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蒼の果てのアルカディア  作者: 深見 鳴
一幕 緋色
7/22

Ep.07 レジスタンス(4)

 


 カンナとリンドウがいる部屋を出て、三人は廊下の奥へと進んだ。目指すはこの組織の首領であるアカツキのいる部屋だ。

「どんな奴なんだ、そのアカツキって」

「可愛い女の子の顔を躊躇いなく平手打ちできるような人だよ」

 アオイが自分の左頬を指差しながら言う。彼女が可愛いかどうかという話は置いといて、とりあえずフェミニストではないらしい。

 こつん、と三人分の靴音が暗く狭い廊下にこだまする。

 左手に、先ほどの部屋と同じような扉が現れた。アオイが数回扉をノックすると、中からくぐもった返事が返ってきた。

「失礼。入るよ、アカツキ」

 ドアノブを回し、緊張感のない挨拶をしながらアオイは先頭をきって部屋に踏み入る。部屋の中では、一人の男が机に向かって座っていた。見たところ年齢は三十を越しているように見える。厳めしい顔つきをした黒髪の男だった。

 彼は書面から顔を上げ、ひとつ瞬きをする。

「アオイに……何だ、ナツハゼもいたのか」

「付き添いです。何なら下がりますが」

「いや、いい。いてくれ」

 男性はナツハゼにそう言い、それからじっとヒイロの顔を見つめる。

「君がヒイロか」

「……はい」

 得体の知れないむず痒さが生まれる。じっと見られていることが、変に居心地の悪い思いをさせた。ヒイロが冷や汗をかく頃になってようやく男性は落ち着いた声で話し始める。

「俺はアカツキという。反政府組織『アルカス』の首領だ」

 アルカス。

 その名を聞いて、ヒイロは目を見開いた。

 聞いたことがある。確か、十年ほど前から存在している組織のはずだ。なかなか尻尾が掴めない上に着実に政府の戦力を削っている、ある種特異な勢力ということで、スラムにも話が流れてきていた。一時の熱に浮かされ、勢いだけで支配者階級を攻撃をするような組織じゃない。何か確固たる目的があり、それを果たすために入念な準備をしている。どうやら彼らの目的は政権を奪うことそれ自体ではなく、もっと大きな、アルカディア政府の中枢に関わる重大な秘密を暴くことなのだ。誰かがまことしやかにそう語っていた。

「我々の目的はひとつ。政府の資金援助のもと進められている超能力開発を食い止めることだ」

 レジスタンスを統べる男ははっきりとそう言う。

 ヒイロの頭の中で、全てが繋がった。

 それか。重大な秘密というのは。

 確かに人体実験の事実や超能力の開発が世間に露呈すれば、しかもそれが政府の全面協力のもとに行われていると国民が知ればアルカディア政府は揺らぐ。もとから政府の腐敗は進んでいて、上層都市の優遇が激しく、下層都市の人間は負の感情を溜め込んでいた。人体実験の被験者は奴隷や身元不明の子どもなど、圧倒的に下層都市に住まう者が多い。つまり下層の人間を味方につけ、上層にいくつかの足がかりを作っておけば。

 盤上の戦況を引っ繰り返すことだって、不可能ではない。

 そのことに気づき、ヒイロは手のひらを握りしめた。その手の内側に汗がにじむ。

「ヒイロ。君を我が組織の一員として歓迎する」

 アカツキの声が、殺風景な部屋の中で大きく響いた。ところが、ヒイロが返事をしようとする前にその漆黒の瞳がきらりと光る。

「と、言いたいところだが」

 彼は腕を組み、椅子の背に体重を預ける。ぎし、と音がした。

「手放しに歓迎することはできない。君は人知を超えた力を操る、得体の知れない存在だ。組織の構成員の中でも、君に恐れを抱いている者がいる」

 はっきりとそう言われたとき、ヒイロはやっと気がついた。自分が感じていた居心地の悪さの正体が何なのかを。

 文字通り、歓迎されていない。アカツキはヒイロを見定めている。自分にとって利用価値があるか否か。

 それは今まで幾度と感じてきた視線だった。訓練場で、射撃場で、食堂で。柔らかな棘を纏った視線。結局のところヒイロはこの組織の人々にとっては余所者で、信用ならない人間なのだ。

 ひたひたと歩み寄る恐怖を感じて、ヒイロは強く拳を握った。

 化け物風情が。

 醜い声が、呪いの言葉が、耳の奥にこびりついて離れない。真っ暗闇の中で、灯りもなく指標となるものもなく、何処にも行くあてがない。そんな恐れが彼を支配していた。

「自分の価値は自分で示して貰おう」

 アカツキはそんな彼の様子に気づいてか気づかずか、変わらず冷徹な声で言った。

「君に仕事を任せる。君がこちらにどれほどの益をもたらすのか、目に見える形で確認したい」

「し、ごと……?」

 ヒイロは困惑して、上ずった声で繰り返す。そうだ、とアカツキは真剣な表情で頷いた。

「二区の裏通りに特殊な薬を開発している研究所がある。弾薬庫としても機能していて厄介極まりない。三週間後に作戦を決行する。潰して来い」

 ヒイロの耳には仕事の内容なんてまともに入って来なかった。

 アカツキはこともなげに言う。まるで、そこにある物を取れとでも言うかのような気軽さで。当たり前だ。この男は自分では動かない。人を使うだけなんだから、簡単だろう。

 ぎり、と拳を握り、ヒイロは彼を睨んだ。

「俺が化け物だから受け入れられないっていうのか。人間じゃないから。虫けら以下の存在価値しかないから」

 アカツキはぴくりと眉を寄せ、目を眇める。そして重厚な椅子から立ち上がり、机に手をついて話し始めた。

「化け物、か。少なくとも俺はその点では君を区別しない。だが口は災いの元だ。軽率な発言は謹んだ方がいい」

「……なんだよ、それ」

「目上の人間に対する口の利き方から教えた方がいいか」

 厳しい声で遮られ、ヒイロは思わず口をつぐむ。アカツキはそんな少年を見下ろし、冷たく硬い声で続けた。

「スオウという男が研究所にいただろう。あれはうちの構成員だ。あの研究所にスパイとして潜入させていた」

 頭を強く殴られたような衝撃が襲う。目を見開き、ヒイロは引き攣った息をこぼした。

 スオウ。その名を忘れたことは一度もない。あの絶望の底みたいな独房で、ヒイロという名を与えてくれた男の名前。彼はヒイロのひとつ前に入っていた被験体で、研究所では1013番と呼称されていた。研究所が襲撃される二ヶ月ほど前に、超能力の使い過ぎで死んでしまったけれど。

 まさかあの男が、ナツハゼと同じように潜入していたスパイだったなんて、彼は考えもしなかった。

「彼がなぜ死んだかわかるか」

 アカツキは相変わらず厳しい目でヒイロを見やり、厳格な教師のように問いかける。ヒイロは答えあぐねた。あまりに単純な問いは、すぐに答えへと導かれる。だけどだからこそ、その解答は間違っているのだと知らしめられた。スオウが死んだのは、単に力を使い過ぎたせいではない。

 アカツキがおもむろに、口を開く。

「それは、彼が君を」

「アカツキ!」

 その話をナツハゼの大声が遮った。彼にこんな大声が出せると思っていなかったヒイロはぎょっとしたが、アオイはちらりと視線を向けただけで特に驚きはしない。

「その話はやめろ」

 強い口調で言ってから、彼は俯いて、やめてくれ、と小さな声で言い直した。アカツキは呆れたようにため息をついてナツハゼを見やる。

「なぜ止める?」

「それは」

 勢いのまま言葉を紡ごうとして、ナツハゼは何を言うべきかはっきりと掴めていないことに気がついたらしい。気まずい沈黙の後、彼は呻くように、とにかく駄目だ、と要領を得ない返事をした。アカツキが乱暴なため息をつく。

「わかった、もういい」

 失望したのを隠すこともなく、彼は言った。項垂れたナツハゼは、悔しそうに表情を歪めて唇を噛んでいる。そんな彼を放って、アカツキはその場で突っ立っているアオイとヒイロに視線を向けた。

「ヒイロ、任務についての詳細は追って連絡する。君もアオイも、今日はもう帰っていい」

「はぁい」

 アオイが気の抜けた返事をして踵を返す。いつまでも立ち去ろうとしないヒイロを肘でつついて、彼女は目だけで行こう、と促した。彼は渋々それに従って部屋の入り口へと歩き出す。未練がましく振り返った先では、アカツキが厳しい表情でナツハゼに向かい合っていた。ナツハゼの表情は、ヒイロの位置からは伺えなかった。

 アオイが引いたドアが視界を遮って、二人の姿をさらっていく。

 ばたん、と音を立ててドアが閉まった。

 アオイとヒイロがいなくなった部屋の中で、二人は無言で睨み合う。先に口を開いたのはアカツキの方だった。

「これで話しやすくなっただろう」

「……お気遣い感謝します」

 堅苦しすぎるくらいの口調に、アカツキはぴくりと眉を寄せた。極端にへり下られることを嫌う彼に対する、ナツハゼのささやかな嫌がらせだった。いつもは彼だってアカツキの望む通りにできるだけ砕けた口調で話す。ナツハゼがこんな嫌がらせをしてしまうほど、分が悪い口論だということだ。彼自身も、これはただのエゴだと気づいていたが、どうしても譲れない。

 アカツキは深いため息をつき、前髪を乱暴に搔き上げる。

「妙なところで意固地になるのは変わらないな」

 そう言って、彼は鋭い光を湛えた目でナツハゼを見据えた。

「生い茂る茨を取り除けて、安全で痛みの伴わない道を歩かせることが優しさか?違うだろう」

「……だからって、下手に刺激して潰してしまったらどうするんです。ヒイロはスオウには心を開いていました。立ち直れなくなったら」

「俺が言わなくてもいつか誰かが言う。もしくは彼が自分自身で思い知るだろう。いずれ直面する問題だ」

 ナツハゼの言葉を遮って、アカツキははっきりと言い放った。ナツハゼがヒイロを庇って守ろうとした行為が、どれほど無駄なことかを。

 アカツキは少しだけ語調をゆるめ、目の前で項垂れる若い科学者に噛んで含めるように言い聞かせた。

「ナツハゼ、よく考えろ。あの少年はスオウの屍の上に立っている。そのことを自覚させなければ」

 漆黒の目に宿る強い意志が一瞬だけ揺らぐ。彼は決心したように目を瞑って続きを言った。

「あいつは犬死にしたことになる」

 その言い方はナツハゼにもアカツキ自身にも傷を負わせた。だけど事実は変わらない。その通りだった。

 気を取り直すかのように彼は咳払いをして、話を元に戻した。

「組織内で、ヒイロを追放しようとする動きがある。だが俺が下手に介入すると、こういうのは余計に拗れる。彼に自分で叩き潰してもらうしかない」

「それで、仕事を任せたのですか」

「戦力になることを示せば、組織に引き止める口実ができる。ナツハゼ、彼の怪我はあとどれほどで治る」

 ナツハゼはつかの間考えてから、すぐに答えた。

「多く見積もって一週間後には。常人より体力はなくとも、彼は確かに超能力者の性質を受け継いでいます。回復力は人並み以上です」

 アカツキは満足げに頷いて、椅子に座り直した。ぎっ、と革張りの椅子が小さく鳴く。彼は天井を仰ぎ、目の上に腕を置いて視界を塞いだ。重苦しいため息がその唇からもれる。様々なものを一身に背負い込んでいる者だからこその疲れが感じられた。

「……難しいな」

 彼はぽつりと呟いた。

 今の今まで口論していたナツハゼも、さすがに態度を軟化させる。諸々の書類が積み上げられた机に手を置き、目を伏せた。

「心配ないよ。僕たちの戦いもあと少しで終わりだ。”彼女”はすぐそこに、手を伸ばせば届きそうなところにいる」

 視界を覆ったはずの腕の下から、ちらりと漆黒の瞳が覗く。アカツキは、そうだな、と短い返事をした。




 ◇




「何なんだよ、あいつ」

 廊下の途中で、ついに我慢できなくなってヒイロは吐き棄てるように言った。浮かれた足取りで前を歩いていたアオイが頭だけを彼の方に向ける。

「アカツキのこと?」

「そうだよ。感じ悪い」

「あの人は、要領が悪いだけだよ。だからレジスタンスのリーダーなんて面倒くさいことやってる」

「庇うのかよ。お前だって顔殴られてるじゃないか」

 この言葉に彼女はぴたりと立ち止まり、今度は体ごと振り向いた。初めて会ったときの牢屋で見たような笑顔を浮かべている彼女に、ヒイロはわずかに怯む。彼女の青い瞳は、暗い廊下で猫の目のように光っていた。

「でもそれは、命令破ったあたしが悪い。あたしのために怒ってるんだ」

 威嚇するような鋭い笑顔はすぐに引っ込めて、彼女はいつも通り朗らかに微笑む。

「ね、悪く言わないでよ。あたしの父親みたいなものなんだ」

「……みたいなもの、って」

 彼女はにっこりと微笑んで、また前を向き直して歩き出す。たん、たん、と軽快に床を踏みながら、彼女は能天気な声で言った。

「あたしの両親、もういないの。元はレジスタンスの構成員だったんだけど、任務の途中で死んじゃった。あたしがまだ小さい頃に」

 彼女の後について行きながら、ヒイロは黙ってその背中を見つめる。

 妙に納得した。アオイは確かに明るくて快活だが、時折その瞳から底知れない暗い色を垣間見せた。傷つかずに生きてきた人間ではない。ナツハゼが上層の人間であるのを感じ取ることができるのと同様に、ヒイロは「こちら側」の人間も何となく察することができた。

「アカツキはずっと、それを自分のせいだって思ってる。こんな組織に、自分が巻き込んだからだって。あの人があたしの面倒を見てくれるのは、罪悪感があるからなんだよ」

 アオイがわずかに俯いたのが、後ろからでも見て取れた。その両肩が、今までよりもずっと細く頼りなく見える。

「だからいい加減に、解放してあげたいの」

 それなのに彼女の声は、しっかりと芯が通っていて力強かった。

「あたしが全部終わらせる。全ての元凶を、この手で断ち切る」

 彼女は、まるで自分自身を縛る呪いを吐き出すかのように、思い詰めた声で自分の意思を語っていた。ヒイロからはその目の色は見えないけれど、見えていなくて良かったと思った。見てしまったら、引きずり込まれそうな気がしたから。




 ◇




 腹の怪我はヒイロが思うよりも早く治った。アカツキと話した日から一週間と待たずに動けるようになり、訓練場で他の子どもに混じって訓練をするようになった。

 だんっ、と粗末なマットの上に投げられて、ヒイロは苦しげな呻き声をもらした。一切の容赦なしでヒイロを投げ飛ばしたハルトが、寝転がる彼の横にしゃがみ込んで、あっさりと断言する。

「お前、スタミナないな」

「るっせぇ……わかってるわ……」

「あいつら見てみ。体力だけならお前よりあるぜ」

 打ち付けた肩の痛みを堪えながら、ヒイロは手をついて何とか身を起こす。少し離れたところでは、サヨと、彼女と同い年くらいの少年とがゴム製の訓練用ナイフを持って中距離格闘術の訓練をしていた。その向こうにも、あの日会った子どもたちが数人、汗を流しながら俊敏に動いていた。

「ローテーションでかれこれ一時間。集中力もよく続いてる」

 ハルトは立ち上がってその様子を眺め、うんうんと満足そうに頷いている。床に這いつくばって荒い息を吐きながら、ヒイロはきっ、と彼を睨んだ。

「その前にクソ重たい重り背負って走り込みした上、腕立て、腹筋、スクワットって間髪入れずに結構な数こなした後だぞ!どこの軍隊だよ!」

「軍隊みたいなもんだよ」

 何を言ってるんだ、当たり前だろう、と言わんばかりの顔で言われて、ヒイロはぐっと詰まる。

「だーれが遊んでばっかいるって?」

 その上にやにやと笑いながらそんな風に言われてしまえば、返す言葉もなかった。

 だから腹いせに素早く立ち上がり、完全に油断していたと見えるハルトに奇襲をかけてやる。訓練用ナイフを彼の心臓めがけて突き出した。

 とった、と思った。

 だが次の瞬間にその認識が間違っていたことに気がつき、ヒイロは息を呑む。

 予想以上に早い反応が返ってきた。ぱしん、と腕を払われてナイフの軌道を逸らされる。かと思えばその腕を強く掴まれて、懐に入られた。あっという間に背後に回られて腕を捻り上げられ、ヒイロは喉の奥から悲鳴をもらしてナイフを取り落とす。そして間髪入れずに足を払われ、十秒とかからず再び床に転がされた。ハルトはヒイロの腕をひねって背中に押さえつけ、倒れこんだ彼の上に乗って完全に動きを封じてしまった。

「お前の動き、単純で予測しやすいんだよなぁ。あと、殺気は抑えたほうがいいぜ」

「……っんの、クソヤロ……!」

「あん?良いのか、そんなこと言って。ほらほら」

「あででででっ!!」

 押さえつけられた腕を捻り上げられて、悲鳴を上げながら床を叩く。するとハルトはぱっ、と手を離して、速やかにヒイロの上からどいてくれた。肩で息をしながら、ハルトを睨む。睨まれた彼は平気な顔をして、少し離れたところに置いてあった水を取りに行った。

「勘は悪くないし、反射神経も良い。ただ、余計な力が入ってるんだよ、お前は」

 言いながら、ハルトはヒイロの分のボトルを無造作に投げた。ゆるい放物線を描いて飛んできたそれを危なげなく受け止め、ヒイロは喉に冷えた水を流し込む。喉を潤しながら考えた。

 余計な力が入っているのは、自分でもわかっていた。研究所に入る前はこんなんじゃなかった。もっと身体が軽かったし、思う通りに動いてくれた気がする。ナツハゼが言っていたことを今更ながらに思い知った。体が弱っている。たった半年で、ずいぶんと体の勝手が違ってしまった。今は必死でそのズレを修正している最中なのだ。

「それにヒイロは、動きがいちいち大きすぎるな。スタミナがないなら別のところで補わないと」

「別のとこって、例えば」

「速さ」

 ハルトはすぐさまはっきりとした答えを提示する。

「お前の場合、長期戦に持ち込んだらアウト。できるだけ早く終わらせるべきだと思う。そのためにはまず、無駄な動きを削ることだな」

 ハルトの言うことを、ゆっくりと咀嚼して消化する。

 無駄な動きを削る。速さで勝負する。

 頭の片隅にメモをして、ヒイロはハルトにボトルを放った。彼は片手でそれをキャッチし、流れるような動作で床に置く。そしてにやりと笑った。

「よし。その辺踏まえてもういっちょ」

 ヒイロは立ち上がって、ナイフを構える。

 だが最初からそう上手くいくはずもなく、その日は結局投げられまくって終わった。




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