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究極ミーチャ  作者: イナナキゴロー
10/30

戯れ

挿絵(By みてみん)


【使用素材】

・Model リサ(R-18) Ver3 データ製作者:クラ_Td731

・Model tda式チャイナ輝夜 モデル:Tda モデリング:やまもと

     製作:deathell 改造:みさぽん 改変:レッドブレイド

・BackGround 八角廊下ステージ- Ver.1.0 製作者:まきがね

・Pose かっこいいポーズ 2 制作:しかきち

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並んで歩く二人の少女。


ミーチャとパイラン。


お互い酒が回ったせいか、肩のグラインドが大きく

足元も少しおぼつかない。


そんな中、パイランはそろりとこういった。


「笑いましたね……」


「えっ?」


聞き取れてはいたが、その言葉の意味がわからず

聞き返したミーチャ。


ミーチャがパイランのことで笑ったことといえば、

あの箱庭の件ぐらいしか思い当たらなかったのだが

あれがいったいどうしたというのか。


パイランは聞き返したミーチャを無視するかのように

まっすぐ前を向いて歩いている。


そして動いた。

左の上段蹴りである。

思い切りミーチャのこめかみに入った。


しかし、ミーチャにダメージは無い。

実際にはパイランは動いてはいなかったからだ。


スポーツ、格闘技問わず

一流の競技者たちが持つ先読みの能力。


相手の行動に先駆けて動きを読み対応できるか否かが

一流とそれ以下の境界でもあるのだ。


パイランは、微細な挙動で技の途中まで入り

一流のミーチャに上段蹴りの"幻影"をみせたのである。


驚くミーチャ。

仕掛けられたことよりも、こういうマネをしてくるタイプだとは

思わなかったからだ。


ミーチャのパイランに対しての印象は"物静か"である。


あの時、中華街で見せた鬼々迫る功夫(クンフー)とは打って変わり、

酒の席でのパイランは、どこにでもいる物静かな少女そのもの。

しかも怪談風の話で恐がる仕草はまだ多分に幼さを残している証である。


それが、こうして幻影とはいえ攻撃を仕掛けてきたのだ。

ミーチャは驚きを隠せなかった。


だが、高鳴る胸の鼓動がある事実を伝えていた。

そして思う。今の行動に理屈はないと。


笑われたことに激昂したのでも、ライバル選手に対し

マウンティングをしたかったのでも、子供じみた冗談ですらなかったろう。

いや、もうそれすらどうでもよかった。


パイランはミーチャを誘ったのだ。

それが厳然たる事実。


こんな強い女が。

こんな凄い雌が。


たしかにミーチャを誘ったのである。


その事実に、歓喜したミーチャの脳は(たま)らず

パイランに対し彼女同様に仕掛けることを選択する。


飛び交う拳と拳。

跳ね上がる蹴りと蹴り。


幻影の突きと蹴りの応酬(おうしゅう)


ミーチャとパイランは並んで歩きながら

幻影の打撃を打ち合っていた。


それはとても濃密で、ゆったりとした二人だけの時間。

二匹の野獣の至福の時。


ミーチャの技は9割防がれ1割が当たった。

パイランの技は1割防がれ9割が当たった。


ミーチャのヒットした打撃のほとんどが無力化され、

パイランのヒットした打撃のほとんどが致命的な効果を与えていた。


歓喜しながら冷や汗を流すミーチャ。

これほどか。

これほどなのかソウ=パイラン!


余りの喜びと、余りの絶望が入り混じり

混乱したミーチャは思わず

幻影ではなく本当の拳を繰り出した。


かわせるタイミングであった。

(さば)くこともできただろう。


しかし、パイランは動かず

ミーチャの剛腕より繰り出された一撃を胸で受けたのだ。


長い廊下に肉の潰れる音が響き渡り、

深々とパイランの乳房に突き刺さったミーチャの拳に血が伝う。


しかし、パイランは微動だにしない。

そして無表情な顔でそろりとこういった。


「怪異と出会う丑三(うしみ)つ時……とはよくいったものですね。


「誘うつもりはなかったのに、思わず足が出てしまいました。


「ですが、これ以上は無益です。無礼を働いて申し訳ありませんでしたが

 もうご容赦願えませんか?


冷え冷えとしたパイランの表情と声で我に返ったミーチャ。

慌ててパイランの胸から拳を引き抜く。


もし、あのまま本物のミーチャの拳にパイランが対応したのなら

確実に始まっていただろう。


幻影などという遊びではなく、本物の試合が。

それほどまでに二人の精神は危うく(たかぶ)っており

一足早く我に帰ったパイランがギリギリの所で踏みとどまった格好である。


ミーチャの精神が(しず)まったのを確認したパイランは

負傷した胸に構うことなく、先にエレベーターへと乗り込んだ。

そしてミーチャを一瞥(いちべつ)し、彼女を残して扉を閉める。


階下の駐車場フロアまで降りたパイラン。

誰もいないことを確認し、

そこで彼女は嗚咽しながら胸を抑えてうずくまる。


「おおおおおッッッ…!!!!!」


あまりの激痛に玉の汗を浮かべ苦悶するパイラン。

その口角には何故か、うっすらと笑みが浮かんでいた。

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