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飯マズな超未来で俺はルネサンスに励む  作者: バトウスキー
誕生から3歳まで(仮)
10/19

第9話

明けましておめでとうございます。

今年も頑張りますので、是非とも応援のほどよろしくお願いします。



お年玉は評価を頂けるとうれしいです(笑)

その日、うちに帰ると俺はお爺様に言った通り、家族全員を集めてもらった。


「アル、今日の講演会はどうだったんだい?確かボロゾフ教授にも会わせて貰ったんだろう?」


「とても素晴らしい方でした。僕の質問にも真摯に答えて頂けました」


「それは良かったわね。でもどうしたの?

家に帰ってきたら急に話を聞いて欲しいなんて」


「お父様、お母様、お爺様。僕はどうしてもあなた方に打ち明けないとならないことがあります。」


「打ち明けなきゃいけない事?それは何だい?」


父さんのその問いかけに、俺は恐怖を打ち消すように勇気をもって打ち明けた。


「お父様もお母様もお爺様も、僕が1歳にも関わらず、意識が余りにもはっきりとし過ぎていると感じてはいませんでしたか?」


「確かに、賢すぎるかもしれないとは感じていたが」


やはり、そうか。20歳超えた人間の精神で発達過程の赤ちゃんの真似は無理だとは思っていた。


「それには理由があります。お父様達は転生という概念をご存知ですか?」


遂に俺は核心的部分について切り出す。


「……転生、確か宗教系の概念だったはずじゃが」


良かった、まだ転生という概念は存在していたようだ。それなら説明は早い。


「転生とは、死んだ後魂が別の生き物に宿り、新たに生まれる事です」


「つまり、貴方は……その転生?をして来たという事ね」


「はい。私は西暦2018年頃20歳で死んだ前世の記憶を持って生まれてきました。今まで黙っていてすいませんでした」


「そうだったのか。それで、それがどうかしたのかい?」


余りの軽い返事に俺は少々ショックを受ける。


「……えっと、気持ち悪くないんですか?自分の息子に20歳前後で死んだ人間の記憶があるんですよ?」


「うーん、別にそんなこと思わないわよ?」


なんだろう、認識に少し乖離があるような……


「そうじゃな、アルよお主は古代から転生してきた、それは間違いないのかの?」


「あ、はい」


「その時代では記憶操作や記憶移植等の技術は存在したのかの?」


「いえ、まだそのような技術は研究段階でした」


「そうか、それが認識の差の原因か。この時代ではの、記憶は電子信号として解析され切っておっての。旧家等の一部では先祖代々の記憶を継承したり、大事な記憶は外部ストレージやクラウド上に保存したり、思考をAIに半ば以上頼り切っておったりする人間もいてのう。別の記憶を精々20年分程持っている位では何とも思わんよ」


何ていう時代だろう、前世の記憶を持っていることがそれ位で片付けられてしますなんて。


「そ、そうなのですか。では僕の事は受け入れて頂けるんですか?」


俺は声を震わせながら最後の確認をする。


「勿論よ何言ってるの?あなたはクーパー家で生まれ、クーパー家で育った。立派なクーパー家の一員じゃない」


「まさか、そんな事を気に病んでいたのかい?」


「まあ、そう言ってやるな。アルの前世とやらの記憶では違ったんだ。まあ、認識の齟齬と言ったところじゃろう」


「は、ははは、そんな簡単に……あ、あれ涙が」


拍子抜けしてしまい肩の力が抜け、緊張がどこかに飛んで行ってしまったからか俺の両目からは知らずの内に涙が零れてきていた。


「もう、そんなに気を病んでいたの?そんなこと考えなくても貴方は私たちの息子よ。」


そういって、母さんが俺を抱きしめてくれる。

そして、その行為に俺の涙腺は完全に崩壊した。


「う、うわあああああぁぁぁぁぁ……」



果たして何分泣いていただろうか。

ようやく泣き止んで周囲を見ると、家族が俺を優しく見守っていた。

その事が妙に気恥しく、俺の顔は真っ赤になった。


「うん、気は済んだようだね」


父さんが俺の様子が落ち着いたのを見計らって声を掛けてくる。


「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」


「いいのよ、まだ貴方は1歳なんだから」


そう言う母さんの言葉はどこか俺を茶化していた。


「むう、どうせ俺は精神年齢21歳で大泣きした男ですよ」


「ふふふ、そう言わないの。いいじゃない。精神年齢が21でも、まだ体は1歳児なんだから」


そう言って再び俺の体を抱きしめてくる母さん。

さっきは泣くことで精一杯で全く感じられなかった、安心できる甘い匂いが俺を包み、とてもリラックスさせてくれた。


そして、様子がひと段落したと見たのか爺さんが話を前に進めてくる。


「さて、アルよ。今この話を儂らに打ち明けたのは、今日のボロゾフ教授との会談が原因かの」


「あ、はい。僕は先程言った通り21世紀前半までの記憶を所持しています。そして、この時代に生まれて最も驚いたことは『料理』が全く存在しない事でした」


「そう、だからあんなに料理について何度も聞いてきたのね」


「僕の生きていた時代では今のような完全食は概念だけで、その前段階とも言えるものが発売されていただけでした。つまり、どんな富豪でも、どんなに低収入でも皆が料理を食べて生きていたんです」


「成程、完全に日常の一部だったんだね」


「はい、なので料理が何故消えたのか、もう食べることが出来ないのかを知るためにボロゾフ教授にどうしても会いたかったんです。」


まずはこれまでの経緯を説明する。

そして、その結果がどうだったのか続けた。


「結果、もうこの時代には料理と言う文化は完全に消滅してしまったとの事でした。」


「そうか、それは残念だったね。それで、アルはどうしたいんだい?」


そして、今日の本題に入る。


「僕は……僕はこの宇宙時代に食文化を復活させようと思っています!!」


『…………ん?』


余りに突拍子もないことだったのか全員の目が点になる。


「待て待て待て、結局結論は料理は完全消滅してしまったんだよね?」


「はい、でも僕はある程度の簡単な料理ならば出来ます。勿論全ての料理や調理法を知っているわけではありません。でも少しなら知っている。ならばチャレンジしてもいいではないですか!!完全食を作っている、クーパー家には申し訳ないと思いますが、この完全食は人類の食への冒涜です。前から思っていましたが、今日のボロゾフ教授との会談でこの完全食のルーツを聞いた時に更にその思いは深くなりました。この効率だけを求め、他を排除したただの栄養補給を僕は認めない!!!!!!」


今までの鬱憤を晴らすかのように俺は思いのたけをぶつける。


「そして、今日、ボロゾフ教授という王国最高の古代学の権威とも接点が出来た。今なら、今ならば可能かもしれないんです。ですから、お父様、お母様、お爺様。」


そして、俺は大きく息を吸って。

言った。どうしても今まで言えなかった事を。



『………僕にお小遣いをください!!!』









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