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飯マズな超未来で俺はルネサンスに励む  作者: バトウスキー
誕生から3歳まで(仮)
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第4話

俺は今月ようやく3歳になっていた。

そして、現在ある目的のためにとある試験を受けようとしている。

その試験とは『成人認定試験』と呼ばれる試験であった。


『成人認定試験』とはアルビオン王国で行われている試験であり、その名の通り、成人として認めるかどうかのテストである。

受験資格は特になく0歳児でも受けることが出来、これに受かることでアルビオン王国では成人と認められ、正式な身分証も配布される。

別に大した難易度ではなく15歳程まで普通に成長し勉強さえすれば難なく合格出来るものだ。

しかし、その難易度に対してこの試験の重要性は異様なほどに高い。

まず、この試験に受かっていないと成人として認められないのは当然のこと、銀行口座の開設から始まり、喫煙、海外渡航、はては就職まで出来ないのだ。

つまり、これに受からないとアルビオン王国民として正式に認められず、まともな生活すら送れないのだ。

なので、大抵は中等教育が終了する頃になると皆取ってしまう資格である。

しかし、この資格を取らなくても死なないというのがアルビオン王国の良いところでもあり、悪いところでもある。

ベーシックインカム制度があるため、働かなくても生きて行けてしまう。故に全人口のおよそ0.1%もの人が20歳を超えても資格を取っていないのだ。22兆人もの人口がいるアルビオン王国からすると例え0.1%だとしても人数で見ると膨大な数になってしまう。これが今のアルビオン王国が抱える悩みのひとつでもあった。


さて、われらが主人公アルバートが何故この試験を3歳にも関わらず受けようとしているかと言うと、端的に言えば飯の為であった。


時はアルバートが初めて家に来た時に遡る。


「「ようこそクーパー家へ」」


そう言って両親に歓迎され家に入った後、まずはご飯を食べるという話になったのだ。


「そう言えば、アルはまだ今日のご飯をまだ食べていないのよね?」


「うん、まだたべちぇにゃいよ(うん、まだ食べてないよ)」


まだまだ舌足らずな喋りで俺は答えた。


「なら一緒に食べようか。アルの席はここだぞ覚えておくんだぞ」


そう言って父が新品の子供用の椅子におれをお座りさせる。


正直、まだこの時はこの世界の料理に期待していた。病院で食べた物が病院食と思しき固形物つだけだっただけに、未来ではどんな美味しいものが食べられるのだろうと、心を躍らせてワクワクしていたのだ。


しかし、現実は無常だった。食卓に並んだのは昨日も食べた無味無臭の固形物。


………………っえ!?またこれ!?


慌てて両親の方を見ると両親も何の疑問も持たず同じ固形物を口に入れているではないか。


「ほ、ほきゃにはにゃいの(ほ、他にはないの)?」


俺は一縷の望みをかけて両親に聞いた。


「他って何がだ?」


「もっちょおいしいもにょ(もっと美味しい物)」


「美味しいってアルは難しい言葉をしっているなぁ」


俺は愕然とした。

美味しいが難しい言葉ってなんだよ!?

しかし、そんな驚愕をよそに父は続ける。


「今開発しているの新しい栄養食なんだが少し味を変えてみようと思ってね、だから少し味がよくなる。美味しいかもしれないぞ」


「まあ、あなたったらそんな難しいこと言ってもアルにはまだ分かりませんよ」


「そうだな、アルが美味しいだなんて専門用語を言うもんだから遂な」


と穏やかな顔で夫婦で談笑している。

その横で俺は恐れ慄いていた。

美味しいが専門用語!?何を言ってんだ!?

そして、とにかく何かこの時代料理が見たい。俺はそう思い両親に問うた。


「にぇ、にぇえ。にゃにかりょうりはにゃいの(ね、ねえ何か料理はないの)?」


だが、返事は俺の想定を遥かに超えるものだった。


「え?何だったって?」


「だ、だゃきゃら。りょうりはにゃいの(だ、だから料理は無いの)?」


「りょうり?なんだそれは。ナタリー知っているか?」


「いいえ?聞いたことないわ」


な、何の冗談だ料理だぞ!?料理を知らないってどういうことだ!?


「ちょっと調べてみるわね。………あった、これのことかしら。えーと『料理』とは旧世紀において人類が栄養を接種するために行っていた行動。自然に在ったものを人体に吸収できるように加工すること。現在と違い、栄養バランスが適切でないことも多く、多くの病気の引き金となった。ですって。怖いわねえ。でもアルは何でこんな事知って居るのかしら」


「そうだな。こんなこと古代学者じゃないと知らないような事だぞ?」


そんな風に両親は議論していたが、俺の脳内はそれどころではなかった。

料理が過去の遺物?病気の引き金?なにを言っているんだ?

理解できない。理解したくない!!


しかし、そんな俺の心を置き去りにして現実は進んでいく。


「まあ、アルの不思議は後でゆっくり聞きましょ?さあアル、まずはご飯を食べちゃいなさい」


そこから先は余りのショックで記憶が曖昧になっている。


そうして、それから食事を無心で食べるようになった俺だったが、1歳になるころに転機が訪れる。


俺は度々料理の事を親に聞いていたのだが余りのしつこさに両親も嫌気がさしたのか俺に腕輪型のデバイスを買ってくれたのだ。

両親曰くこのデバイスは量子ネットワークと言われるものに繋がっているらしく銀河中のことが調べられるのだとか。

ともかく、このデバイスを手に入れたことで俺は料理や古代地球や古代文化の事を調べまくった。

その過程で家が貴族家であることや4大国のこと銀河連合のこと、地球の事など今を生きる上での必要となる知識を手に入れた。


そして、俺が1歳になって更に2か月程経った頃、ここアルビオン王国ドローテア地方の主都惑星の大学に著名な古代学の教授が講演で来るという情報を得られたのだった。

この情報を得た俺は、早速両親にこの講演を見に行きたいと頼み込んだ。


今思えば変な子供だったと思う。何かおもちゃで遊ぶでもなく、どこかに遊びに行くでもなく、日がな一日デバイスで検索し続け、大学教授の講演を見に行きたいとお願いする1歳児。

俺だったら絶対引いてたと思う。

しかし、両親は余りお願いをする子供でもなかったためか喜んで『旅行だ』と言って俺を連れて行ってくれた。


そうして、訪れた主都惑星ドローテアにおいて俺は1つの決意を固めることとなる。



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