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それは古い言い伝えです
むかしむかし、砂漠の国々に言い伝えられる、とても恐ろしい妖精がおりました。
彼等は、慈悲深く残忍で、どんな妖精達よりも美しく艶やかで、男も女もその微笑みは宝石のよう。
広げた羽は紫紺の光を帯びた真紅で、月光に翳すとふくよかな紫に見えたのだとか。
だから、もし夜の砂漠に、オアシスでもないのに不自然に生い茂る立派な林檎の木を見たら、決して近寄らないように。
彼等は、気に入った人間をとても大切にしますが、妖精は、一度捕まえたものは二度と返してくれないのですから。
もしあなたに、愛する家族や大切な友人がいるのなら、彼等に出会わないように、夜の砂漠では妖精除けの香炉を焚いておかなければなりません。
それは、古い古い魔術に育まれた、信仰を司る時代の林檎の木の怖い妖精で、大いなる豊穣と祝福と共に、悍しい災いを齎すもの。
けれども、その美しさに惑わされ、数々の大国の王や王妃が、災いを招き入れて国を滅ぼしたと言われています。