうか。


 そんな中で、鰻といったら、相当こってりした食べ物です。一般的に獣肉を常食としていなかった江戸時代、鰻は飛び抜けて『重い』食べ物だったであろうことは、容易に想像がつきます。


 さらに言えば、鰻の旬は、晩秋から初冬とされてきました。これは、鰻が冬眠に備えて、活発に餌を摂り、体に脂を蓄えるためです。


『冬眠明けの春ほどではないが、夏場の鰻は、まだせていて、そんなに脂が乗っていない』


 これが当時の一般的な考え方でした。



 万葉集にうたわれているとか、平賀源内が考えたとか、夏に鰻を食す根拠は諸説あるものの、少なくても、今も昔も、土用の丑の日だからといって、鰻が特段『旬』の食べ物なわけではないのです。このことは、知っておいても良いと思います。








『鰻の旬は晩秋から初冬。夏に鰻を食うヤツは馬鹿』







 ……実はこれも、ガセです。




「お前、ふざけんなよ!! さっき『冬眠明けの春ほどではありませんが、夏場の鰻は、まだせていて、そんなに脂が乗っていない』って書いてたじゃねーか!」


 こう思われた方。落ち着いてください。その後で『当時の一般的な考え方』って書きましたよね。


 この『当時』とは、江戸時代のことです。つまり『鰻の旬は晩秋から初冬』という考え方が、『今も一般的だ』と言っているわけではありません。



 ちなみに、晩秋から初冬に旬を迎える鰻は、現在も確かに存在します。


 それは何かというと、『天然鰻』です。

 先ほど申しましたように、天然鰻は、この時期、冬眠に備えて、体に脂を蓄えているため、確かに一番脂がのっていて、美味しいです。


 でも、現在、天然鰻の漁獲量は、ほとんどゼロに近いレベルです。おそらく、天然のニホンウナギだけで商売ができる鰻屋は、既に国内には存在しないのではないでしょうか?


 そして、養殖鰻に関しては、餌の管理や温度管理をしっかりされていますので、まともな業者なら、春だろうと夏だろうと変わらぬ品質の個体が出荷されてきます。


 つまり、希少な天然鰻を求めるならともかく、普通に出回っている鰻に関していえば、特段の旬は存在せず、いつでも美味しく食べられることになります。



 そう、食べたくなった。まさにその時が、鰻の旬なのです。








『万葉集にも「夏は鰻を食え」と書いてある。夏バテ防止に鰻を食べるべきだ』






 ……万葉集のくだりは、確かに事実です。が、総論として、私はそうは思いません。



 簡単に手に入る栄養源が、鰻しかなかった古代ならともかく、今では、さまざまな栄養価の高いものが、安く、簡単に手に入ります。


 夏バテ防止を主目的に鰻を食べるなど、無駄も甚だしいとしか、言いようがありません。








 じゃあ何のために鰻を食べるの?



 美味いからに決まっているじゃありませんか!



 土用の丑の日だから鰻を食べる!? 夏バテ防止のために鰻を食べる!?



 私は、そのような不純(●●)な動機のために、貴重な鰻を消費してほしくはありません。


 どうせ食べるなら、美味いから食べる。楽しむために食べる。

 かくありたいものです。








 では、美味い鰻を食べるためにはどうすれば良いか。答えはこの3つです。


 1 専門店で食べる。

 2 専門店から作りたての弁当を買ってくる。

 3 白焼きを購入して自分で味付けする。




 一応解説しておきますが、『1』が一番美味いものを食える可能性は高いです。


 鰻屋は専門職。専門家の技術は、素人では超えられない壁があります。

 ただし、店によっては、好みが合わないものもあると思います。最初の店選びは、食べ○グなどのグルメサイトを見ながら慎重に選びましょう。


 その際には、コメントをしっかり読むようにしてください。


 例えば、私は良いコメントとして、「待たずに食べられた」というものがあったら、その店は避けます。


 基本的に、鰻屋は注文を聞いてから鰻をき始めるものですので、どんなに速くても、調理の時間は20分~30分はかかります。1時間半以上待たされた場合は、流石に話が変わってきますが、30~60分待ちぐらいなら、十分に適正な時間と考えて良いと思います。


 ですから、鰻屋の口コミで「注文してから時間がかかる」と書いてあったら、逆にその店は『当たり』である可能性が高いのです。



 中には、注文が殺到するため、注文があることを見越し、流れ作業のように焼いている店もありますので、出てくるのが速ければ『不味い』とは、一概には言えません。

 ですが、行列のできるような店でもないのに、注文してすぐに提供されたなら、その店の鰻は作り置きを温め直して出している可能性が高いです。当然、味は期待値より数段落ちると思っても差し支えありません。






『2』は次善の策です。こちらも専門家の調理ですから、間違いはありません。



 ただし、『2』に関しては注意が必要です。


 それは、美味い状態で食べようと思うなら、なるべく早く食べなければいけないということです。



 そもそも『鰻重』という料理自体が、蒲焼きが冷えると不味くなるから、温かいご飯の上に蒲焼きを敷いて、少しでも味が落ちるのを避けようとしたのが起源らしいです。

 この事実からわかるように、鰻は温かい状態で食べなければ、極端に味が落ちる食べ物なのです。

 味を落とさない工夫として、わざわざ新しい料理が考え出されるほどですから、その度合いは推して知るべきでしょう。



 刻一刻と味が落ちていく鰻。電子レンジなどの文明の利器を活用する手もありますが、どんなに機械が頑張っても、落ちた味が100%戻ることはありえません。なるべく早く食べましょう。


 そして、もし、弁当を頼んだなら、配達を待つなんて横着おうちゃくなことはせず、できあがり予定時刻の10分前には鰻屋の入り口で待機し、自分で持ち帰るようにしましょう。

 また、家で待つ家族は、汁物や副菜など、鰻以外に必要なものを全て準備し、食卓の前に着座しておくぐらいの心構えが必要です。


 それが、『美味しいものを、美味しく食べる』ということなのです。






『3』は、信頼のおける鰻屋が、周辺に存在しない。仕事等の関係で、食べたい時刻に鰻屋が開いていない。そんな方にお勧めしたい方法です。


 先に触れた2つの方策ほどではありませんが、『3』ならば、それなりの物を口にすることが可能かと思います。




 鰻の調理で何が一番大変かといえば、裂いて焼くところです。ここの調理を間違うと、まともには食べられないものが出来上がることも珍しくはありません。


『3』のコンセプトは、その一番難しいところを専門家にしてもらって、最後の味付けだけを自分で行うということです。この調理方法ならば、ご飯の炊き方とか、タレの量とかを自分の好みにできますし、味付けの濃い薄いも自由自在です。






 そうなると、このような疑問をもたれる方が、出てくるのではないでしょうか。



 「蒲焼きを買ってきちゃダメなの?」


 「わざわざ食いに行かなくてもよくね?」




 もっともな疑問です。一つずつお答えしましょう。



Q 蒲焼きを買ってきちゃダメなの?


A ダメです。白焼きにしてください。


 売っている蒲焼きは、そのまま蒲焼きとして食べることを前提に調理してあります。そして、一度味付けまでしてしまったものを温め直したところで、中まで染みたタレが、本来の旨味と入れ替わってしまった鰻の味が、元に戻せるわけではありません。白焼きも、多少脂は抜けていますが、蒲焼きのように、タレを付けて何度も焼いているわけではありませんので、被害が少ないのです。

 ちなみに、どうしても『蒲焼き』で売っている商品を食べたいのなら、真空パックのものにしてください。アレは食感はダメですが、味の低下レベルは少ないように感じます。





Q わざわざ食いに行かなくてもよくね?


A ダメです。食べに行けるなら行ってください。


 あくまでこちらで示したのは窮余きゅうよの策です。いくら自由度が高いとはいえ、素人調理がプロを超えることは滅多にありません。根本的な話、それでOKなら、鰻屋は潰れて、白焼き販売店になっているはずです。世の中に、白焼き販売店と鰻屋のどっちが多いか。考えてみればわかりますよね。

 そもそも、鰻屋で出るのは『鰻の蒲焼き』ですが、厳密に言えば家で作っているのは、大半が、『鰻の白焼きの煮付け』です。近い味わいが出るとはいえ、同じ物ではないのです。






 さて、ここまで、「こうすると美味しい鰻が食べられるよ!」という方法について書いてきました。ここからは、やめてほしいことを書きます。お願いですからしないでください。


 1 スーパーの蒲焼きを買う。

 2 専門店ではない弁当屋のケータリングを利用する。

 3 通販で買う。



 理由は、昨年エッセイに書きました。興味があれば読んでください。


※読者の方から『活魚で仕入れた鰻を店内でさばいているスーパーがある』というお話を伺いました。私は、スーパーの蒲焼きは、『真空パックか、冷凍で仕入れて解凍販売している』という風に思い込んでいたので、かなり驚きました。


 スーパーでも、質の良い鰻を販売している店はある。 ここに追記いたします。




 ちなみに、これらの手段を選んでしまっても、ややまし(●●)にする方法は存在します。


『1』や『3』なら、前述の通り、白焼きや、真空パックの商品を買えばいいのです。


 専門店のそれには、足下にも及びませんが、上手く調理すれば、それなりの味が楽しめるかもしれません。


 ここまでが、私の考える『ちゃんとした鰻』です。






 これから外れた物を買うのは、どんなものであれ、お金の無駄でしょう。


 例えば『2』。これを選んでしまった場合、残念ながら、私には、高いお金を払って悲しい気持ちになる未来しか見えてきません。




 国産鰻を使った鰻弁当やら、有名店の天然鰻の通販やら、高級そうな看板を背負っていても一緒です(※期待が大きい分だけ、失望も大きくなるはずです)。


 輸入物と比べれば、そちらの方が美味しいのでしょうが、調理して時間が経った段階で味が目に見えて落ちていくのが鰻です。時の経った高級国産鰻なら、C国から活魚で輸入された鰻を裂きたて焼きたてで食べる方が、間違いなく美味いものを味わえます。


 しかも、希少で高価な天然鰻に至っては、夏は旬ですらありません。通販で国産天然鰻の蒲焼きを入手するのは、言い方は悪いですが、金をどぶに捨てていようなものです。


 そんなわけで、今のこのご時世、夏に天然鰻を取り寄せてまで食おうとする輩は、「高ければ美味い」と信じ込んでいる、馬鹿舌の持ち主に違いない。そう私は考えています。



 希少なものを不味く食べようとする、この行為は、お金の無駄でもあります。が、それより何より、命を奪われたにも関わらず、不味く料理されてしまった鰻たちに対する、冒涜に他ならないのです。






 さて、高い方に関しては、買う方が注意すれば避けることは可能です。


 問題は「安く、それでいて『ちゃんとした鰻』を食べたい!」と言う方です。


 こんな方のニーズを満たす方法はないものでしょうか。


 実はあるんです。




 それは何か?




 牛丼屋です。




 あ、いま、馬鹿にしたでしょう。




 でも、牛丼屋は馬鹿にできないんですよ。


 実際、牛丼屋の鰻は全て真空パックした物です。食感こそ落ちますが、味の低下は抑えられています。

 使われている鰻は、多分外国産のヨーロッパ鰻等でしょうが、冷えた国産の高級鰻より、よっぽどまともな味わいが楽しめます。


 さらに、牛丼屋の良さは、色々な食べ方ができるところです。牛丼と一緒に食べるのは結構スタンダードになってきましたが、その他にも、七味を振ってみたり、生卵をかけてみたり、ご飯とぐちゃぐちゃに混ぜてみたり……。

 普通の鰻屋でやったら、『出禁』になりそうなことでも、平気でできます。特に、鰻を細かくして、ご飯とぐちゃぐちゃに混ぜるのは、普通に調理した時よりも身が軟らかい、真空パック鰻ならではの食べ方かもしれません。





 ここまで色々書いてきました。でもね。できることなら、私は、ちゃんとした鰻屋さんに食べにいってほしいんです。


 確かに、スーパーの真空パック鰻や、牛丼屋の鰻の味は、それなりにまともです。でも、味の問題じゃないんです。



 今、鰻屋さんは危機に陥っているんです。



 鰻自体が危機的状況にあるのは、皆さんもご存じのとおりです。

 でも、それ以上に鰻屋さんの危機の方が深刻です。






 私が時々行く鰻屋さんがあります。ここは、とにかく安く鰻を提供することを信条としているお店で、田んぼと山しかない場所にあるのに、平日でも行列ができるほどです。ですから、1人で行った日には、相席は必至です。

 その店内は狭くて汚いことで定評(?)がありますが、味の方はなかなかです。その味が評価され、『きたなトラン』三つ星にも輝いた名店でもあります。



 先日、この店で、注文を待っている間に、店の若旦那から聞いた話です。


 この店では、価格を維持するため、鰻を輸入物(※活魚の輸入)に切り替えたのですが、大きさが不揃いになるなど、年々その品質が悪化してきていました。

 たまりかねた若旦那が、業者にクレームを入れたところ、出荷量の減少が原因なので、安く提供するにはどうしようもないと、言われてしまったとのこと。


 どういう理屈かというと、蒲焼きに加工するのなら、ちょうど良い状態まで育ったところを全て水揚げし、加工してしまってから冷凍保存すればいい。ところが、活魚は、池から出して時間が経てば、弱ったり死んだりしてしまいますから、その時の需要量しか水揚げができません。

 このご時世で、鰻屋さんも、廃業や規模縮小が相次ぎ、活魚の出荷量自体が減っています。しかし、池のサイズは簡単には変えられません。ですから、以前のように池をからにして出荷するのではなく、池の中にいる鰻を、必要量だけ捕獲して出荷することになります。

 そうすると、いつまでも鰻が同じ池にいることになりますから、生育状態がまちまちになったり、病気が流行ったりしてしまうことが出てきます。


 この結果、町の鰻屋さんには、サイズや品質がまちまちな鰻が入荷されるようになる。こういうわけです。



 私は、最近、円高でもスーパーの鰻は価格がそれほど上がらないのに、値上げしている鰻屋さんが増えてきたように感じていました。おそらく、円高等による飼料費の高騰だけでなく、これも原因の一つなのだろう。と、心中納得した次第です。




 生きた鰻を安く提供するためには、品質の維持が難しく、品質を維持するためには価格への転嫁が避けられない。これが現在の鰻屋さんの状況なんです。








 さて、スーパーの鮮魚売り場を覗けばわかりますが、鰻自体は、それなりに出回っています。

 稚魚であるシラスウナギも、2018年ほどの不漁にはなっていないようです。



 では、なぜ、鰻屋さんが困っているのか。



 もうおわかりですね。それは、ほとんどの鰻が、活魚の状態ではなく、加工された状態で出荷されてしまうようになったからです。




 何度も書きましたが、鰻の場合、活魚の状態で調理するのと、一度調理された物を温め直す(※白焼きから調理する場合も含む)のでは、味に雲泥の差が現れます。いくら低コストで、手に入れられるからといって、そんな加工済みの素材を使うのは、きちんとした鰻屋さんであればあるほど、耐え難いことでしょう。




 ちなみに、この件に関して、スーパーのバイヤーさんや、問屋さんのことを非難するつもりは毛頭ありません。それどころか、この方々は、限られた条件の中で、非常に良い働きをしているとさえ、思っています。


 なぜなら、彼らは、『客のニーズに合わせて動いているだけ』なのですから。




 では、非難されるべきは誰か。




 消費者です。


 そう、消費者が買うから悪いのです。




 スーパーの、冷凍輸入された鰻の蒲焼きは、確かに安いです。しかし、鰻屋さんで食べる鰻と比べたら、その味は、ズワイガニと、カニカマぐらいの差があるかもしれません。




「鰻を食べたい!」と考えているあなた。「食べたい」と考えるからには、既に鰻の味を知っていることと思います。もし、まだスーパーの冷凍鰻や、弁当屋の鰻しか食べたことがないのなら、ぜひ一度、一度で良いので、きちんとした鰻屋さんで、裂きたて焼きたての、プロの技を味わってきてください。


「最近鰻が美味しく感じない気がするけど、何でだ?」と考えるあなた。もしかして、スーパーで買ってきた鰻や、通販の鰻を食べてはいませんか?

 どんな名店や、どんな名産地の鰻でも、日が経てば味が落ちるのは一緒です。『本当の味』を求めて、また鰻屋さんに、足を運んではみませんか?




「でも、どうしても安く食べたいんだ!」そう考えるあなた。そんなに安く食べたいのなら、鶏もも肉や豚バラ肉などを、蒲焼きのタレで焼いて食べてみてはどうでしょう? 鰻のタレで焼いて、山椒を振ると、あら不思議。鰻チックな感じになりますよ(※注)。

「鰻の風味が~」とか言う方は、『うなぎボーン』とかいう名前で、スーパーとかでも鰻の骨せんべいが売っています(※おつまみとして)。蒲焼きのタレに、この鰻の骨を1日ぐらい漬け込んでおけば、鰻のダシが出ますから、それを使えば、風味もかなり増します。

 鶏や豚なら絶滅の心配もありませんし、思う存分それっぽいものが食べられます。いかがですか?






 江戸時代前期までは、鰻は『美味しい食べ物』とは認識されていませんでした。どちらかといえば『薬』扱いです。

 実際、調理方法が発達するまでの鰻は、泥臭く、脂ぎっていて、骨だらけ。その上、皮はゴムのよう。見た目だって蛇に似ていますし、ぬるぬるするから調理も難しい。決して高級な食材ではありませんでした。そんな鰻の名を、ハレの日のご馳走になるまで高めたのは、鰻屋さんたちの努力のおかげです。



 いくら安いからといって、冷凍で輸入される蒲焼きをみんなが買っていては、鰻屋さんの鰻は高いままか、品質が落ちる物しか出てこないようになってしまいます。その結果、まともな鰻屋さんは、今まで以上に、どんどん廃業に追い込まれていくことでしょう。


 今年の夏の土用の丑の日まで、まだ1週間ほどあります。鰻料理という日本文化の未来を守るため、皆さんも今年の鰻食について、是非もう一度ご検討をお願いします。













※注:京都下鴨は、下鴨神社の近くに、『みたらし団子』発祥の店とも噂される名店があります。そちらで『みたらし団子』を食す機会があったら、ついでに『磯辺餅』を頼んでみてください。私は偶然初めて食べたとき、かなりびっくりしました。今では京都に行くたび寄っていますw




 ちなみに、本当に美味い、贅沢な鰻の食べ方については、先週『鰻と山葵と山椒と』を投稿しましたので、興味のある方はご参考になさってください。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  私も鰻が大好きです(*^_^*)  鰻愛に溢れたエッセイ素晴らしい!!  でも年々価格が上昇して、鰻好きの私の財布では1匹丸ごと入った物が食べられなくなりました……。  ハーフでも2,0…
[一言] とても鰻への愛を感じるエッセイでした! 自分も鰻が好きで、行き付けの鰻割烹が一軒あります。毎年の忘年会もそこでやっております。(手前味噌ですが凄く美味しくて、尚且つ値段もわりとお手頃!) …
[良い点] 鰻への愛。 こんなに愛に満ちたエッセイは皆に読んでほしいです。 ……と言いながら、うっかり読みそびれていてごめんなさいm(_ _)m [気になる点] 二駅となりに美味しい鰻やさんがあ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ