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飯マズな超未来で俺はルネサンスに励む  作者: バトウスキー
誕生から3歳まで(仮)
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第6話

宇宙ステーションに到着すると、そこは出発ロビーの様な建物だった。

中は大勢の様々な人々が忙しなく行きかい、正に駅を彷彿とさせる場所となっている。

俺たちは中に入ると入口に併設されたサービスセンターに向かった。

すると、そこには良く空港等にみられる荷物や人を送迎するカートのインフラような物が待っていた。

空港のカートと違うのはまず、車輪ではなく宙に浮いていることと、運転手がいない自動運転であること位だろうか?


「これに乗るの?」


カートに乗り込みカートが動きだした。

そして、空港と同じように人が歩いている中を走って行くのかと思いきや、なんと天井が開き、カートはそのまま宙に上がりその中へ入っていった。

歩行者用の天井にはなんとカート専用の道があり、そこを凄い数のカートが行きかっているではないか。


「凄い数だね。」


「そうだね、こう言った乗り物を使用しないと、宇宙ステーションは移動できないんだよ。でも、これでも宇宙ステーションとしての規模は小さめなほうなんだよ?」


「ええ!?」


割と素で驚いた。

今日は軌道エレベーターや宇宙ステーションの外観と前世では見たことが無いほど大きなものをみていたため、もうお腹いっぱいといった感じだったのに、これが小さめだと言われたのだ。それは驚くだろう。


「この惑星では、宇宙ステーションと軌道エレベーターが一緒になっているけど、例えば王都の宇宙ステーションなんかは出入りする宇宙船の数が多すぎるから、地上と宇宙の往復のための宇宙ステーション、宇宙船の出入り専用の巨大宇宙ステーションが別にあって、そこを往復専用の宇宙船で行き来していたりするんだよ」


何というか規模が大きすぎて何とも言えない。

宇宙船が多すぎてこの規模では全く対応出来ないというのだ。それは最早想像の埒外だ。

いつか王都に行ったとき是非実物を見てみたいと思った。


そんな事を話している内にもカートはステーション内を進んでいく、時速60キロ程で30分程走っただろうか。

カートは遂に、動きを止め、この道に入った時と同じように、床が開き、下に下がっていった。

そして、カートが到着し、前をみると、そこは波止場のような空間となっており、そこには巨大な白く綺麗な宇宙船が泊まっていた。

その宇宙船は300mはあろうかという大きさであり、外壁は汚れ一つなく白一色に染められており、フォルムは丸みを帯びながらも、どこか鋭さを見せるとても優美な外観をしている。


あまりのカッコよさに俺は暫く言葉にならなかった。


「どうだい?かっこいいだろ?」


唖然としていると、父が俺に声を掛けてくる。


「これが、我がクーパー家所有の新造艦『星間船エンフィリオン』。アルが生まれた記念に新造した出来立てほやほやの新品だよ!」


まじで!?これ当家所有物なの!?しかも俺の誕生記念に作ったとか……規模が違いすぎて最早意味が分からない。

俺がそう感じるのも無理はなかった。

この世界の宇宙船とは詰まる所飛行機であり、それを個人所有するというのはやはりそれ相応の財力が必要となってくる。

あらためて、我が家の財力に恐れおののいていると更に父が追い打ちをかけてくる。


「今後、お前が宇宙に出るときは主にこの宇宙船を使う事になるから覚えておくんだよ?」


ん?それはどういうことだろうか?……俺だけ?では父母はどうするんだ?

俺はまさかと思いつつ、恐る恐る父に聞いてみる。


「父さんと母さんが宇宙に出るときはどうするの?」


「父さんと母さんにはそれぞれ所有の宇宙船があるからそれを使うけど?」


……わ~お当家所有の宇宙船かと思ったら、俺の個人使用だった件。

まじで!?何度も言うけどまじで!?

宇宙船よ!?プライベートジェットよ!?それを1歳児が個人所有ってまじかよ!!!!!!

いや、嬉しいよ!メッチャ嬉しいよ!こんなカッコいい宇宙船が俺の物なんだから凄い嬉しいけれども!

余りの事態に俺は混乱の頂点にあった。


後に聞いた話なのだが貴族は安全上の問題と見栄のため、あまり客船に乗るのは推奨されないらしい。

また、貴族は惑星間の仕事が多いため移動には必須であり、個人、個人で宇宙船を所有することが多かった。

更にそれが景気刺激にもなるので、多くの貴族や富裕層が個人所有の宇宙船を所持していた。

なので、1歳児のおれが誕生祝いで宇宙船を送られても別に殊更特殊な事ではなかったのだ。


だが、そんな事情など知る由もない俺はとんでもない贈物に右往左往していた。

そして、そんな俺の様子を可笑しそうに笑っている両親に促され、俺はエンフィリオンの中に入る。


そこには、数人の男性が俺たちを待ち構えるように整列していた。


「ようこそ、エンフィリオン号へ私がエンフィリオン号船長のバラン・ライオットです。以後お見知りおきを」


真ん中の中年と思しき男性が挨拶をしてくる。


「出迎えご苦労様です。私がアンドリュー・クーパー。隣が妻のナタリー。そして、この子がこの船のオーナーとなるアルバートです。今回はお世話になります。さあ、アルバート挨拶しなさい」


そう促され、俺も挨拶する。


「アルバート・クーパーです。今回が初めての宇宙です。ご迷惑を掛けるかもしれませんがよろしくお願いします。」


すると、バラン船長は少し驚いたように


「これはご丁寧にありがとうございます。ご子息は1歳と聞いていましたが、随分聡明なようですな」


しまった、最近家族としか話してないから、一般的な1歳児の様子が分からない。


「はっはっはそうでしょう、うちのアルは凄いですから!」


父はそんな事関係ないとばかりに俺を褒めちぎる。


この親バカめ。


「いや、この船のオーナーの方が聡明な様で助かりました。1歳児と聞いた時にはどうなるかと思いましたが、しっかりと運用していただけそうで安心しました。これより、このバラン含め乗務員5名アルバート様の手足となり働く所存ですのでよろしくお願いします」


「こ、こちらこそよろしくお願いします」


そうか、これからこの船を使うときはずっとバラン船長が一緒なのか。では最優先で仲良くならないといけないな。


「では、まずはこの船をご案内いたしましょう。」


そして、挨拶は終わりこの船の紹介がはじまった。


「この船はテンダロン級星間宇宙客船のプレミアムグレードモデルです。最低必要乗員数3名であり、動力には対消滅機関を2基搭載しています。シールドは主力艦の主砲でも3発までは耐えられる民生モデルとしては最高峰の物を搭載しており、武装は、1テラワット級レーザーが2基に、パルスミサイルが4機となっておりこちらも民生モデルとしては最高です。」


と船内を歩きながらバランが説明してくれるのだが、やばない?

対消滅ってあれやろ?物質と反物質の衝突で起こるあれやろ?そんなもん動力源なわけ?

しかも、たかがレーザーに1テラワットって原子力発電の1年間の発電量が確か33テラワットやからとんでもないぞ。それを一回撃つだけで消費するわけやろ?

しかもミサイルて、民間宇宙船に必要な武装ちゃうやろ!?

あと、必要乗員数が3名ってのも凄いな、そんな少人数で運用可能なのか。

因みにイージス艦は全長161mで乗員300名だぞ。その約2倍のでかさで必要乗員数3名ってやっぱ未来は化け物やな。


そんな俺の驚きを他所に説明は続く。


「内装に関してはオーナーであるアルバート様用のプライベートスペースが凡そ3割、我々クルーのスペースが1割、お客様用のスペースが3割、その他機関や動力源、武装類、ブリッジのスペースが3割となっております。今回の航海ではご両親のお二方には客室の方をご利用ください」


なんと、オレ一人のために全長300mの宇宙船の約3割ものスペースが割り当てられているようだ。


そして、俺のプライベートスペースがある区画までやってきた。

「こちらが、アルバート様のプライベート空間となります。中のご案内もいたしましょうか?」


「いや、プライベートスペースだから自分で探検してみたい」


「わかりました。出港の時刻に成りましたら呼びに参ります。それまで、ご自由に探検なさってください。私はアンドリュー様と手続き等が御座いますのでここで失礼させて頂きます」


「じゃアル、探検楽しんでね。ナタリー、アルを頼むよ」


そういうと、バランは父と行ってしまった。


「じゃあアルはママと一緒に探検しましょうか」


そうして、プライベート空間へと繰り出した。


プライベート空間は正に驚愕の連続だった。

まず、プライベート空間に配流と、優雅なリビングが俺たちを出迎えた。

内装は白を基調としつつも、どこか淡い肌色がかった色合いをしており、部屋のライトとも合わさってとてもシックで豪華ながら落ち着いた作りになっていた。

ソファの前には巨大なディスプレイが設置されており、そのディスプレイには艦内の状況がひと目でわかるように表示されている。


「うわ、フワフワだこのソファ」


「この宇宙船は作るのに凄いお金が掛かったってお父さんが言っていたから、多分そのソファも最高の物だとおもうわよ。」


やっぱ金掛かってるよなぁこの船。

怖くて、乗り回せないよ。


続いて寝室だが、広さはおよそ50平米もある巨大な作りになっており、ベッドのサイズは当然のごとくキングサイズベッドであり、隣の部屋はウォークインクローゼットとなっており、こちらも絶対にこんなに服は要らないという位大きな作りになっていた。


「……僕が寝るのにこんな大きなベッド必要ないと思うんだけど」


「あら、体が大きくなった時には必要になるわよ」


俺の体はどんだけ大きくなると思っているのだろうか。

それとも、大きくなったら一人では使わないとか、そんなアダルトな事を1歳児の息子に言っているのだろうか。


モヤモヤするが次。

3つ目は娯楽空間だ。

そこは最新鋭のVRゲーム搭載のVRマシンに、トレーニングルーム。フル音響の個人用シアタールームに果てはプールまでも完備された夢のような施設群だった。


「エ?ナニコレスゴイ」


思わずカタコトになってしまうような正に男の夢のような空間に驚愕して固まる。


「凄いでしょう。これだけの施設があればホームシックや閉所恐怖症にならなくて済むかと思って設計させたのよ」


「閉所恐怖症にホームシック?どういう事?」


「宇宙船の旅って最低でも数日、長いと数か月もの長丁場になるって知ってた?だから、普段地上で暮らしている人間だと閉所恐怖症やホームシックに成りやすいのよ。それに特に子供はその傾向が顕著なの。だからこの船は貴方が過ごしやすいように、自分の家だと思えるように設計されてるのよ」


なんと、あの過剰とも思える施設群にはそのような意図があったとは。

確かに星系間の仕事が多い貴族で宇宙船が怖くなってしまうのは致命的だ。

しかも、碌な医療設備もない宇宙では治療も出来ない。

どうやら、その予防のために、初めて与える宇宙船には娯楽をある程度過剰に搭載するのは、ある種伝統のようなモノらしい。


「まあ、使っているうちに要らない施設等も出てくるでしょうし、そうしたら別の施設と入れ替えればいいわ」


ん?施設を入れ替える?


「えーと?この施設って入れ替えられるの?」


「そうよ、この宇宙船は全てがモジュール構造になっているの。だから必要のない施設や欲しい施設があったら入れ替えが出来るのよ。だから、宇宙船を長く使っていればいるほどそれぞれの個性が出た宇宙船になるわね」


/(^o^)\ナンテコッタイ


そんな顔をしていたと思う。

だって、宇宙船が手に入って狂喜してたのに、それどころか自分の思い通りにチューンナップ出来るだと!?

そんなん燃えるだろうが!!


「因みに母さんはどんな宇宙船に乗ってるの?」


「うーんとね、私の宇宙船には植物園があるわ」


は?しょくぶつえん?宇宙船に?


「えと、なんで?」


「だってお花って綺麗じゃない。それに緑の植物があった方が心が和むわ」


そういう問題か!?つかそんなモジュールまであんの!?


「そんな珍しいモジュールまであるんだ……」


「いえ?これは市販はされてないモジュールで、完全オーダーメイドよ」


……オーダーメイド(白目)


「でも、今まで似たような植物園は500件程はあったって聞いたわ。業者も正規販売するか悩んでるみたいね」


まじか。この時代の人たちの感覚が未だに掴めないぞ。いや割と本気で。


「因みに父さんはどんなのに乗ってるの?」


「お父さんの船は余りチューンナップはしてないみたいね、仕事上で使う事が多いためか、仕事用の設備が多めな位かしら」


まじかー、親父はあんまりそういうのには熱くならないタイプか。


「この船にも執務室等は設置されているわ。子供のうちは使わないでしょうけど、もう少し大きくなったら必須になるから撤去しちゃだめよ?」


そう母は茶目っ気たっぷりに言ってくる。


そうこうしている内にプライベート空間を回りきる。

そして覚悟はしていたものの、やはり気になったのはキッチンやダイニング類の欠如だった。

リビングに例の経口栄養食があり所々に給水口はあるものの、それ以上の料理に関するものは何もなかった。


暫くすると、バランが父を伴ってプライベートエリアに戻ってきた。


「アルどうだった?この船は凄いだろう?」


「正直凄すぎていくら掛かってるのか怖くて聞けないよ。もし聞いたら多分値段でビビッてこの船使えなくなりそう」


「ハハハそうか、そうか。それなら頑張って用意した甲斐があった。因みに、この船は流石に我クーパー家でもおいそれとは用意出来ない額が必要だったとだけ言っておくよ。大事にのるんだぞ?」


やっぱ凄い金かかってんじゃん!?……でも見た感じ凄い過ごしやすそうな船ではあるよな。むしろ此処に住みたいくらいには。


「さて、そろそろ出航の時間だ。一緒にブリッジまで行こうか」


そう父に言われ共にブリッジに向かう。

そこは、全面にスクリーンが張り巡らされた空間であり、そのスクリーンには今の俺では全く分からないグラフや数値、図が表示され目まぐるしく動いていた。


「ここが船の頭脳ですか?」


「ええ、ここが船の頭脳であるブリッジです。ここから全ての指示を出します。」


ブリッジ内にはいくつかの席が存在しており、そこには先ほど挨拶した男性たちが座っており、作業をしていた。


「さて、そろそろ出航時間となりますが、アルバート様には一つの仕事をして頂きたきたいと思っております」


いきなり何を言うんだ?


「仕事……ですか?」


「はい、この船は今日が処女航海です。ですのでその号令をオーナーであるアルバート様にして頂きたいのです」


成程進水式みたいなモノだろうか。うーむ正直演説は面倒臭いがここで断ったら印象悪いしな。


「わかりました。喜んでやらせて頂きます」


「そうですか、では発進準備は整っております。早速ですがお願いします」


え!?もう!?ちょっ喋る内容とか全く考える時間とか無かったんだけど……ええい!ママよ!!





「諸君、私は嬉しい。今日ここの舞台に立てることが。」


俺は目を瞑って話し出した。


「諸君、私は嬉しい。今日この場で諸君らに出会えた事が。」


目を開け前を見つめる。


「諸君、私は嬉しい。今日という素晴らしい日にこの素晴らしい船の門出を祝うことが出来て。」


そして、周りを見渡しながら演説を続ける。


「今日よりこの船は大いなる大海原へと漕ぎ出す事となる。それは容易い事ではない。古来より、人類は試行錯誤を重ねこの大いなる宇宙という大海原へと漕ぎ出した。人類がこの広大なる舞台へと飛び出し幾星霜。未だにこの大海原は安全とは言い難い。この船にもいつかは危機が訪れるやもしれない。」


一度話を止め大きく息を吸う。


「しかし!私は諸君を信じている!諸君らとこの船『星間船エンフィリオン号』ならば必ずやその荒波にも打ち勝つことが出来ると!!」


そして目一杯の声で


「星間船エンフィリオン出航!!」


その声が終わるのと同時にバランが俺に向かって敬礼し


「ハッ!星間船エンフィリオン出航!」


という言葉と共にどこからか聞いたことがない機械音が鳴り、振動が起こった。

そうして、星間船エンフィリオンは出航した。






こんな感じで良かっただろうか。出航が完了したことを見届け、両親の方に振り向くと、そこには口と腹を抑えてうずくまる父と目をキラキラさせながら満面の笑みでこちらを見ている母の姿だった。


……あ、これやらかしたわ


「え?出航の号令って唯『出航』って言えば良かったんですか」


あまりの両親の様子に隣いたバランさんに聞いたところそんな答えが返ってくる。

そして、ようやく爆笑が落ち着いてきた父が口を開いた


「そ、そうだよ。まだ子供にそんな演説なんて求める訳ないじゃないか。な、なのにアルったら……ぷっ。ま、まるで軍人みたいな演説始めるんだもん。っぷぷ、ああダメだ思い出したらまた」


また思い出したのかまた噴き出す父。


「でもかっこよかったわよ。アル」


そうして母は徐にデバイスを操作すると


『諸君、私は嬉しい。今日ここの舞台に立てることが。』


先ほどの俺の姿を映し出した。


「わ、わああああ。やめてよ!へんだったなら止めてよ!ってかこんなの撮らないでよ!」


「何言ってるの!立派なアルの雄姿じゃない!これは永久保存よ」


この俺の痴態が残るのか……俺は先ほどまでの興奮は何処へやら完全にヤラかした事への恥ずかしさで死にそうになっていた。





そして、そこから二日間おれは恥ずかしさのあまり寝室に引きこもった。






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