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第6話 逃げるのはもうやめる


 少女は青年の姿を思い浮かべながら綺麗な涙を流しました。その瞬間、大きな声が王座の間に響きました。


「やめろ! 彼女を傷つけるな!」


 それは、少女がずっと待ち望んでいた声でした。そして、どういうわけか、その声によって、少女の拘束はいとも簡単に解けたのです。少女は固く閉じていた目を恐る恐る開きました。そして、声がした先――王座の間の入口には、息を切らした青年が立っていたのでした。


「な……んで?」


 少女の綺麗な青い目からは、再び大粒の涙が流れました。青年はすぐさま少女のそばに駆け寄り、その涙をそっと拭っていきました。それこそ、少女と青年が初めて出会った時のように。


「ごめん、待たせて」


 青年は泣き止まない少女を困ったように見つめながら、そう言いました。そんな時、一人、王座から立ち上がり、震えている王子がか細い声で言いました。


「な、なんでここに? だって、だって――あの時確かに……」


 青年は少女と一緒に立ち上がり、王子を見つめ、言いました。


「久しぶりだね」


「あ、ああ、なんで生きて――?」


 王子は持っていたステッキを両手で握り締めながら、震えた声で言いました。その声に青年は悲しげに笑いました。


「確かに僕はあの時死んだ――いや、第一王子である僕という存在は死んだというべきかな……僕は森の住人達のおかげで生きながらえたんだ。そして、ずっと森の奥深くで暮らしていた。外の様子を一切知らず」


 青年は一度目を閉じた後、強い意志を込めた瞳で王子を見つめました。


「でも、もう、逃げるのはやめるよ」


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