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最終回 本当にただそれだけの話

夏休み明けのドタバタを終えた、ある日の放課後。


 俺は、文芸部の部室で突っ伏していた。



「疲れた……」


「先輩学校で、人と話さないんですから疲れませんよね?」


「ぐふぅ!」



 槍みたいにエグイ言葉で俺の心臓を突き刺す。


 うぅ、何度目だこの感じ。



 だけど


「酷い……けど、うれしいな」



 夏休み前の俺達を思い出す。


 よくこうやって、他愛も無いことを話していた。



「Mなのよ、文夜は」


「桜! 変なこと言うなって! 勘違いするだろ!」


「じゃあ、私は先輩を虐めてあげます」


「ほらあ!」



 すでに虐め倒してるじゃないか! 


 そんな思考もよそに、桜はコーヒーを飲んでいた。



 うぅ……こいつ完璧主義だからコーヒー飲んでる時に話すと怒るんだよなぁ。



「それにしても先輩。よく申請が通りましたね」



 申請、刊行申請のことだろう。


 うちの出版社では、会議に通らないと刊行許可が下りない。 



 だが、ぶっ通しで書いたあの小説は、すぐに通った。


 うるしさんいわく、



「投稿作ほどではないです……でも、とてもいい作品です」 


 と、言ってくれた。



 だが、よかった。それを学校に伝えるとすぐに部室が元に戻った。


「まぁ、また汚いですけどね」



 少しずつ綺麗にしていた部室が全てパー。


 また、汚部屋と化してしまった。



「……懐かしいなぁ」


 最初の部室もこんな感じだった。



 望がいたあの時を思い出す。


「文夜、見すぎ」



 ついに幻聴が聞こえるとは……。


 すると、思いっきり耳をつねられた。



 望に。



「痛い痛い痛い痛い痛いっ! ほ、本物!」



 手から離れ、正面から望を見つめる。


 透けたり、光ったりはしていない。



 実体の望だ。



「はぁ! なんで? どうして?」



 他の二人の反応は薄い。まさか、また俺だけしか見えていない……。



「私達も見えてますよ。今日病院から来るって聞いたんです」


「……は?」


「夏休みの終わりがけに、望ちゃんの目が覚めたの」


「じゃあ、俺が見ていたのは……」


「私の勝手な解釈だけど、生霊とかだったんじゃないかしら」


「まじか……」


「もう、大丈夫」



 そういって、望は小さな胸を張った。


 その姿を見て、何故だか涙が溢れてきた。



「あれ……」



 目が熱くなったわけでもない、ただ急に溢れてきた。



「なんで、泣いてる」



 おどおどしている望をみて、微笑む。



「良かった……」



 本当に安心した。もう二度と会えないと思っていたから。



「私も、良かった」


「うん、うん」


「でも、あの神社で聞いた、話は良くない」


「うん?」



 感動の相槌が止まる。


 あの時の話?



「屋上で、助けられた話。私しらない」


「……中学時代の?」


「そう」


「文夜……私、同じ中学なのにし、しらないわよ?」


「何で指パキパキやってんの!」



 桜と望に詰め寄られる。



「かな! 助けてくれ!」



 助けを求めるがかなは、微妙な苦笑いを浮かべる。



「私は助けられる立場じゃないかなと……」


「裏切りだっ!」



 桜に頭をつかまれたとき、かなが小さく。


(約束は叶えたので、許してください)



 と、言った。


 ……ように見えた。



 望が頬を膨らませる。



「文夜!」



 これは、望と文芸部の話。


 ただ俺が認められ、望の存在を記すだけの物語。


 本当にそれだけの話だ。



これで、最終回です。

第一部と書きましたが、多分終わりです。


続きを書きたいなと思ったら適当に書くかもしれないです。

これMFで一時落ちした作品なんですよね....


ダメなところとか改善とかあればうれしいです。

ここまで見てくださってありがとうございました。

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