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最近、裏山がおかしいんだけど。 その3。

「紅葉を愛でるのはけっこうだが、あまり上ばかり見てると迷子になるぞ」

 ルカが顔だけこっち向けて、そうブクリエに注意する。

「ルカ先生、口調のせいで厳しい注意に聞こえるよ」

 軽い調子で言ったら、ルカは予想外の反応をしたんだ。

 

「よしてくれシュバリ、先生なんて。わたしは、

ただ紅葉狩りを知ってるだけだ」

 「よ」と同時に顔すごい勢いでギュルっと前向けたんだけど、前向く前 ちょっと見えた時点で

 顔がカーって真っ赤になってたんだ。

 

「ルカ、てれてるの?」

 予想しなかった反応で、ぼく ポカンと聞いたんだ。

 そしたら「ぅ……」ってちっちゃく言って、

 それから黙っちゃった。

 

 わるいことしたかな?

 

 

「学園から見ると、ほんとに燃えてるみたいでしたけど、

こうして近くで見ると、少し濃い目のオレンジぐらいの葉っぱが

いっぱいだったんですね。わたしの髪の色より色が薄いですよ」

 カリカリカリって、なんかを書いてるような音といっしょに、

 一番後ろのジュルナルちゃんが感心したような声色でそう言った。

 

 彼女の服装は白いフリルが前後にいっぱいついてる黒い上下、

 スカートがギリギリ膝の上って短い。

 寒そうだなぁ。スカートな分ブクリエよりそう見える。

 

 フリルがいっぱいで派手に見えそうなものなんだけど、

 フリルが別にうるさいわけじゃないのがすごい。

 しかもかわいらしいんだよね、この服のジュルナルちゃん。

 

 赤いツインテールとも合ってるし、おべんととシートが入ってるカバンが

 ジュルナルちゃんから見てちょっとおっきめなのが、不格好じゃなくて

 かわいらしく見えるのがまたすごい。

 これもおしゃれセンスなのかな? 色合いは派手だけど……。

 

 

「こうして何本かを下から見上げるのもいいですけれど、

頂上からもっとたくさんの色づいた葉っぱを見たら、きっと

もっと美しいのでしょうね」

 うっとり、って感じの声でフルールさん。そのうっとり声は、

 普段より色気が多くて、ぼくの顔がほんのり熱持っちゃう。

 

 今日のフルールさん、頭に赤い葉っぱの髪飾りつけてる。ブクリエと違ってさりげないなぁ。

 服はどっちも同じ色で濃い茶色、上側の少しふんわりした生地の長袖シャツには、

 ところどころに、黄色い葉っぱが刺繍してある。

 膝を覆う長さのスカートには、特になにもない。

 カバンのかけ方がルカと逆で、右から左下に向かってる。

 

 スカートが広がらないような作りで、たしかタイトスカートって言うんだっけ?

 動きやすいのかな? それで着て来たんじゃないかと思うんだけど、

 ぼく そこまでスカートの種類とか気にしたことないからなぁ。

 

 フルールさん曰く、秋の色の葉をつけた木を

 イメージしたかっこうなんだって。言われてみれば、

 たしかにそんな感じだ。すごいなぁ、

 そんなこと考えて服なんて選ばないよぼく。

 やけにおっきい真四角なカバンは、ルカ以上に中身がわかんないなぁ。

 

 

「そうだろうなぁ」

 ぼく、平気を装ってフルールさんに同意する。

 こう思ったことは勿論本当。

 

「なーんでシュバちゃん真っ赤になってるかなー?」

 いつのまに視線を地上に戻したのか。左にいるブクリエが、

 ぼくを右肘で、軽くつっつきながら不服そうに言って来た。

「だ、だって……それは、フルールさんが」

 

「あらシュバリちゃん、わたくしがどうかして?」

 ルカとぼくたち幼馴染二人の間にいるフルールさんが、

 クルっとこっちに顔を向けた。長くて綺麗な金髪が、ふわりとなびいた。

 

 この人は、どうしてこうも色気を天然で振りまくんだろうなぁもぅ。

 ほんとに同じ学年なのか疑わしいよ。

 

 

「あ、いや、その、あの……」

 女の子同志なのになぁ。どうしてもこの人相手だと、

 その色気にやられて、ドキドキしたりドギマギしちゃうんだよなぁ。

 

 ーーこういうところ、男の子扱いされる原因なのかなぁ?

 でも、どうしようもないしなぁ。

 

「くっ。こういうシュバちゃん、めちゃくちゃかわゆいっ!

でも、いつもその理由がオジョールさんなのがくやちいっ!」

 なんか、左でブクリエが地団太踏んでる……。

 

「あぁ、状況のスケッチが追い付かないですぅっ」

 一番後ろのジュルナルちゃん。嬉しい悲鳴上げてます。

 声が嬉しそうだから、顔を見るまでもないんだよね。

 

 

「カリカリ言ってるの、絵書いてたんだ」

「そうですよ。これでも新聞部ですから」

「新聞部、あったんだ。てっきりぼく、ジュルナルちゃんが

個人的にぼくたちのことを書き残してるんだと思ってた」

 

 ぼくの言葉に、ブクリエがうんうん言いながら何回も頷いてる。

 

「ぬわーーっっ!」

「あ。なんか、ショック受けてる」

 後ろでジュルナルちゃんが変な声出したから、そっちに顔向けたら

 頭抱えてうずくまってたんだ。

 

「そうですよね。他の新聞部の皆さん、わたしみたいに目立ってませんし……」

 「ですが」って立ち上がった。

「たとえ個人的な趣味だと言われようとも、

わたしは皆さんの番記者で居続けますですっっ」

 右手を力強く振り上げて、突如そう宣言した。

 

 

「も……もう立ち直ってる……」

「タフだねぇちびっこちゃん」

 ブクリエに苦笑いされるって、相当じゃないかなぁ?

 で、ぼくたちを見て聞いて、フルールさんは

 楽しそうにウフフって笑ってます。

 

 

「フフ。こういう騒がしい紅葉狩りも、いいな」

 一番先のルカ、ほんとに楽しそうにかみしめてる。

 まだ太陽が頂点に向かう途中、朝早くからこんな調子。

 

 頂上つくまでに、お腹ぺこぺこになりそうだけど、

 ルカ先生が、お弁当は頂上についてからって言ったんだ。

 なのでぼくは、ブクリエに目を光らせながら紅葉狩りを続けた。

 ブクリエ、お腹すいたらすぐ食べかねないからね。

 

 

***

 

 

「ちょーじょーだー!」

 ブクリエの両手を上げての、疲労と達成感のこもった声で、

 ぼくは周りを見る。

「うわぁ」

 達成感とうっとり感の混じった声がぼくから出ていた。

 

 明るい。周りが明るくなったんだ。

 

 木々の中にいたおかげで、周りがちょっと暗めだったんだよね。

 そんなに高い山じゃないはずなんだけど、

 ずっと同じような景色を見てたせいか、

 疲労感が体に溜まってたみたい。

 全身たるいんだ。鍛えてても、やっぱり疲れる物は疲れるんだなぁ。

 

 

「空が広いですわねぇ」

 フルールさん、空を見上げてしみじみ言う。

「ほんとだぁ~」

 ぼくも空を見上げて、思わず両腕広げながら言っちゃった。

 

「青空が気持ちいい~」

 そのまま両腕を空にのばして続けて言うぼく。

「そうだな。わたしも、この開放感が好きなんだ」

 ルカもぼくと同じように、両腕をわーっと斜め上に伸ばして

 達成感を全身で表して言った。

 

「皆さんお疲れさまです~。わたしもお疲れさまですけどね」

 そう言って、後ろのジュルナルちゃんは苦笑した。

 

 見なくても声がそうだから断定。

 ほんと心が素直に声に出るよね、ジュルナルちゃん。顔にも出てるかな?

 この素直なのに加えて、ぼくたちに対する覗き見に悪意がないから、

 許せるのかもね。

 

 声の直後、ジュルナルちゃんトコトコぼくの右に歩いてきた。

 知らない間に絵描くのやめてたみたいで、手ぶらになってたよ。

 

「さて。頂上についたことだし、お昼にしよう。

まだ少しお昼時には早いけど」

 そういうルカに、ぼくはどうしてわかったのって聞いた。

「見てみろシュバリ」

 左手で空を指差してそう言うルカ。

 

「空を?」

 言われた通り空を見てみた。

「っ、まぶっし!」

 キュっと目をきつく閉じて、それからゆっくーり開く。

 普段と同じに開いたらまぶしいから、薄目。

 

「……なにもわかんないよルカ?」

 太陽を見て、なにもわからないことがわかったことを伝えると、

 しかたないなって苦笑した声。

 

「まだ太陽は頂点まで昇ってないんだ。だから、

まだお昼時には早い、って判断したんだよ」

「そうなんだ。まぶしくって薄目しか開けてなかったからなぁ」

 苦笑い。むりもないか、って今度はにっこりした声のルカ。

 

 

「不思議ですわね。そよ風に混じる魔力が、したよりも清浄しょうじょうに感じられます」

 フルールさんの言葉。ぼくは、意味がわかんなくて目をパチパチ。

「たしかにそうだな。まるで、この頂上に精霊でもいるかのようだ」

 ルカの言葉も、よくわかんない。ぼく、まだパチクリ混乱中。

 

「まったくぅ、まわりっくどいんだからなぁオジョールさんもルカちんも」

 ニコニコどころかニカニカしながらブクリエ。

 言葉のわりには、苦笑いじゃなくて、楽しそう。

 

「空気がうまーい!」

 わーって上向きの半月を描くような動きで、腕を広げながら言ったブクリエ。

 もぅ、いちいちおおげさだなぁ。

 

「って言えばいいのに、なにをかっこつけてるんだかなーもー」

 相変わらずの楽しそうな顔で、腕を降ろしてからブクリエはそう言った。

「ああ、そういうことなんだ」

 思わず両手をパンっと打って言ったぼく。ようやく理解できた。

 

 

「しかたないじゃございませんかブクリエさん、

わたくしそう感じたんですもの」

「右に同じだバレンティーネ嬢。かっこつけたつもりはない」

 言葉はとげとげしてるけど、声色は普段の調子。

 険悪な色は、二人とも持ってない。

 

「空気がおいしい、わたしもそう思ってました。

よかったです、そう思ったのがわたしだけじゃなくて」

「よかったって、なにが?」

 顔だけ向けて聞くぼくに、「はい、あのですね」ってジュルナルちゃん。

 

「実は、ちょっと言ってみたい言葉がありまして」

 どんな言葉? ってもっかい聞くぼく。

 そしたら、ぼくの声に答えるようなタイミングで大きく息を吸い込んで、

 ぼくが疑問に思う間もなく、ジュルナルちゃんが言ったんだ。

 

「空気うまっ!」

 

 って。

「「えええ?!」」

 ぼくとブクリエ同時のびっくり。

「ジュルナルちゃん。なんてキャラ崩壊を……」

 これはルカ。

 

「い……意外な一面ですわね」

 フルールさんが。あのフルールさんがポカンとしてるよ。

 

 

「いやー、一回してみたかったんですよねこういう言葉遣い。

でも、駄目ですね。違和感すごいです」

 そういうジュルナルちゃんだけど、表情はにっこり楽しそうだ。

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