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アドモンド視点
俺、アドモンド・カーテはいつものように執務室で書類を処理していた。弟のアルバードはこの領地のある問題にたいしての支援を他家の貴族家に掛け合ってきてもらっている。うちも一応侯爵家だ。多少の支援は期待していいだろう。
そういえばアルベルトは大丈夫だろうか、すこし心配だ。
アルベルトは兄の俺から見てもどうしようもないやつだと思う。だが、もう家族は3人だけなのだ。アルバートにはすぐにでも追い出せといわれたが成人まではいさせることにした。
これだからアルバートにあまいといわれてしまうのかも知れんな。
そう思いながらも仕事をこなしていると
コンコンコン
と、ノックが聞こえた。
使用人でも来たのかと思い
「入れ」
と声をかけた。
そしてドアを開けて入ってきたのはなんとアルベルトなのであった。
これはなかなか緊張する。ここで兄に疑われてはいけない。
アルバート兄さんだったら話すら聞いてもらえないだろうが、アドモンド兄さんならおそらくいけるだろう。
これはアドモンド兄さんが馬鹿とかではなく、アドモンド兄さんは家族を大切に思っているのだ。特に両親が死んでからはな。
よし、と話かけようと思ったら兄さんから話かけてきた。
「どうしたんだ、アルベルト。ここにお前が来るなんて珍しいじゃないか。というよりも初めてじゃないか」
兄さんは俺が来たのに何も動じてないようにしているが俺にはわかる。
めっちゃ動揺している。
今がチャンスと俺は言葉を紡ぐ。
「今日は兄さんに話があってまいりました」
「そうか。それでどんな話なんだ」
すこし兄さんの顔がぴくぴくしていた。
なんせ俺が敬語を使ったのだからな。今まで誰にも使ったことなどなかったのだ。驚くのも無理なかろう、そうだろう。
「話をする前に一つ言わなくてはいけないことがあります」
そういい間髪いれずに
「今まで本当にすいませんでした」
俺は土下座をした。今兄の顔は見れないがどんな顔になっているか想像がつく。
おそらくすごく動揺していることだろう。
どんどん続けるぞ。
「本当にすいませんでした。兄さんたちには迷惑をかけっぱなしなのにもかかわらず、それでも成人までは家においといてくれるというのは、今にして思えば本当にありがたいことだと思います。だからそれに報いるためにも私は成人までに一人でも生きていけるように多少筋肉をつけ、知識を蓄えたいと思います。ですので、不躾なのは承知ですが書庫に入る許可をいただきたいのです」
とすべてを一気に話した。
そして兄さんの言葉は
「本当にお前はアルベルトなのか?」
だった。
そして俺は間髪いれずに
「はいそうです、アドモンド兄さん。俺はアルベルトですよ。俺は階段から落ちたときに頭を打ちました。その影響かはわかりませんが自分のことを客観的に見ることができるようになりました」
「そして思ったのです。このままではいけないのだと。兄さんたちに迷惑ばかりかけていてはいけないと。自分のできることはしようと。もちろん成人したらカーテの名は捨てて出て行きます。話は以上です」
アドモンド兄さんは納得したようなしてないような顔で
「まあ、いいだろう。書庫の利用は許可しよう」
といい、
「そして俺はお前が変わってくれるのは素直にうれしいよ」
とすこし笑いながら兄さんは言った。
「はい、兄さん!ではこれで失礼します」
そして俺は部屋を出て行った。
「いやー、緊張したわ。だがこれで書庫は使えるし鍛えてもあまり変には思われないだろう」
とりあえず今日はもう遅いから明日から特訓開始だ!
アドモンド視点
今日は本当に驚いた。
アルベルトがここに来ただけでも、驚いたのにアルベルトがあんなことを言うとはいまだに自分の耳がおかしくなったのではないかと疑っているところだ。
だが、アルベルトが変わってくれるならそれはいいことだろう。
というよりも、本当にあれはアルベルトだったのだろか?まあ、それは考えても仕方ないか。
そして俺は執務作業に戻っていった。