第1話
目が覚める。どうやら無事に生まれることが出来たようだ。
体は全く痛くない。
出産の時は絶対痛いと覚悟していたんだが、嬉しい誤算だ。
前を見ると眼前には2つの顔があった1人は男性、もう一人は女性だ。
こちらを見て微笑んでいる。
どうやらこの二人が俺の両親のようだ。
……あれ何か喋ってるけど両親の声が聞こえないぞ?
いや?聞こえないんじゃない?何かに遮られてる?あれこれガラスか?何か俺水の中入ってね!?
おぼ、溺れる!いやー乳児虐待!!人殺しー!!
……全く苦しくない?っていうか呼吸出来てる?
…………………………っは!?まさか、これはスペオペテンプレ技術、体外受精育成ポッド!!
説明しよう!!
体外受精ポッドとはクローン技術の付随技術で有名な、受精した卵子をポッドの中で育成し胎児が乳児になるまで安全な機械の中で育ててくれるという素晴らしい技術なのだ。
素晴らしい、人類はここまでの技術を身に着けたというのか!!
そんなことに感動しながら体感時間で2日後、俺はポッドの中から出された。
そして、現在俺は両親の腕の中にいる。
うーん。まあ、普通より綺麗な顔立ちだな。
これは両親が両方とも整形している訳ではないなら、遺伝子技術の進歩で人類皆美形とみた。
凄いな科学。そしてありがとう先人達。俺はこの世界を謳歌して生きて行きます!!
そんな百面相している俺が可笑しかったのか両親は俺を愛しそうな目で見守りながら、頬っぺたを突いたりしていた。
いや、ほっぺツンツンって子供じゃないんだから
……子供か。紛れもなくこどもだったわ。
空しい、抵抗が出来ないのがこんなにも空しい事だったなんて。
非暴力非服従?
抵抗しないとやられるだけなんだよ(切実)
一頻り俺を可愛がっつたのか両親は俺をベッドに戻した。
何か色々話していたが、まだ言葉が分からないことがもどかしい。
そして、ベッドに俺を戻すと両親は手を振って病室から出ていった。
さて、また1人になった訳で少し周りを観察してみよう。
場所は病院だろう。
ここは子供用の個室のようで、部屋の壁は落ち着いた色合いではあるがカラフルな壁紙で装飾してあり、子供が飽きないように工夫が見られる。
また、完全個室のためか周りに別の赤ちゃんはいない。
うーん。これがこの時代の普通なのだろうか?21世紀だったら超グレードが高い部屋なのだけれど。
やはり、この時代の一般常識が分からないと判断出来んなこりゃあ。
そういえば今周囲を見渡しているが、俺の首は据わっているのだろうか。
何か体も思った以上に動くぞ?
これなら、ハイハイはもちろんのこと掴まり立ちくらいなら出来るのでは?
思ったら則実行!!
……っお!意外と難しい、立つというのは高等技術なのだな。
ん、よいせ、とりゃ、うんとこしょ………うんとこっしょって俺まだ精神年齢20やぞ。
暫くお待ち下さい
テッテッテ〜テレレレテッテレ〜
つかまり立ち成功!
やはり、この体完全な乳幼児ではない。
そういえば聞いたことがある。
人類は二足歩行の対価に子供を未成熟な状態で産むことになったと。
つまり、母親の子宮から出てくる必要性がなくなり、ポッドで必要な状態まで成熟させる事が出来るようになったのか!!
成程、確かに他の四足歩行動物は生まれて30分で歩く事ができるようになるし、人類も成熟すれば勿論歩くことは出来る。
と言うことは今の俺の体は凡そ生後6ヶ月から1歳位の間ということか?
そんな考察をしながらつかまり立ちの練習をしていると、扉から白衣を着た職員らしき人が入ってきた。
「ー%#&(##&**$#&##$@*(^$」
やべー何言ってるか判らない。でも笑顔で喋ってるから大丈夫そうだ。
そして、白衣の医者?看護師?は俺を抱っこすると、部屋を出て別の部屋に俺を連れて行った。
なんだかなー科学が進歩しすぎて何するのか全く予想がつかんぞ。
ん?この部屋は?さっきの子供部屋に比べて大夫システマチックやなー。
何かMRIっぽい機械置いてあるし。
まあ生まれたばっかだし何ぞ検査でもすんだろ。
そんな安易なことを考えていると、早速俺はその機械に入れられた。
……拘束付きで
……え?ちょっと待ってなんで拘束?普通に怖いんですけど!?
え?何?何?何?いや、ちょっと待って。
泣くよ赤ちゃん。
泣いちゃうよ!?そうだ泣こう赤ちゃんだもの(錯乱)
と言う訳で全力で泣いてみたものの、医者は笑顔で俺を拘束するだけで一考だにせず淡々と作業を続けていった。
そして、全力の抵抗虚しく俺は機械に飲み込まれていった。
あー暗い。何かピカピカ光りだしたよ?
えー……何か…い……し………き………が………………
『第1言語存在確認……古代言語日本語を確認……第2言語として銀河共通語をインストールします。……インストール中……インストール中……インストール中……インストール中……インストール完了。覚醒を開始します。』
……………っは!!何だ今のは何か頭に流れ込んで来たような。
あっ機械から出る。
まーたあの医者だよ。
こんな訳のわからん機械に入れやがって。
全力で泣いて困らせてやる。
覚悟しろよ。
「よく頑張ったねー僕の言ってること判る?判ったら頷くか返事してご覧」
What!?言葉が判る!?聞いたことない言語だけど理解出来てる!?気持ち悪っ!!
…………………っは!?そうかあれはスペオペテンプレ技術第二弾『学習装置』!!子供の脳に直接知識をインストールする便利機械!!
「あれ?もしかして不具合かな?……でも表示では完了って出てるし」
おっと、驚きすぎて返事を忘れていた。
まあしょうがない。
こんなの正にスペオペの中でしか存在しないスーパーテクノロジーだからな。自分が経験できるとは思わなかったワッハッハッハッハッ「おかしいな、再インストールが必要か?」……………………!?
「だー、わきゃるゅ!こちょばわきゃるよ」
「あー、良かったちゃんと完了しているようだね。じゃあお部屋に戻ろうか」
アッブねー、いくらスーパーテクノロジーだからといって、あんなんもう二度と入りたくないわ。
そうして、俺は部屋に戻された。
医者が部屋から出ていく間際に
「じゃあここで大人しくしていてね。後1日位でお家に行けるからね」
と言って出ていったので此処から出られる日は近そうだ。