表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

後には引けない


 夏休み初日。


 パソコンの前で、頭を捻ったが一向に筆が進まなかった。



「まだ初日だ……」


 二日目。

 先輩方のライトノベルを読み研究を行ったが、成果は出ず。



 一向に筆が進まない。

 二週間後。



 以下略。右と同じ。



「うわあああぁああああああ!」



 ベットの上で暴れだした。

 全く進んでいない。結局趣味で本を読んで、パソコンの前に座っただけじゃないか。


 もう半分も経っている! なーにが「書くよ小説」だ!



「だ、大丈夫。まだ、時間。ある!」


 望が横に立って応援してくれている。


 が、それで原稿が進むなら、コミケ前の作家は大慌てしないだろう。


 だが、かわいいことに変わりはないので、癒される。



「だけど、もう半分過ぎてるんだぜ……」


「……むぅ」



 望は顎に、手を添えて探偵の様に思案。


 そして、



「そうだ!」



 と、目を輝かせて自身の服に手をかける。



「体を見せて、興味を、持ってもらう!」


「ダメだってぇええええ!」



 それは、前に言ったじゃないかと止めに入る。


 確かに俺の書く話は、ラブコメディが多い。



 それら全ては妄想によって出来たもので、興味を持ては復活というのもあながち間違いでは、ないのかもしれない。



 だけど、出生もわからない女の子をひん剥く気はない。



「ダメ?」


「だめ」



 最速で返答をする。



「むぅ……だめ、なのか」 



 少し悔しそうに呟く、望さん。


 ひょっとして、変態なのか……。



「なら、外にでて、いんすぴれーしょんを刺激する!」



 くるっ、とこっちを見据え、尻を蹴り飛ばす望。


 部屋の外に飛ばされる、俺。



 え? と思っている間に扉は閉まる。



「ちょっと! 望さーん!」



 扉を連打するが、一向に返事がない。


 なんで俺は部屋を追い出されてる? 俺の部屋なのに。



「あれ」



 鍵が閉まってる、徹底抗戦の構えだ。


 望のご機嫌をどう取ろうかと悩んでいると、隣から心配そうな声が聞こえた。



 本当に時間がないんだぞ……。



「あ、文くん? 大丈夫?」



 あ、やべ。うるさかったのか。



「どうしたの?」


「……なんでもない」



 目を逸らし、背を向ける。


 言い訳のしようがない、ここは無言を貫く。



「さっきさ……」



 姉ちゃんは、申し訳なさそうに声をかけてくる。



「なに」



 そんな姿に俺は、無愛想に返事をしてしまう。


 ふと視線が合った。



「その、なんでもない」 



 姉ちゃんは、すぐに視線をずらし引き下がる。


 いつもそうだ。



 今更のこの話を言及するつもりはない。



「そっか」



 特に家に居たくなかったので、外に出ることにした。




 プロットの一つでも考えてなきゃいけないのに、何やってんだ俺。


 近所の駄菓子屋で、備え付けのベンチに腰を掛けて、アイスを一つ食べる。



 じりじりと、焼き付ける太陽に俺は目を細める。


 汗がシャツに染みて、気持ちが悪い。



「あら、文夜じゃない」



 横を見ると、もじもじした桜がいた。


 ん? 幻覚でも見えてるのか?



「なんで、無視するのよ」



 ほっぺたをつねられ、痛みが走る。


 夢じゃないっ! 本物か!



「いたいでふ! いたいでふ!」


「ふん!」



 すぐ手の出るところは変わっていない。


 なぜか、夏休みだというのに、制服を着ていた。



 口が変形してないか確認をして、桜に抗議する。



「どうしたんだよ! 夏休みまで生徒会活動か?」



 ここから学校までは、近い。


 この駄菓子屋は生徒が結構の数入り浸っており、桜もその一人なのかもしれない。



「いや? 違うわよ?」


「ならここのアイスが目当てか?」


「違うわよ?」


「ならなんだ? それ以外でここに来る理由なんてあるか?」


「……へ? あ、あぁ、そ、そうよ生徒会活動よ!」



 太陽に負けないくらい顔を真っ赤にして、桜は否定する。


 そんなに否定したい理由なんてあるのだろうか。



 そうよ制服にした意味がないじゃない、などと呟いている。意味が分からない。



「まぁ、ここに居たかったんだな。なんとなくわかる」



 俺も家を追い出された身だ。



「そ……そうよ。別に会えるかもとか思って、居たわけじゃないわよ」


「お、おう」



 こいつも面白くない冗談を言う時があるんだな。ちょっと意外だ。



「ま、まぁ、それはともかくとして、アンタ小説書くんだって?」


「……まぁそうだな」



 というか、書いている。一文字も進んではいないが。


 誰から聞いたんだろうな……ちょっと気になる。



「かなちゃんからよ。凄く嬉しそうに言ってたわ」


「……心を読むな」



 連絡先交換してたんだな。知らなかった。


 新事実に驚きながら、アイスを齧る。



「……できるの?」



 無言。


 出来るような計画を何度も考えるが、全て先が見えない。



 現状半分まで過ぎていて、計算も明確になってくる。


 そうだとしても。



「やるしかないだろ」



最終回まで、一時間毎に投稿していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ