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第二話 Aパート

 遅れてしまい、申し訳ありません!


 それと、新キャラ登場です。



 いつものように私は〈境界〉に入り、幽魔を討滅していた。


 両手の杭を左右から近づく幽魔に突き立て、間髪入れずに新たな杭を取り出す。


 ジャンプして四本足の獣型幽魔の上をとり、馬乗りの要領で全体重をかけて杭を突き刺す。結構深く刺してしまったので、杭の回収を諦めて素早くその幽魔の背中を蹴って離脱する。


 腕を触手にした別の幽魔が、触手を鞭のように伸ばして襲い掛かって来る。初撃をジャンプで躱し、カウンター気味に新たな杭を投擲する。しかし、その杭は鞭で弾き飛ばされる。


「…うそっ!?」


 まさか弾かれるとは。驚いた私に、一瞬の隙が出来てしまう。あわてて新しい杭を取り出そうとしたものの、既に手遅れだった。鞭状に変化した幽魔の腕が、私に迫る。私は杭を振り回して抵抗したものの、あっさりとその鞭に捕まってしまう。


「き、きゃあっ!?」


「こ、琴音!」


 縛られてしまい、動けない。この幽魔の表面は、スライムみたいにぶにょぶにょしていた。……これはやはり、鞭というより触手だ。RPG風に言うなら触手モンスター。しかもこのぶにょぶにょした触手の表面には、ヌメヌメヌルヌルとした粘液が付いている。


「うわっ、気持ち悪っ!」


 鳥肌が立ってきた。私は上空に杭を一本出現させ、触手を上空から狙撃(?)する。無事切断された触手を引きずり(未だに身体に巻き付いている)、私はそいつと距離をとる。少し苦労して身体に巻き付いた触手の残骸を外す。うぇー、気持ち悪い。ぬるぬるがとれない。しょうがないので、身体の周りに冷気を纏わせて粘液を凍らせ、ぺりぺりと肌から剥がす。私の属性は氷、これぐらいの簡易魔術はお手のものだ。ただ、服は粘液が染み込んでいたので諦めた。


 やだなあ、透けてないかな、大丈夫かな?まあ、見ている人もいないし平気か。


 大体槍ぐらいの長さの杭(約2メートル)を取り出し、先程の触手モンスターに突進しつつその杭を突き出す。繰り出される触手を躱しつつ、徐々に近づく。触手の動きはランダムで、軌道の予測が行い辛い。私は紙一重でなんとか躱していく。そして、杭を突き出す。しかし……。


「……えっ!?」


 杭の切っ先は粘液の表面を滑り、刺さらない。とりあえず後方にジャンプして距離をとる。


 困った。まさか杭が刺さらないとは。困った時は……。私は右手の掌を相手に向け、詠唱〈コール〉して魔力を放つ。


「氷華零洛〈フリージア〉!」


 私の掌から先程の数倍の威力を持つ冷気が吹き荒れる。その冷気は触手モンスターの表面の粘膜どころか全体を凍り付かせ、巨大な氷の薔薇の花を形作る。そして私がパチンと指を鳴らすと、薔薇の花は中に封じ込められた触手モンスターもろとも粉々に砕け散った。


 ふう。周りにいた幽魔はあらかた居なくなっている。逃げたのかな?


「ううん、違う……。私以外の誰かに倒されてる……?」


 周りには幽魔が死ぬときに残る灰が、山になって残っている。誰かに殺された証拠だ。でも、いったい誰が……?


 ふと気配を感じて後ろを振り向いた。私の目に映ったのは、私の後ろで私目がけて棍棒を振り下ろそうとする、幽魔の姿だった。


 軽いパニックを起こした頭は咄嗟の判断が出来ず、私は為す術もなく呆然と立ち尽くす。


 あーあ、私、死んじゃうのかな……?


 ロクに働かない頭で、私はぼんやりとそんなことを思った。すべてがスローモーションになって見えた。


 棍棒が、少しずつゆっくりと私の頭に近付いてくる。そして、私は見た。その幽魔の胴体が、黒紫色の剣で両断されるところを。


「……え?」


 思わず間抜けな声を上げてしまった。助かったのだということを私が理解するまでに、5秒程度の時間を必要とした。目の前に平然と立っているのは黒紫色の鎧を身に纏った人だった。その鎧は顔も覆っているため、性別は分からない。


「……怪我はないか?」


 ぶっきらぼうそうに彼が言った。声で男の人だと分かった。


「あ、はい。ありがとうございました」


 何となく敬語になってしまった。


「クリス!」


 シロがおそらく彼のパートナーであろう黒猫に声をかけた。


「シロ、知り合いなの?」


「うん、まあ、ね……」


 どことなく言いにくそうにシロが言った。まあ、シロにも色々事情はあるのだろう。クリスという名前

らしい黒猫とシロは、私の知らない言語で話し始めてしまった。手持ち無沙汰になった私は、目の前の命の恩人に話を振ってみることにした。


「えっと……あなたの名前は何ですか?」


「……〈黒紫の騎士〉とか〈宵闇の悪夢〉と呼ばれている。あと、敬語は使わなくていい」


「あ、はい…。私は、」


「〈白の杭姫〉、だろう?」


「どうしてそれを……?」


「……俺のパートナーのクリスは噂好きな奴でな。クリスから聞いた情報だ。君は知らないかもしれないが、君は結構有名らしいぞ?」


「え?そうなんですか?」


「ああ。ちなみに別パターンで〈銀氷の杭姫〉〈白雪姫(スノーホワイト)〉って言うのもあったな」


「へぇ……。あなたの年齢は何歳ぐらい?」


「……君と大体同じぐらい、と言っておこう」


「……うー、ぽろっと情報をこぼしてくれないかと期待したんだけどなあ……」


「残念だったな。そろそろ俺は戻る。クリス、そろそろ還るぞ」


「分かりましたわ」


 黒紫の騎士と名乗った彼は、クリスちゃんを呼ぶと私に言った。


「じゃあな、柚木。また明日」


「うん、またね。……って、ちょっと待って!」


「あ?どうした?」


「な・ん・で!私の名前を知ってるのよ!?」


「……やべ」


 向こうにとっては失敗だったらしい。よし、ここで畳み掛けるチャンス!


「さあ、答えてもらうわよ?」


「……知っていたからだな」


「そんなこと分かるわよ!何で私が柚木琴音だって分かったの!?」


「……いや、何でと言われても。顔丸見えだし」


「うっ」


「そもそもお前、今自分でフルネーム言ってたぞ。いいのか?」


「ううっ」


 し、しまったぁっ!!


「つー事で、じゃあな。また何時か」


 そう言うと彼は背中を向けて歩きだした。その背中を私は呼び止めた。


「最後に一ついい?」


「何だ?」


 振り返らず、背中が問い返す。私はもう一度さっきの質問を繰り返す。


「あなたは、誰?」


 彼は今度は異なる答えを返した。


「君も知ってる男さ、琴音」


「よ、呼び捨てにするなぁっ!」


 馴れ馴れしい。でも、不思議とそんなに不快じゃなかった。


 私の知り合いだという彼は、右手をひらひらと振りながらこちらを見る事なく歩き去っていった。


「琴音、僕達も戻ろう?」


「そうね」


 変身を解いてシロと一緒に〈境界〉を出る。


 しばらくの沈黙の後に私が先に口を開いた。


「…男の魔法少女って、いるのね……」


「うーん、男である時点で魔法少女じゃあないと思うけどね…。まあ兎に角、いるよ。ただ、魔法少女とは呼ばずに〈魔装騎士〉と言うんだけどね」


「へぇー、そうなんだ」


 どうでもいいけれど魔法少女と聞くと日曜日の朝を思い出す。魔装騎士のほうが格好良さげな響きだ。


「前に、魔法少女は世界中にいるって話したよね?」


「うん」


 いつからか、世界各地で〈境界〉が観測されるようになった。それに呼応して、シロなどのような天界から来た聖霊もこの世界に渡来し、少女たちと契約〈コントラクト〉して魔法少女のパートナーになり、戦っているのだという。


 天界は昔から魔界と戦っていたらしい。その程度しか私も知らない。


「魔装騎士も同じさ。世界中に居て、魔界からの侵略者と戦ってる。ただ、魔法少女に比べて数は少ないんだけどね」


「なるほど、つまり魔装騎士は魔法少女の男版ってことね?」


「まあ、そういう事なんだろうね」


 物凄い微妙な顔でシロが肯定した。魔法少女みたいな格好をしたむさ苦しそうな男の人でも想像したのだろうか?


「うぷ」


 想像したら私も気分が悪くなってきた。込み上げる嘔吐感を気合いで止めつつ、


「まあ、取り敢えず分かったわ」


 少々認識がアレな気もするけど、大体は合ってるはずだ。


 なぜかは分からないけれど今、ピンクのコスチュームを着てチェーンソーを持った男の人のビジュアルが脳裏に浮かんだ。何故だろう?


 よく分からないけど、何かの電波を私は受信してしまったらしい。


「これは何の伏線でもありません」


「え?いきなりどうしたの、シロ?」


「いや、なんか言わなきゃいけないような気がしたんだ、無意識のうちに…」


「…?変なシロ」




    †‡†




 翌朝。


「琴音、朝だよ」


「まだ夜だよ〜」


「いや、朝だから!7:00だから!」


「夜の?」


「朝のだよ!大体、夜の7:00なんて、いつも琴音起きてるじゃないか!」


「あと一時間…」


「ナチュラルにとんでもない台詞を吐かないで!また遅刻するよ!」


「遅刻が何だってのよ〜、遅刻したって死にやしないわよ〜」


「ダメ台詞を吐くな!いい加減起きろ!」


「うぅ…、シロがいじめる…」


「人聞きの悪い事言うな!ああもう、こうしてやる!」


 言うと、シロが布団の中に潜り込んできて、


「うきゃあっ!ひ、ひゃぁん、そ、そこダメぇっ!ひゃうぅっ!」


「それっ!」


「ら、らめぇっ!ひぁっ!?」


「…どうする、起きる?」


「わ、分かったから、ひゃん! も、もう、や、止め…ひぅっ!」


「起・き・る・?」


「あ、あひぃ、お、起きる起きる、起きる、ってばぁ、っ!はぁはぁはぁ……」


 ようやくシロが解放してくれた。


「はふぅ……」


「…琴音って本当、くすぐりに弱いよね……」


 しみじみとシロが言う。しみじみするな。こっちはそれどころじゃなかったのに。


「っと、こんな事してる場合じゃ無いじゃない」


 そろそろ危険な時間だ。シロを布団の中に突っ込んで視界を塞いでから手早く着替えを済ませる。今日は普通に朝食を食べてから行けそうだ。


 我が家は両親共働きで、父さんはなかなか家に帰ってこない。母さんは朝早くに仕事に出掛けてしまう。したがって、私は一人暮らしに近い生活を送っている。


 特筆することもなく、普通に家を出て普通に学校に着いた。いや、普通なのが一番だけれど。普通バンザイ、みたいな。




    †‡†




 帰り道。


 遠くに昨日知り合った朱乃さんのしゃがんでいる姿を見つけたので、駆け寄ってみる。


 近寄ってみると、朱乃さんは小さな四本足の動物と会話しているようだった。


 …こういう時って、下手に声掛けられないよね……。人によりけりではあるけれど、ああいうシーンを人に見られると恥ずかしさで悶死しそうになるし。


 等と一人葛藤していると、


「琴音、カバン開けて!」


 カバンの中に隠れているシロから声がした。


「いきなりどうしたの、シロ?」


 シロは


「とにかく早く!」


 と私を急かした。私がカバンを開けると、シロはカバンからぴょこんと飛び出して、とてとてと朱乃さんの方に歩いていく。


「ちょ、ちょっとシロ!」


 あわててシロの後を追い掛ける。なんとか捕まえた。


「まったく、唐突に何なの?」


「あの娘と会話しているあの赤い馬みたいな奴、僕の仲間なんだ」


 何ですと。


「じゃあ、朱乃さんって、」


「魔法少女、の可能性もあるね」


「可能性って?」


「まだ契約〈コントラクト〉してないかもしれないだろ?」


「…なるほどね」


 そっか。確かにそれも有り得るのか。


「で、シロはどうするつもり?」


「どうなるか見届けたい、と言いたかったんだけどね」


「だけど?」


「どうやらそれは無理みたいだ」


「え?」


「出番だよ、琴音。…門〈ゲート〉が、境界への門が開いた」


 その一言に、一気に私の緊張が高まる。


「場所は?」


「ここから大体200m前方!」


「え、それって……」


 朱乃さんがいる辺りでは。


「…うん、あの娘がいる辺りだね」


「……どうしよう?」


 そうして迷っていると、朱乃さんがおもむろに立ち上がり、〈境界〉への門〈ゲート〉に入っていった。


 シロと一瞬顔を見合わせてから、私たちもこっそりとその後を追い、〈境界〉へと侵入した。乗り掛かった船だしね。危険だと思ったら助けられるし。

 Bパートでは新たな魔法少女が登場します!

 …しかし、魔法少女達のコスチュームのデザインの設定は大体決まってるのに、今回の本名不明な彼のデザインは未定という(笑)

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