休日&買い物
やっと続きがかけました。
就職のことでなかなか続きが書けなかったのですが、今日からまた書き始めます。
週に2回は更新できるようにがんばります。
6月16日の朝、今日のユウキの起床は昨日とは打って変わって穏やかなものだった。いつもならとっくに起こされる時間だったが、今日はユウキが起きるまでアリシアが起こしにくる気配はなかった。
「そろそろ起きるとするか」
テーブルの上に置かれてある、綺麗に畳まれた着替えを手に取り着替え終えると、アリシアが待っているだろう食堂に向かった。
「おはようございます」
食堂に入るといつも通りニコリと微笑んでユウキを出迎えるアリシア。ユウキは、起こしに来なかったアリシアに違和感を感じたが、黙っていつもの自分の席に座った。
「今日の朝食は、ベーコンエッグとトーストとサラダになります」
「ああ」
とおいしそうな朝ごはんがユウキの前に置かれていく。以前なら朝食を作るのが面倒で食べないことが多かったが、アリシアが来てからは朝、昼、晩とちゃんと食べている。
「今日は、なんで起こしに来なかったんだ?」
ユウキは正面に座って朝食を食べているアリシアに起きてから疑問に思っていたことを彼女に尋ねた。
「最近、依頼などで休みがなかったので今日は、ユウキ様に休んでもらおうと思い起こしませんでした」
「えっ?」
彼女から聞きなれない言葉が発せられた。お金の問題が解決した後も無理やり依頼をやらされたユウキからしたら何か裏があるのかと疑いたくなる。
「じゃー今日は依頼も何もない完全に休日ということか?」
「はい。しかし、護衛依頼に必要なものを買いに行ってはいかがでしょう?」
「まあ~確かに最近外に出る依頼も多かったせいで携帯食料も少なくなっているから、ちょうどいいか」
「私も買いたいものがございますので、同行してもよろしいですか?」
別に断る理由も特にないし、ユウキは彼女の同行を許可した。ユウキとて心の底から彼女を嫌っているわけではない。ただユウキの苦手なタイプな女性であるだけなのだ。
朝食を食べ終え、買い物に行く準備ができたところでユウキは、アリシアを伴って家をでた。
ここガルスの街の人口は、約15万人とマックイーン領では最大の街で、有名なのは、やはり温泉と湖とういう天然の観光資源に水運を利用した商業である。
今、ユウキ達が向かっている中央公園には大市が開かれていて、取れたての魚から装飾品や衣服など様々なものが売られている。
「久しぶりにここに来たな。相変わらず人が多い」
「そろそろ水遊び目当ての観光客も来始めていますから」
「それでまず、何を買いに行く?」
「まず、念のために一週間分の食料を買い付けに行こうかと思います」
先ほどまで後ろを歩いていたアリシアは、ユウキを先導するように歩き始めた。
こういった旅の準備はアリシアに任せた方がいいことを前の経験上知っているユウキは、黙って彼女についていく。
「ここに来たばかりなのにここに詳しいな」
「毎朝、大市の方に買い出しに出ていたので、食材関連でしたら大方把握しています」
2週間ばかりでこの広い中央広場の食材関連だけでも把握しているだけでも凄いことである。
アリシアの有能さに辟易していると目的地であろう魚屋についた。
「ここの魚屋は魚介類の乾物も売っているお店です」
「おおー! メイド服の姉ちゃんか。今日は何を買っていくんだ」
「ニジギルの干物を5枚と魚醤をこの小壺でください」
坊主に鉢巻という組み合わせの店主と顔見知りのようだ。
ちなみに、ニジギルの見た目は虹色に光る斑点模様が特徴の綺麗な魚でここガルスでは、一般的な魚である。
「じゃー美人な姉ちゃんにまけて銀貨1枚でどうだ」
「ふふ、ありがとうございます」
「いつも一人にくるのに珍しいな。ナンパでもされてるのか?」
店主はアリシアの後ろに立っているユウキに睨みを利かせながら聞いた。
アリシアから笑ったようなしぐさで口を押えながら、
「いいえ、この方は、私のご主人様です」
「へぇ~~~こいつが」
こういう反応が返ってくることは、ユウキには想定内だ。
ユウキのような覇気が見当たらない男がこの美人メイドの主様など釣り合わないと思うのが普通だろう。
「姉ちゃんも苦労してるんだな。これ持ってきな」
同情の視線をアリシアに向けながら店頭に並んでいる、魚を一匹アリシアに差し出した。
「ありがとうございます。頂きます」
アリシアは笑顔を浮かべながら魚を受け取る。
「では、今日はこれで失礼します」
「また、来いよ。姉ちゃんならこれからも良心価格で売ってやるよ」
「はい、ありがとうございます」
本気でアリシアに同情している店主は、不機嫌そうな顔で出店の前を去ろうと歩き出したユウキに、
「あんちゃんは、この姉ちゃんにあまし苦労かけるなよ~」
「大きなお世話だーーー!」
先ほどから我慢していた、ユウキの大声が大市に響いた。
魚屋を後にした後は、何件か日持ちがする食料を買い、昼食を食べたあと、中央通りにある雑貨屋を目指している。
今、ユウキは不機嫌な顔を全く隠していなかった。
「ユウキ様、どうしたのですか?」
「『どうしたのですか?』だと……行く先々ですべて似たような反応をされて機嫌がいいわけないだろ!」
「ですが、おかげで値引きやおまけなどして頂きました」
「それはそうだが!! アリシア、こうなると予測して俺を連れていったんじゃないだろうな」
「いいえ、たまたまです」
彼女はユウキの目を見て即答したが、それが妙に胡散臭い。
ユウキはさらに追及しようとしたが雑貨屋についてしまい話を中断するしかなかった。
雑貨屋『マッケイ』、店の名にある通りマッケイ商会が立てた雑貨屋で、本店は王都ラハノキアにあるが、マックイーン家の御用達の商会でもあることでこの街では有名である。
二階だてのこの店は、冒険者が使う道具から一般庶民が使う道具まで、多種多様な物が置かれていて、貴族街には高級店も出店している。
「二階に行きましょう」
「ああ、確か二階に冒険者用の道具が置いてあったな」
ユウキもここガルスに来てから何度か足を運んだことがあるのでここがなかなかいい品揃えであることは知っている。
二階には、お客が数人いるだけで今は、空いている時間らしい。
「一応、火の魔石と光の魔石を少し買っておきましょう」
「そうだな。他になにか足りてない物はないか?」
「縄を買われてはいかがでしょう」
「なぜ縄なんだ?」
「モンスターなどを捕まえた時のためにです」
「整備された街道に捕まえる程のモンスターが出るとは思わないが」
整備された街道には、定期的に危険な魔獣やモンスターがいないか兵が巡回しているため、危険な魔獣やモンスターに会うことは殆どない。
「今回の依頼は、必ず成功させなければいけないのですから。ユウキ様の世界の言葉で調度いい言い回しがあります。『備えあれば、憂いなし』です」
ドヤ顔で言うアリシアにイラッとしたユウキだが、つっこむと疲れるので、『そうだな』っと適当に流した。
しばらく、店内で何か面白いものがないかと見回っていると背の小さい女性店員に声をかけられた。
「何かお探しのものは、ございますか」
「いえ、何か珍しいものがないかと店内を見ていたんですよ」
「珍しいものですか……」
考える素振りを見せたあと、女性店員は一度ユウキの顔を見ると、
「今月入荷したばかりの物があるのですが、ご覧になられますか?」
「それでは、是非」
「少々お待ちください」
裏に消えた女性店員をしばらく待っていると、長方形の箱を持った女性店員が帰ってきて、カウンターにその箱を置いて蓋を開けてユウキに中身を見せた。
「お待たせしました。こちらは世にも珍しい魔法がなくても遠くを見ることができる道具です」
中身が見えた瞬間正直ユウキには、この道具がなんの道具なのか分かってしまった。そして、誰が作ったのかも検討がついている。
ユウキが黙っていると疑っていると思ったのか店員が『実勢に使ってみて下さい』と箱から中身取り出し、知っていたが丁寧に使い方まで説明してくれた。
「これは、勇者セイジ様が発明した道具で望遠鏡といいます。今セイジ様が治める領地でしか生産できない珍しい品なんです」
「なるほど、確かに遠くまで良く見えます」
どれ程の出来栄えなのか確かめてみたが、予想以上に他出来栄えがよく声のトーンが上がった。
「ちなみに値段の方は?」
「今月入荷ばかりの商品なのでまだ値段は決めてないのですが……あんまり今はまだ出回っていない品なので金貨一枚銀貨四○枚でしょうか」
「少し高くないですか?」
「なにぶん数があまり出回ってないので……頑張って金貨1枚銀貨三○枚でしょうか」
ユウキは、箱から出した時から装飾のデザインが気に入っていた。
今や小遣い制になっているユウキの懐事情は、あまり良くはないがそのくらいならギリギリ出せるぐらいのお金はもっている。
「ではその「ユウキ様はA級冒険者で、この道具の有効性を知り合いの冒険者に広めることができます。もう少しお値段のお安くできませんか?」
ユウキが、その値段でという瞬間に横から気配もなくアリシアが急に出てきたので女性店員が驚いて後ろに倒れそうになった。
「大丈夫ですか」
「申し訳ありません。急に話しかけられたものでビックリしてしまいましたが、先ほどの話は本当ですか?」
店員は気を取り直して、ユウキに先ほどのアリシアの発言の確認をした。
こういうのは、あまり気乗りしないが店員にギルドカードを見せた。
「ありがとうございます。では、金貨一枚と銀貨一○枚でどうでしょうか」
「ユウキ様この街で数少ない高ランクの冒険者なので、ここの冒険者ギルドのギルドマスターと親しい関係になります。ですから、ギルドの購買所についてに打診ぐらいはできます」
ユウキの買い物なのに、もうユウキが値段交渉に入る余地が無くなっていることにユウキは辟易していた。
さらに、まだ、まけてもらおうとしているアリシアと泣きそうな顔で交渉している女性店員を見て頭を抱えたくなったのであった。
「では、グス……ちょうど金貨一枚確かに」
結局、魔石も合わせて金貨一枚になった。
金貨一枚になっても値切ろうとしたのでさすがにユウキが間に入ってアリシアをとめ、金貨一枚で交渉は終了した。
ちなみにユウキが間に入った瞬間、女性店員は安心したのか勢いよく泣いてしまってそれが収まるまで事態が収拾しなかったのは言うまでもない。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
なぜか、アリシアが珍しく不機嫌だっため、空気を読んでユウキが頭を下げている。
「こちらこそ申し訳ありませんでした。グス」
「またのお越しをお待ちしております。グス」
わざわざ店の出入り口まで送ってくれているだが、完全にこちらが悪いようにみえるので早くこの場所を離れたいユウキは、すぐに店の前から離れた。
「で、どうしてあんなになるまで値切った? 昼間はあんな値切り方しなかっただろ」
「私が以前あそこを立ち寄った時にユウキ様が今持っている望遠鏡は店頭にありました。その時の値段は、銀貨六○枚つまり、金貨一枚銀貨二○枚でした」
と不機嫌な声色でユウキの質問にこたえる。
ここまで言えば、ユウキにもわかった。つまり、ユウキはあの女性店員に騙されそうになったのだ。
「だが、物には限度というものがあるだろうが。おかげもうあの店には行きづらくなったじゃないか」
騙されそうになったこと苛立ちを感じながらもユウキは、アリシアのとった行動を責めずにはいられなかった。
アリシアには、昔からこういうところがあったのは知っていた。
「ユウキ様に恥をかかせてしまい申し訳ありませんでした」
アリシアは、立ち止まって深く頭をさげた。アリシア自身も自分の行動がまずかったは理解していた。
ユウキもこう素直に頭を下げられると怒るに怒れないのでため息をつくしかなくなる。
「わかってるならいい。目立つから頭をあげろ」
「はい」
返事をする彼女の声は、珍しくミスをして落ち込んでいるようだった。
「次やらなければ、それでいい」
結局こんなことしか言えないユウキは、アリシアに背を向けて歩きだす。
「ありがとうございます」
アリシアは、もう一度深く頭をさげてから、主であるユウキの後を追うのだった。
この後、ユウキは屋敷に帰り、せっかく休みだったのに気疲れして全く休めなかったことに気づきアリシアと買い物に出たことを後悔したのだった。
魔石、魔結晶
※魔石や魔結晶を使えば一般人でも魔法を使うことは可能である。一般的な魔動ランプから強力な魔法武器まで多種多様な物がある