第3話
俺がこの時代に生まれて早3年が経った。
まず、この3年間の間に分かった事を話そうと思う。
まず、今の年号だが宇宙暦3952年、王国歴1798年らしい。
お気づきかと思うが今この国では二つの暦を使っている。
何故2つの暦があるかと言う事を説明するには少々歴史を語らなくてはならない。
西暦3000年頃人類は既に宇宙に進出していて、進出した惑星の植民地同盟と地球を中心とした地球連邦が例の如く戦争になったらしい。
戦争の理由としてはやはり経済の格差だったようだ。
そして、勝った側の植民地同盟により、銀河連合が樹立され、それを期に西暦から宇宙暦に変わった。
因みにこの戦争の事を独立戦争と呼ぶらしい。
つまり、俺が生きていた西暦2000年代前半から凡そ5000年もの未来に俺は生まれたということになる。
そして銀河連合が成立し、そこから2000年程惑星ごとに投票権を持った連合体制によって、人類は銀河で繁栄していたようだ。
しかし、栄枯盛衰。
繁栄を誇った銀河連合も銀河中への人類の進出によって個々の惑星への支配力が低下し、幾つかの惑星での反乱を切っ掛けに連合体制は形骸化し戦国時代へと突入、300年間の戦乱期を迎えた。
そして、最終的にアルビオン連邦王国、アース自治共和国連邦、サマルタニア共和国、ガンダルフ帝国の4大国家とその他の中小国家に別れることにより、大国間での戦争は下火になり、大国による勢力拡大の時期を迎えることとなる。
では簡単にだがそれぞれの国家を紹介しようと思う。
まず、アース自治共和国連邦だがこれはかつての地球を中心とした連邦体制の国家だ。
しかし、連邦の名を関しているが実質的には地球がその他の惑星を植民地支配しているような状況であり、体制としては惑星間の経済格差という問題を抱えている。
そして、人類の発祥の地であり、様々な惑星に植民を行った経験から支配力増強のために未開惑星に次々と植民を行っている。
次にサマルタニア共和国だが、これは企業連合の様な体制の国家であり、資本主義国家である。国民間の貧富の格差という問題はあるものの、完全なる実力主義の国であり実力さえあれば、どんどん富を得ることが可能となっている。そして、その有り余る富を使い経済支配により、惑星を次々と影響下に置いている。
次のガンダルフ帝国はその名の通り帝国主義であり、未だに帝国外惑星への侵略活動を行っており、4大国家の中では最も注意が必要な国家である。
また、完全なる身分社会であり、帝国貴族、帝国本土の国民と支配地域の国民とで身分差により格差が生まれている。体制状どうしても支配地が不安定になりがちであり、侵略と同時に内乱とも常に戦っている国である。
そして、最後が俺が生まれたアルビオン連邦王国であり、その名の通りアルビオン王家が治める王国体制の国家である。
少なくともこの国は治安等は良いので当たりだったと思う。
そして、完全に有名無実化した銀河連合だが、一応未だに全ての国は建前上所属はしており、各国同士の外交の場として未だに存在している。
故に国同士でのやり取りの場合は宇宙暦を使い、国内ではそれぞれの国家の暦――アルビオン王国では王国歴――を使うという、ダブルスタンダードになっているのだ。
さて、宇宙全体はこんな感じであるが、次は俺が生まれたアルビオン連邦王国と我が家族について語ろうと思う。
まず、アルビオン連邦王国だが王国全体の国民はおよそ22兆7000億人であり、支配下の居住可能惑星、衛星合わせて凡そ5000個である。資源惑星やそれに付随する居住コロニー等を含めるとその数千倍もの天体を影響下に置いている。
体制としては王政であり、王家の下に複数の貴族家が存在している。
階級は男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵である。
それぞれの階級を語るにはまず、アルビオン王国の体制を語らなくてはならない。
まず、5000もの居住可能惑星からなる王国は面積を考えると端から端までがとんでもない距離になってしまう。
故に、中央集権体制では統治に対して即応性がなくなってしまう。
そこで王国では首都惑星や地方の中心惑星を中心にいくつかの地方を形成し、その地方長官が公爵。地方首都惑星を侯爵、その他の惑星を伯爵が統治するという体制を敷いている。
しかし、惑星を統治と言っても、昔のように貴族による自治ではなく、国家の法律に基づいた支配であり貴族家による暴走の確率は低い。
言ってしまえば官僚・公務員を世襲しているだけである。
とは言っても貴族の特権等は存在しており、貴族家の人間はベーシックインカムの基準額が高かったり、税金が一般国民に比べて若干低かったり等であるが、最も大きな特権は最も儲かるインフラへの自動参入であろう。
高位貴族の下には男爵・子爵が存在しているがその役割は主にその地方内のインフラ整備や提供である。
現在のアルビオン王国は最低限の社会保障を保証しており、最低限のインフラは無償で提供されることとなっている。
故に、男爵・子爵家はその最低限のインフラを提供する半国営企業の経営者一族が伝統的に勤めることとなっている。
そして、何を隠そう我がクーパー家はアルビオン連邦王国ドローテア地方の食料インフラを供給するクーパーフードインダストリーの創業家であり、王国から正式に男爵家を賜る由緒ある家なのだ。
さて、漸く我が家の名前が出てきた所で我が家の家族構成をお伝えしようと思う。
まず、現当主であるシルビオ・クーパー男爵。
我が祖父でありクーパーフードインダストリー現社長である。年齢は92歳であり、地球基準で考えるともう隠居している処か、終活を終わらせていて当然の年齢だが平均寿命が200歳程にまでなったこの時代、まだまだ現役である。
そしてアンドリュー・クーパー、我が父であり、クーパーフードインダストリアルの現専務を務めている。他の兄妹は全員が女性であり、既に他家に嫁いでしまっているため、次期党首確定でウハウハ状態の我が父である。
そして、妻のナタリー・クーパー。我が母上であり、元は伯爵家のお嬢様だったが家へ嫁いできた。
最後にクーパー家嫡孫の俺アルバート・クーパーである。
この4人が現在の我がクーパー一族である。
さて、このクーパー家であるが王国より5個の惑星凡そ150億人分の食料の配給を拝命している。
この食料配布であるが計り知れない利益が生まれる。
150億人とは王国全体で見ると僅か0.068%に過ぎないが、150億人分の食料である。
1つ30gのコンパクトな物であるがそれが1日に150億個、重さにすると4500億トン。
1年360日換算で年間で162兆トンもの食料を生産配布するメガコープである。
一つ一つの利益は配給食糧のため1クレジットにも満たない薄利だがその生産した物全てが配給されるため年間の利益はとんでもない事になる。
故にインフラ企業の貴族家は下手な伯爵家よりも裕福であることが儘あるのである。
そんな華麗なる一族に生まれた俺アルバート・クーパーであるが、生後3歳にして、どうしても許せないことがあった。