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第十話:ご、ご乱心でござる〜!

更新遅れました。すみません(>_<)




「せい!」


気合いの入った掛け声とともに、八重さんは俺に突きをしてきた。


「うわッ!」


それを情けない声を出しながらぎりぎり避け、バックステップを使って八重さんと距離を取った。


俺は今、八重さんと組み手をしている。何故組み手をしているのかというと、八重さんが俺の強さを知りたいからだそうだ。身体を動かすにはちょうど良いと思って了承したのがいけなかった。


八重さんは結構本気めに組み手をしてきたのである。まぁ組み手というのは全力でやるのが礼儀なのだからそれはわかる。だが八重さんは神さまなのだ。それ相応のスペックは持っているはずである。現時点では八重さんの攻撃を全て避けているが、いつかは一発もらうだろう。多分、上手くガードが出来てもヒビは入るだろうな…。そんなことを考えつつ、間合いに入ってきた八重さんの蹴りを避けた。それは完璧だったはずなのだが髪の毛が数本持っていかれた。………………訂正、ヒビだけじゃあ済まなくなってきた。おそらく一撃で俺は死ぬだろうな…。


「ちょ、ちょっと八重さん!今の攻撃は洒落になってませんよ!?なんかカマイタチっぽいのが発生してたんですが!?」


「ガァ!」


必死の俺の叫びをまったく無視しつつ八重さんはまた攻撃をしてきた。


「うわぁー!聞く耳持ってねー!ってか野性の血が目覚めてるー!」


どうやら組み手に本気になりすぎて理性がとんでしまったようだ。ビーストモード化した八重さんは俺に休憩させる暇も与えず繰り返し攻撃してきた。


「ガッ!」


やけに伸びた爪で突きをしてきたのを


「ほぁっ!」


涙目になりながら避けて


「グルゥ!」


二メートル近いジャンプをしながら飛び掛かってきたのを


「死ぬ!絶対死ぬッ!」


転がりながら回避した。運動に向いた服装だったので汚れても気にならなかったが、無理な回避ばっかりしたので服がボロボロになってしまった。…まぁ死ぬよりかは数段良いだろう。


そろそろ八重さんを正気に戻さないといかないな…。どうすればいいだろうか?


「まずは八重さんの理性に呼びかけてみるか」


そう決心した俺はそれをしてみることにした。八重さんと近ず遠からずの距離をとり、大きく息を吸い込んで


「あの頃の八重さんカムバ〜〜ック!」


叫んでみた。


「ッ?!」


ビースト八重さんは声の大きさにびっくりしただけだった。


「グァ!」


そしてかなり怒った様子で殴りかかってきた。


「いらっしゃいビースト八重さんッ!?」


自分でも意味不明な叫びをしながら必死にその一撃を避けた。俺に当たらなかったビースト八重さんの拳は地面に刺さった。………刺さった!?なんか肘近くまでめり込んでるし、何故か湯気も出てるし…。


「ぐ?」


肘近くまで腕がめり込んだためか、抜けれなくてビースト八重さんが困ってる。


「こ、これはチャンスでは!?」


きっと神さまが俺を哀れんでくれたのに違いない、戦線離脱あるのみッ!


ダッ!楠木は逃げたした。


シュッ!しかし、八重さんに退路を塞がれた。


「な、なんでですとー!?今のチャンスって神さまがくれたんじゃ………………しまったー!!八重さんも神さまだったー(泣)!」


先回りをした八重さんは未だに野性心いっぱいのビースト八重さんだった。


「もう煮るなり焼くなり好きにして下さいよ(泣)!」


もう逃げられないし、組み手を続けても死んでしまうと悟った俺はその場に目をつむって座りこんだ。


しばらく目を閉じていると


「ぐる?」


ビースト八重さんが心なしか心配そうな声を出しながら近づいてくる気配がした。


なんで攻撃をしてこないのだろうと思った俺は目を開けてみることにした。


すると目の前に犬耳がシュンとしていて、心配そうに俺を見ているビースト八重さんがいてびっくりしてしまった。しばらくお互い見つめ合ってると


「ガァ♪」


ビースト八重さんが抱き着いてきた。今まで元気がなかった犬耳もピンッと元気に立ち、しっぽも嬉しいのかバタバタと左右に揺れている。


「な、なんで??」


俺がパニックに陥っているのに構わずビースト八重さんは今度は顔をペロペロしてきた。


「ちょ、それはまずいですよ!?」


このままだと俺もビーストモードになってしまうので、すぐに八重さんを引き離した。ちょっと悲しそうな顔をしないで!こっちまで悲しくなる(泣)!


どうすればいいのかわからなかったが、一応頭を撫でてみることにした。


「ウォン♪」


やっぱり、犬の神さまだけあって頭を撫でられるのは気持ち良いのだろう、目を細めながらうけている。


「………(もしかしてこのままいけば飼い馴らせるんでは!?)」


今日を生き延びるため、俺はビーストモードの八重さんを飼い馴らすことにした。仲良くなっとけば俺のことを殺そう(八重さんからしてみれば、ただじゃれついているだけだろうが)とは思わないだろう。


飼い馴らすことにしたは良いがどんなことをすれば懐くのだろうか…。


「やっぱり餌付けか?」


未だに八重さんの頭を撫でつつそんなことを考えたが


「肝心の餌がないな…」


断念するしかなかった。




そんなこんなでずいぶんな時間が経った。もちろん、今でも八重さんは野性味あふれてますよ?


あれから他に良い考えが浮かばなかったので、ずっと頭を撫でることしか出来なかった。そのせいか腕が痛い…。明日は筋肉痛だなぁ〜と思いつつ八重さんの方を見ると


「すぅ………」


幸せそうな表情で寝ていた。だからさっきから静かだったのか…。


「にしてもいつになったらもとの八重さんに戻るのかねー」


かれこれ4時間近くはビーストな状態だということになる。


「起きたら普通に戻ってくれてるかな…」


可能性としては低いだろうが戻ってほしいと切に願う。半ば俺に抱き着くような形ですやすやと寝ている八重さんをどうしようかと思い悩んでいると


「あらあら〜、お邪魔でしたか〜?」


突然鈴さんが現れた。さすがの俺もびっくりしてしまい、すぐには返事が出来なかった。一瞬間を置いてから


「す、鈴さん〜…。助けて下さい…」


救助を要請した。


「どうしたんですか〜?」


「組み手をしていたら八重さんが熱くなり過ぎて野性に目覚めてしまったんですよ。それで………」


八重さんを起こしたら後々面倒なので、なるべく小さい声でこれまでの経緯を話した。


これまでのいきさつを俺から聞いた鈴さんは


「八重ちゃんは熱くなりすぎちゃうと犬としての血が目覚めちゃうんですよ〜。それより楠木さん、怪我とかはしてないですか〜?」


心配そうに所々破れた服に目をやった。


「ちょっと擦りむいたぐらいですから大丈夫ですよ」


一応破れた箇所をぺたぺたと触ったが腫れたり、折れたりしてはいなかったのでそう返事をした。


「よかったです〜♪」


それに安心したのか鈴さんは心の底から喜んでくれた。その表情を見ただけで、何故か俺はうれしくなってしまったが


「でもよく生き延びれましたね〜」


この一言でまたあの死闘が甦ってきた。正直、トラウマになりそうだ。


「え、えぇ。一発もらったら死んでましたよ…」


自分でも八重さんの怒涛の攻撃を全て避けられたのには驚きだ。


「そういえば、鈴さんはどうしてここに?」


まだ夕飯の時間ではないし、お昼ご飯は家を出発する前に食べてきた。


「ちょっと嫌な予感がしたんですよ〜。でも杞憂だったみたいです〜♪」


「そ、そうですか。」


………さすが動物の血が入ってるだけに勘は鋭いな。まぁ未遂で終わったんだが…。


「ところで、八重さんはいつになったらもとに戻るんですか?」


なにかすごいアイテムが必要だったら嫌だな〜、と考えつつ尋ねると


「時間が経てば勝手に戻りますよ〜」


なんとも普通な対処法だったので拍子抜けした。


「多分、目が覚めたらいつもの八重ちゃんですよ〜♪」


鈴さんが言うのだからそうなのだろう。しかし肝心の八重さんは熟睡中だ。まぁこんなに日差しが気持ち良いのだからしかたないか…。そんなことを考えていると俺も瞼が重くなってきた。や、やばい、すごく眠い…。


「鈴さん…ちょっと疲れちゃったんで少し眠りますねー………」


あくびを交えつつ鈴さんにそう言うと俺は寝てしまうのだった。


しばらく俺を見ていた鈴さんは


「じゃあ私も寝ちゃいますか〜!」


いそいそと俺の横によっ掛かる形で眠りに入った。


俺が目覚めた時に驚いたのは言うまでもない。ちなみに八重さんは起きるともとに戻っていた。………………本当によかった(泣)






しよーとすとーりー

『楠木が起きる30分前』




「ん〜♪楠木さ〜ん」


「………おい、鈴!楠木にほお擦りするな!」


「い、いいじゃないですか〜!」


「そんなことするなら私にも考えがあるぞ?」


「何をするんですか〜?」


「こうするんだッ!」


「あぁ〜!楠木さんにギューってしないで下さい〜!」


「じゃあ鈴がほお擦りするのを止めたらこっちも止めてやる」


「そ、それは〜………」


「無理だろう?」


「………は、はい〜」


「ここはお互い目をつぶって、やりたいことに集中しないか?」


「………はい〜!」


「起こさないように気をつけてやるぞ?」


「わかりました〜♪」

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