第13話
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あれから時は戻り1年半後、俺は3歳になり遂に成人認定試験の日を迎えていた。※第4話冒頭と同じ日
今日を迎えるまで正に勉強漬けの毎日であった。
その内容の濃さは前世の高校生で勉強する内容の比では無かった。
数学の科目は良かった。基礎レベルの学業レベルを問う内容の問題であるから、使う数学の内容も似たようなものでほぼ高校の数3Cレベルとプラスα位で済んだので殆ど勉強しなくて済んだ。理系の大学に行っていて良かったと初めて感じた瞬間だった。実際にやったのは復習程度だ。
次に楽だったのは文系科目だ。
まず、全世界で銀河共通語が使われているため、外国語という存在がなく銀河共通語の名作の文章問題の読み取り程度の問題だったため、文学系も楽だった。
歴史も大まかな西暦の出来事、宇宙歴の少し詳しめの内容を暗記するだけだった。これも、1歳から歴史を調べまくった俺にとって、未だ覚えていない項目を暗記するだけであり大して苦にならなかった。
しかし、その反対に理科系科目は正に地獄であった。
約2年間の勉強時間の内凡そ8割はこの理科系科目に割かれたと言っても過言ではないだろう。
正に人類の科学的進歩は驚異の一言であった。
例えば元素一つとっても
人類は自然空間で存在可能な超重元素をいくつか程発見し、更に人工的に作られた元素は数知れず、故に元素表はとんでも無い事になっていた。
幸いだったのは必要なのは地球時代からあった自然に存在する基礎的元素と、現在メジャーに使われている人工元素だけだった事である。
物理系においても、古典物理等は影も形もなく、新たな理論の元統合されており、聞いた事がある理論も名前が変わっていたりと、完全に学びなおしとなった。
そして、新たな理科系分野として、素粒子学やFTL技術基礎等、地球では見たことも聞いた事もなかったような科目がいくつか存在した、これは完全にまっさらな状態なので当然のごとく最初からの学習となった。
これを2年で学んだと思うと、本当に俺を褒めてやりたいと思う。
そして、幸いだったのは家庭教師がボロゾフ教授であった事である。
教授は25歳程から大学で教鞭を取っており、教師歴としてはまだまだ全然浅いが、最年少で教授になった天才だけはある、教授の教え方はとても分かりやすく、理論が全く分からなくなるという事態は起こらなかった。
本当に、家庭教師を務めてくれた教授には感謝しかない。
唯、この2年で教授が被っていた猫は完全に剥れていた。
本当に最初に会った頃のあの丁寧な言葉を使っていたあの美人でミステリアスだった教授はどこに行ってしまったのだろう。
今では呼び方こそ最初と同じ様にアル君と呼んでくれるが、その他は完全に男っぽい喋り方である。
他にも理論が分からない場所があると
「えーこんなのも分からないのかい。やはり5000年も前は遅れていたんだね。いや、それともアル君がアホなだけかな」
と言って煽ってきたりもしていた。
まぁ、その煽りへの反骨精神で勉強は進んだんだが……
それでも、何度心の中で『最初の教授カムバーック』と叫んだか数しれない。
まあ、そんなこんなで地獄を見てきた俺であるが、本来はこんなことはない。
実際には10年程を掛けてゆっくりと洗練されたカリキュラムで学習するため、勉強が苦手になるということもほぼ無いらしい。
今回俺がやった詰め込み教育なんてこの時代では邪道も邪道なのだった。
そして、その凡そ2年の成果の確認のために俺はテストを受けに来ていた。
「ああ~緊張する。こんなの大学受験以来だ。」
「そうか、アルは前世で大学に通っていたんだったね」
付き添いで来ていた父さんが言う。
「うん、まあ大した大学じゃなかったけどそれでも緊張したなあ」
「まあ、今日の試験は合格定員とかは設定されてない試験だから最低点さえ取れば合格するさ」
そう、この認定試験は成人全員が受かる必要性があるために合格定員は設定されていない。あくまで最低点をとればいいのだ。
それでも、やはり毎回落ちる人は落ちるのである。
因みに、この試験の合格率は8割である。
今回、俺は突貫で勉強したので、合格するかどうか結構ドキドキなのである。
そして、試験の受付に到着した。
当然、受付の人等存在せず自動受付である。
「えーと、この番号を入力してと……出た。アルバート・クーパー3歳。間違いない。受験会場は3階みたいだね。…………あ。あと付き添いはここまでみたい。」
出てきた情報を見ていると注意事項がかかれていた。様々な事項が書かれている中で付き添いに関わる項目も存在した。
付き添いはこのホールまでで、それ以降は本人のみの入場が可となっていた。
「分かった。じゃあ、試験が終わるまで待っているから、終わったら連絡をしてね」
そして、俺は一人試験会場に入場した。
試験会場は広いホールのような場所であり、そこに人一人が入れるような区切られたスペースが規則正しく整列されていた。
ぱっと見るとまるで漫画喫茶のようにも見受けられる光景だった。
どうやら不正防止のために個室を使っているようだった。
そして、俺も指定された中に入ると中には机と一つのコンピュータらしきデバイスが置いてあるだけだった。
「成程、これで回答するのね」
俺は、試験開始までデバイスを適当に弄って時間を潰していた。
何故かと言うと、この個室に入ってから自分がいつも身に着けているデバイスが使用不能になっていたからだ。
やはり、これも不正防止のための措置のようだ。
そして、試験開始5分前になり試験の注意事項等が放送で流れ、遂に試験が開始した。
試験開始時間になると自動的にデバイスが起ち上がり、丁度目線と同じくらいの高さに試験問題が投影された。
最初の科目である一般常識の科目は選択式のようで、問題をタッチすると回答が出来るようだった。
そして、一般常識の問題を解き終わり、次々と科目を消化していく。
その中で面白かったのは数学や物理等、数字を扱う科目だった。
何が面白いのかと言うとこれらの科目、計算をしないのである。
この時代では計算というのは機械がするものであり、使う式さえ知っていれば良く計算自体には重きを置かれない。
では、何に重点が置かれているかと言うと式の作成能力である。
故にこれらのテストでは式を入力すればデバイス側で勝手に計算してくれるのだ。
なので、回答者は使った式と回答を入力するだけで良く非常にストレスフリーなテストだった。
そんな事に感動しながらテストを受けているとあっと言う間に時間は過ぎ、テストは恙なく終了した。
「ああ~漸く終わった。やっぱ紙じゃないテストは肩がこるな」
そんな事を感じながら外に出ると父さんが外で待っていた。
「あれ?早かったね。後1時間は掛かると思っていたんだけど」
「うん、何とか終わらせられた。問題そのものはそこまで難しくなかったし。」
「そうか、結果が出るまで後3時間位あるね。どうする?このまま結果が出るまで、その辺りで時間を潰す?それとも家に帰るかい?」
テストは時間一杯解かなければいけない訳ではなく、早く終われば退室可能な大学の試験と同じ様な仕組みだった。
俺は早く終わったのでとっとと退室した。
なので、試験終了までは後2時間程ある。
そう考えると試験終了から1時間で結果が出るのか。
やっぱ早いな。
「ん~結果は皆で見たいから家に帰るよ」
「そうだね、ナタリーも気になっているだろうし帰ろうか」
家に帰える事となり、俺たちはトランスポーターに乗り込んだ。
そして、家に着き試験の感想等を言っている内に瞬く間に時間は過ぎ去り試験結果が発表される時間となった。
「とても緊張するわね。心臓がとんでもなくバクバクしてるわ。」
発表直前になり、母さんがそう言いだした。
表情はとても強張り、まるで自分が試験を受けたようだった。
「別に母さんが試験受けたわけじゃないのに、なんで緊張してんのさ」
母さんの余りの様子に自分の緊張を忘れ、笑ってしまう。
隣を見ると父さんも俺と同じように笑っていた。
父さんは俺の試験会場から出て来る様子を見ているので、そこまで心配していないのだろう。
「まあ、多分大丈夫だろう、2時間も早くテストを終える事が出来たのだから自信はあるんだろう?」
「うん、十中八九大丈夫だと思うよ?というか教授から脅されるほどの難易度じゃなかったから拍子抜けしちゃった。だから母さんもそんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「やあね~息子の初めての試験なのよ。緊張しない母親がいるものですか」
俺の言葉も馬耳東風で、全く相手にされない。
まあ、時代は変わっても母親というのはこんなものなのだろう。
いつの時代も母親は子供が心配で堪らない物なのだ。
そして、遂に試験結果が俺のデバイスに送られてきた。
「あ、来たみたい」
そして、その結果を見る為に、メールを開封する。
先程までは緊張している母を見て笑っていたが、それでもいざ確認するとなるとどうしても緊張してしまう。
俺は若干震える指先でメールをクリックした。
「…………っえ!?」
俺は深刻そうな声を上げる。
『えっ!?』
両親がまさかと言うような表情をする。
「合格でした~」
『最初の間と「っえ!?」は何だったんだ(のよ)!!」
そう言って両親はずっこけた。
「いや~、結果を見て安心したら何かしなくちゃいけないと言う使命感が……」
「そんな使命感いらないわよ!!心臓が止まるかと思ったじゃない!!」
母さんは若干お冠のようだ。
父さんはこめかみに手を当てて、頭痛が痛いとかそんな感じで
「まあ、合格は予定通りでよかったよ。ところで点数はどうだったんだい」
と聞いてきた。
俺はもう一度メールをしっかりと読んで答える。
「ん~と1000点中922点だった見たい。今回は合格最低点が623点だったらしいから、まあ悪くないんじゃないかな?」
「そうだね、2年の詰め込みでこれだけ点数が取れたんだから寧ろ上出来だよ。おめでとう!」
「そうよ、2年間の努力が報われて良かったわね。おめでとうアル!」
そう言って両親は合格を祝福してくれた。
この時になり、俺は合格した実感をようやく感じる事が出来、沸々と喜びが沸き上がってきた。
「そうだね。合格したんだね……よし!よし!よっしゃあ!!!これで条件クリアだ!!!!」
「おめでとう。本当に条件をクリアするかは正直5分5分だと思っていたけど、本当に合格してしまうとはね~。そうだ、そんな事より報告しなくちゃいけない人がいるんじゃないのかい?」
そう言われて、俺はハッとする。
そうだ、俺にはこの2年間付きっ切りで勉強を教えてくれた先生がいる。
言わずもがなボロゾフ教授の事である。
俺は早速、端末で教授に連絡を取る。
コールはほんの少しの間で教授が端末に出る。
「やあアル君。早速だが、結果はどうだった?」
俺はこの端末の応答に出るスピードと早速の合否の確認に教授も結果が気になっていたことを悟る。
「勿論合格でした!!」
先程の両親の時とは違い俺はストレートに結果を伝えた。
それは、この2年間真剣に勉強を教えてくれた人にふざけて伝えるのは何か違うと感じたからである。
「そうか。それは良かった!!いやあ、教え子達が何度も様々な試験を受けているが、結果がこんなにドキドキして気になるのは初めてだったよ。直接長い時間勉強を教えるのなんて久々だったし、今回は良い経験が出来た」
教授は安堵の表情を浮かべ喜んでくれていた。
教授クラスになると普段するような授業はあるが、それを個人に直接教えるということは余り無いのだと家庭教師中に教えてくれていた。
やはり、俺はかなり幸運なのだろうと考えていると、先程テスト中に気になる事があった事を思いだした。
「そういえば教授、教授に教えてもらった内容より、テストが大分簡単だったんですが……」
そう、それがとても気になっていたのだ。
先程から何度も言っている通り俺はテストが2時間も早く終わるほどにあっさりと問題が解けてしまっていた。
ヒイこら言いながら解いていた教授から出された問題に比べたら正に天と地程の差があったのだ。
「ああ、それは君に教えていたのは王都の一流幼年学校の卒業試験レベルの問題だから」
……………ハイ?ドウイウコトデスカ?ナンテイッタコノオンナ。
教授はサラッと驚愕の事実を伝えてくる。
そもそも、幼年学校とは所謂義務教育のことであり、7歳から15歳まで通う事が全国民に義務付けられている。
今回受けた成人認定試験はその幼年学校の卒業レベルの問題が出る事が知られているが、全ての幼年学校がそのレベルの授業をしているかと聞かれると……そんなことは無い。
貴族向けや学者志望者向けの学校等、所謂進学校が数々存在しており、そこでは例外なくハイレベルな教育が行われている。
そして、王都の進学校はそんな数々の進学校の中でも断トツのレベルを誇っていた。
その卒業試験と言えばどんな難易度なのか想像がつくだろう。
決して成人認定試験に出る問題のレベルではない。
正に月と鼈である。
いや、俺も若干おかしいとは思ったんだよ?
こんな難しい問題を王国の成人している人全てが解けるなんて、未来はすげえなと思ってたんだ。
そりゃあそうだよね、あんな応用要素たっぷりで他の科目の知識を必要としてくるレベルの問題なんて全員が受ける成人認定試験で出てくる訳ないよね!?
…………なんで気づかなかった俺!?
「アル君には悪いとは思ったが、これはご両親のオーダーでもあり、私もその方が良いと感じたのでそのレベルで教えた。」
な、何!?
俺は驚いて両親の方を見る。
すると、両親はバッとそっぽを向いて俺と目を合わせない。
まさか、こんな所にあの地獄を作った元凶がいたとは……これは追及が必要だ。
俺が両親に詰め寄ろうとするのを見た教授が慌てて止めに入る。
「ま、まあ、落ち着けアル君。これにはちゃんと理由があるんだ。貴族は幼年学校に入る際、普通のレベルの幼年学校に入ることは推奨されない。ある程度のレベル以上が求められるんだ。そして、それは勿論アル君にも適用される。そして今回の授業で分かって貰えたと思うが進学校のレベルは本当に高いんだ」
まあそれは身をもって経験したから分かる。
「今回試験に合格したということは、アル君はこれから会社を経営する事になる。と言う事はアル君は会社を経営しながらも、勉強にも力を入れなければならないと言う事だ。どうだ?今回卒業レベルまで勉強してみて、それは可能だと思うのか?」
そう言われると、少し難しいかもしれない。
10年間しっかりとしたカリキュラムで学べば習得出来ると言っても、それはリソースを全て勉強に注ぎ込んだ場合だ。
俺のように社長業を兼任すると考えたらそれは無理があるかもしれない。
「それは厳しいと思います。」
その答えに教授は頷いた。
「だろう?天才の私でさえもそう思う。なので私と言う家庭教師がいる内に全ての内容を教えてしまえという事になったんだ。アル君に教えなかったのはその方がモチベーションを保てると考えたからでもある。」
成程、それなら納得出来る。
確かに、只でさえ時間がないのに余計な事を教えられていると知ったらモチベーションは保てなかっただろう。
それなら許せる。
そう思い両親の方を見ると
全力で首を前後に振りボロゾフ教授の言葉を肯定していた。
まるで首ふり人形のようだ。
……怪しい、この両親がそこまで考えていたかと思うと本当に怪しい。
しかし、これは本当に俺の利益にもなる事だったので、俺は上げた鉾を下した。
「分かりました。あくまで私の事業の事を考えての内容だったのですね。そこまで考えて頂けるとは思いませんでした。遅ればせながらお礼申し上げます。今回は僕の勉強に2年物長い間付き合って頂き感謝の言葉もありません。本当にありがとうございました」
「いやいや良いんだよ。それより、試験に合格したという事は遂に計画を実行に移す時が来たということだ。」
そう、合格したことも勿論大事なことだがやはり最も重要なのは料理の復興事業である。
両親の出した条件クリアのため2年を勉強に費やした訳だが、その間に全く何もしなかった訳ではない。
通信での勉強の合間にボロゾフ教授と計画を練ったのだ。
寧ろ2年もの間計画を練る時間があったので計画はかなり綿密な物となっている。
「はい、明日早速役所に行き会社設立をして来ようと思っています。そして1カ月後には早速目星を付けた惑星アンティアに飛ぶ予定です」
そう、合格したと言う事は食材を見つけに行くための枷が解かれたという事である。
俺は大手を振って惑星にフィールドワークしに行くことが出来るようになったのである。
苦節3年、遂に失われた料理を復興する旅が始まろうとしていた。