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肆───過去の繁華は如何に

久しぶりの投稿です、これからは週に一回、投稿はします

「とまあ一通り叩き込んだわけだが」



いつの間にか煙草を吸い始めたカイも、流石に疲れたようで、もともとのタレ目がより一層憂鬱に見えた。


「もう繁華街だ、そろそろ肩の力ぬいてもいいんじゃないか?」


言いながらバシバシ背中を叩いてくる、ガタイ相応の力を持っていて普通に痛い。


「そんなこと言われても、前とあまり変わらないじゃないですか。」


あたりを見回すと、確かに酒場街より幾分ましなのかもしれないけど、ガラの悪い人たちが徘徊している。

むしろ凄みのある人が増えたようだった。


高級スーツを難なく着こなし、サングラスが恐ろしく似合う顔には古傷が刻まれている。歩き方に芯が通っていて、鉄板を仕込んでいるかのように真っ直ぐな背筋。

彼らの組織図なんぞ知る由もないけど、上層なのだろ───

うわ!あまりジロジロ見すぎたせいか、睨まれてしまった。


「まったくそのとおりなんだがな.......どうしたよ、いきなり俺の後ろに近寄ってきて、惚れたか?」

「惚れるかっ!」


つい素がでた、僕の性趣向は極めて正常だ。

.......深く考えたことはないが。


「昔はもうちょい治安の良い都市だったんだけどねぇ。」

「昔は.....ですか?」

「ああ、ざっと十年ぐらい前、ルーンと共に魔石が最初に発見された時は、かな。」


魔石......?


「ほいっ」


カイが放り投げてきたそれは、黄ばんだノートだった。

そのメモに殴り書きで記されているのは。



魔石とは、魔力がこもった鉱石のことである。

その種類は数多あり、様々な効能を発揮する。

現在は二十種類以上も発見されており、中には易燃性の物もある。

石油や石炭の代用品になりつつある。




「新しい資源ってやつかな、革命的だったぜ。普通じゃこんなクソでかいビル立てねーだろ。」


魔石の商業性を見込んで、多くの大企業がこの街に押し寄せてきたらしい。

昔は見渡すと、民家がポツポツとしかない小さな漁村だったとか。

今は見上げると、遠近感すら狂ってしまいそうな摩天楼群。


「たぁーっ、なんか説明飽きてきた。」

「頑張ってください、そのあとどうなったんですか?」

「結局ここはただの発祥地、ルーンと魔石の発見は近隣の都市でも見つかるようになったとさ。」


ここを中心に、それらの現象は広がっているらしい。


「知っての通りここはルーンを使う人が多い。管理が疎かだったからか、力を持った違法組織に警察が完全に鎮めることなんてできやしない。」

「それで、治安が悪くなったんですか。」

「そういうこと、お偉いさんたちはさっきの三大貴族以外みんなトンズラしやがって、見事に無法地帯が完成ってわけ」


まだまだ鉱石は沢山あるんだがなぁ。

あくびをかみ殺しつつ、彼は気だるそうに話をまとめた。


「治安がどんだけ悪くても、住んでる人たちはいるさ。人間ってゴキブリみてーなもんだろ。でもさすがに夜になってふらふらする馬鹿はいねーな、お前みたいなのを除いて。」

「馬鹿で悪かったですね。」

「馬鹿ってのはいいことだぜ?風邪ひかねーしよ。」

「まだ酔ってるんですか?」


殴ってめぇ覚ましたろーかー。


「つーかお前、勉強不足にも程があるぜ?仮にも記者なんだからさ。」


.......急な派遣が決まったのに、不思議とこの街を調べようとは思わなかった。

自然と船にのり、いつの間にか酒場にいる。

雲の上にいるような、そんな気分、少しの夢心地。

そう、僕はまるで、この街を知っていたかのようだった。

記憶なんて、どこにもないのに。


カイの質問から逃げるように、僕は飛びっきり高いビルを、目いっぱいに見上げた。

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