貳───ルーン
「ルーン........噂は聴いた事がありますけど........本当にあるんですか?」
「ああ、実在するぜ。十年前この大陸に現れた、物質、動物、植物、そして人体に妙な印が突如浮かび上がったんだ.....そいつぁ俺達に力を与えた物だった。」
「力?」
歩いてるうちに段々と周りが静かになってきた、どうやら住民区らしい。
「抽象的なもんでわかりにくいかもしれんが........その印に力を込めれば、色んなことが出来ちまう。」
この町の造りはドーナツ状になっていて、中心にビルが多くある繁華街、さらに外には住民区、そして一番外側の東側は港と先程の乱れきった酒場街。西側に廃墟ビルやゴミ捨て場と言った作りである。
「身体にルーンがあるやつは直接込めればいいが、ない人もルーンが刻まれた鉱石や植物を加工してアクセサリーを着ければできる。大抵クソみてーな値段だけどな。その大半が筋力の増加とか、肉体の強化だが、希に特殊な能力を得る者もいるらしい。」
「そんな馬鹿な.........」
「はははッ、俺も最初はそう思ったさ。なんでも......昔の人が言う魔力とか言う奴が何かしらの原因によって異変を起こしたかららしいが。俺も詳しくは知らん。」
住民区を少し歩いていたら、少し高い丘があって、上に立派な西洋風の屋敷があった。繁華街に近いのに静かだ。上等地に違いない。
「おお.......凄い豪邸ですね、政府の要員かなにかですか?」
「そんなことも知らねーのかよ.......お前本当に記者か?」
カイがあまりにも呆れた顔をするので少しムッとしてしまった。
「.........まだまだ新米なんですぅ。」
多少語尾を強めに言ってみたり。
「そんなに怒んなって、悪かったよ。」
カイは肩をすくめて見せた。
僕とカイは高い塀に囲まれた屋敷を見上げた。
「ここはだな、三大貴族の一角、フェルト家の総本山さ。」