集う猛者たち
【使用素材】
・Model あさい式戦艦Warspite Ver1.2 製作:あさいはるか
・BackGround stage_20 製作:hazi:
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「あら♪」
そう言いながら盛大に滑り
スカートの中身を衆目にさらすのは
ルヴァナント家当主の令嬢イリヤ=P=ルヴァナント。
天然系の言動や行動はいつものこと。
今日も彼女のそんな痴態を撮影するため多くのメディアが集まっていた。
レッドカーペット上にズラリと集う
彼女主催の武道大会に出場するメンバーたち。
この日は格闘士たちのお披露目会であり
その中には、ミーチャ、パイランの姿もあった。
パイランは前列中央。
ミーチャはパイランの斜め後ろの後列。
カメラマンのたくフラッシュを浴びながら
ミーチャは悶々とした気持ちを抑えられずにいた。
拳法家の性か、はたまた彼女の内包する雄の性質か
ミーチャは、今この場でパイランと拳を交えたい衝動に囚われていた。
あの廃ビルから彼女を見た時から、そそっていたのだ。
あの日からずっと彼女を想ってきた。
それだけ焦がれた女が、今こうして目の前にいる。
我慢などできようはずもない。
パイランの後頭部を見つめ、まるで裸婦を見たウブな学童のように
顔を上気させるミーチャ。
その時、ふとパイランがミーチャの方を振り返り目が合う。
射竦めるようなその瞳にミーチャが気圧された時、
鉄門のひしゃげる轟音とともに、黒塗りの車両3台が会場内に
雪崩れ込んできた。
ドヨめくメディア陣を尻目に、その脇に強引に停車する車両。
直後、サイドガラスが開き、中から機関銃の銃身が伸びた。
トミーガンである。
トンプソン・サブマシンガン。通称トミーガン。
旧世界アメリカで開発されたギャング御用達の短機関銃である。
一人で持ち運べるをコンセプトに作られたこの銃は
禁酒法時代のギャング同士の抗争で数限りなく用いられ
多大な実績を誇っている。
ただその後の年代のもっと高性能な兵器も続々発掘されている昨今
この機関銃を用いるメリットは少ない。
しかし、彼らクローネファミリーは旧世界の羽振りのよかった
マフィアたちにあやかりこの兵器を使い続けているのだ。
今では彼らのシンボルマークであり、畏怖の対象となっていた。
クローネファミリーとイリヤは現在
興行関係の利権を巡り対立中である。
今回のこのカチコミもその流れでの事。
メディア関係者を標的に騒動を起こしイリヤの信用を失墜させ
あわよくば彼女の命をも取ろうという魂胆。
だがトミーガンが撃たれることはなかった。
銃身が見えた瞬間にパイランが飛針という暗器を投げていたのだ。
機関銃の持ち主はその極細の針で眼球奥深くまで穿たれ絶命。
機先を制すはずが、先に仕掛けられ慌てる狼藉者たち。
その狼藉者を車両ごとごろりと転がした猛者がいた。
プロレス団体"ライジン"の看板プロレスラー
ウドゥームである。
ウドゥームは身長3メートル、体重300キロという巨漢であり
そのパワーも尋常ではなく
雄のヘラジカを片手で投げるパフォーマンスでも有名な男であった。
彼も武道大会に招かれていた正式な選手であり、
今回は遅刻したおかげで、彼の言う所の"おいしい場面"をもらえたのである。
一台の車両を転がした後、もう一台に組み付くウドゥーム。
それをすでに車外へと出ていた男たち数人が発砲して制する。
しかし、効かない。
分厚い脂肪と筋肉の鎧が
銃弾を完全にシャットアウトしていた。
そして動く巨体。
車両をまるでベニヤ板のように軽々と振るい
男たちをなぎ払う。
思わず『おお~!』と感嘆の声をもらす選手たち。
パワーだけなら今大会随一だろう。
全身が白筋のミーチャでもあんな馬鹿げたマネはできない。
こんな化け物が出場する大会なのだ。
そのレベルがいかに高いかが察せられる。
残る車両と狼藉者たちは、駆けつけてきた護衛者が制圧し
すべての侵入者の排除は迅速に行なわれた。
静まりかえる庭園内。
そこでは、この騒動にも動じず一人プレゼンを再開しだした
イリヤの楽し気な声だけが響いていたという。