表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

13 聖地巡礼

カーテンの隙間から朝日が漏れていた。

 目覚まし時計がけたたましく鳴っている。


 俺の家は顔を基本顔を合わせず、別々に行動している。

 起こしにきたり、朝食を一緒に食べたりはない。


 だから、ここで二度寝などしてしまえば、遅刻は確定。


 なんなら、家に告げ口でもされて姉さんが起こしにくるかもしれない。



 それは……嬉しいが、いやだ。


 そんな思いとは裏腹に、ピタッと時計は仕事を終えたとばかりに止まる。



 押さなければ止まらないはずなんだがな。故障か?



「文夜は、まだ。寝てもいい」



 望の仕業だ。


 いや、ダメだ……。起きないと。ただでさえ事件を起こしたのに……。



「文夜には、休みがいる」



 もぞもぞと、何かがうごめく。

 俺の布団の中に、何かが入ってきた。



 なんとなく……暖かい?



「頑張ったから、寝てもいい。お疲れ様」



 その温かみが丁度良くて、ほどよく寝やすい。


 人の気配があると、寝やすいんだ。初めて知った……な。



 そこで、意識は途絶えた。



「はっ!」



 瞼が開いたのは太陽が山に隠れ始める夕方だった。



「……やらかした」 




 


「いやですね、先輩? 中庭であんな事件を起こした後に、不登校ですか?」


「……わるい」


「ごめんなさい」



 望と俺は、かなにこっぴどく叱られた。


 夕方に目が覚めた俺は、急いで仕度をして学校に向かったのだ。



 望には、今後そんな事が無いように言い聞かせておいた。


 もう、こんな事がなければいいけど。



「……まぁ部活に来た事は評価しますよ」


「いやいや、授業では評価されない項目ですから」


「流石……文夜さま」


「死んどきます?」



 誠に申し訳ない。


 かなも桜に似て、殺意を出すのが上手くなってる。



 立派なアサシンになれるだろうな。



「まぁ、いいじゃない。一応学校には来たんだから」



 かなの隣で、コーヒーを飲んでいるのは桜。


 俺が今日夕方から来たのは、これが理由でもあった。



「悪い。今日の放課後空けてもらってたのに」


「まぁ、いいわ。別に」


「完璧症の桜先輩が、そんな風に言うのは珍しいですね」



 俺も思った。てっきり、ちゃんと学校に来いとか言うかと思ったのに。



「いやー。見限るなら完全に見限ろうと思ってね」


「それなら先輩らしいですね」



 ひどすぎる。


 二人してそれはないだろう。



「それはとにかく。今回は、桜の依頼の解決だろ?」


「そうよ。全く、黒の県知事は」



 名前間違ってますよ。それだと、不正に金を使ってる人みたいになってます。



「文夜、この女消す」



 最近、過保護な望が殺意をむき出しにして生徒会の役員様に迫る。



「えいやあぁ!」



 へなちょこ猫パンチが桜に、炸裂……しなかった。



「危ないわよ!」



 望の拳を引き寄せ、その力で合気道のように流す桜。


 瞬き一つしている間に、望の小さな体は地に伏せていた。



 望は、目を大きく見開いて驚いている。



「な……」



 軽やかな一連の動きに驚き……じゃなくて、望の攻撃を避けたことに戦慄。



「武道も完璧なのよ。私は」



 そこじゃない。



「見えるのか……?」


「これがアンタの言ってる、望ちゃん?」


「ふむー! ふぎー!」



 下で伏せられている望が怒りを露にする。


 そうです、それが望です。



「なんか、悪霊かと思って攻撃しちゃった。てへ」


「桜先輩も見えるんですか?」



 桜のボケを華麗にスルーしていく、かな。



「ハッキリはみえないけど、殺気みたいなのを感じてね」



 普通にそんな事を言ってのける桜に、驚きを通り越して戦慄。



「桜には、どう見えてるんだ?」


「どうって……白の固まりかしらね。それ以上も以下でもないわよ」



 手や足、ましてや、顔の認識などはできていないわけか。


 個人差があるのか? だが、かなは一切見ることが出来ないわけだし。



「お二人は、確認できてるんですよね」



 かなは、難しげな表情で俯く。


 二人の共通点は……などと呟いており、真剣な様子。



「わかりました……憶測なんですが」



 答えがでたのであろうかなは、目元に手を当てて憶測を語る。



「先輩方はどちらも、中二病ということです!」



 バンッとつきそうな効果音に俺と桜は顔を見合わせ、



「「……確かに」」



 と呟いた。



「それで、私思ったことがあるんです」



 満面の笑みで、かなはとんでもないことを言った。



「先輩達の黒歴史の、聖地を見に行くのはどうでしょうか!」




 







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ