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第一話 Aパート

 某魔法少女アニメに触発されて書いた作品でした。魔法少女達の細かな設定は山のように作ったのに、肝心の文章は殆ど書かなかった事を覚えています。つまりストックが皆無。私にとってはまあ、いつもの事ですが。気長に見てやってくださいな。


 私こと柚木琴音は、属に言う〈魔法少女〉である。




 この世界は実は人知れず隣の世界〈魔界〉に侵略を受けているのだという。最初は私は当然それを笑い飛ばした。そんなバカな話があるものか、と。しかし、私自身がそれを目の当たりにして、私は魔法少女に成る事を決意する。


 これはそんな私の物語…。




    †‡†




「ねぇ琴音、起きてよ、遅刻するよ?」


 ベッドで安眠というか惰眠を貪る私を、不粋な声が邪魔する。声変わり前の少年のような、澄んだ声。聞いていて気持ちは良いのだけれど、それはあくまで起きているときの話。寝ているときに聞いても、ただ鬱陶しいだけだ。


「う、ん……。あと5分、待って……」


「全くもう。そんな事言ってていいの?もう7時半過ぎたよ?」


 その声に一気に意識が覚醒する。


「うそッ!?」


 枕元の時計を確認してみる。現在7時35分。


「…………ち、」


「ち?」


「遅刻だーっ!!」


 慌てて私は布団を跳ね退け、ベッドから降りる。


「だから言ったのに……」


「着替えるからシロは部屋から出ていって!」


 私はふよふよ浮いているそいつに枕を投げ付け、ドアの向こう側へとぶっ飛ばした。


 今吹っ飛んでいったのはシロといって、私を魔法少女にした張本人だ。人じゃないけど。先程から私と話していたのはこの子だ。姿はキツネとフェレットとネコを足して3で割って、羽根を生やした感じ。白い毛並みで、シロという名前はこれに由来している。余談だけど、この子を抱いて寝ると、暖かくてふかふかで気持ちいい。


 回想しているうちに着替えは終了した。


「作者め、こういうサービスシーン書くの苦手だから逃げたわね」


 すみません。


 鞄を持ってから台所に駆け込んで、食パンを一枚咥えて家を駈け出す。目指すは家から徒歩10分のところにある駅。そこまで行けば間に合うはずだ。


「気を付けて、琴音。そうやって食パンを咥えて走っている場合、曲がり角で誰かと衝突するっていうお約束があるから」


「どんなお約束よ」


 何でそんな限定的な状況のお約束があるのだろう。そもそもシロは何でそんな事を知っているのだろう。たまにシロは変な知識を披露する。


 まあ、閑話休題。


「これは少女漫画とかでよくあるお約束だね」


「そうですか」


 更に続くシロの話に私は取り敢えず生返事。シロはカバンのなかにいるだけだから楽だろうけど、私は走っているのだ。相手をしている余裕は無い。


 シロの話を適当に聞き流しつつ走っていると、曲がり角から誰かが飛び出してきた。


「キャッ!?」


「ふゎっ!?」


 ぶつかってしまい、私は尻餅をついた。


「イタタ……」


「あ、ご、ごめんっ!」


 見てみると、私にぶつかったのは女の子だったらしい。うちの学校の女子用制服を着ている。


「ううん、私は大丈夫。あなたは?」


「全然大丈夫!本当にごめんね!?」


 女の子はショートカットの活発そうな女の子で、背中に背負っているのは……バドミントンのラケットかな?


 と、そこまで思ったところでふと気が付く。


「あ、そうだ!遅刻しちゃう!学校行かなきゃ!」


「あ、アタシもだ!」


 二人して駅まで走る。妥協の無い、と言うか妥協できる余裕の無い全力ダッシュ。遅刻はしたくない。


 頑張って走った甲斐があって、電車には間に合った。満員電車に駆け込んで一息ついてから、私から口を開く。


「そう言えば、自己紹介がまだだよね。私は柚木琴音。あなたは?」


「アタシは朱乃要(あけのかなめ)。よろしく!」


 袖触れ合うも多少の縁とか言うなら、ぶつかった私たちには一体どれぐらいの縁があるのだろう。そんなことを思いつつ、何となく握手とかしてみた。特に意味はない。


 握手をしたときに、微かに違和感みたいなものが脳の奥に響いた。でも、それは特に気にする程度のものでもなかったので、私はそれをそのまま放っておくことにした。


 学校に着いて教室に入ると、親友の野上絢(のがみあや)千里鞠歌(せんりまりか)が挨拶してくれた。この二人とは幼稚園の頃からの親友だ。


「おはよう、琴ちゃん」


「おはよう、琴音」


「…おはよう、絢ちー、まりりん」


 ぜはー、ぜはー。駅から学校まで更に全力ダッシュしたので、だいぶ疲れた。絢ちーが差し出してくれた緑茶のペットボトルが有り難い。


 キャップを開けてくぴくぴくぴっと飲む。程よく冷えていて、美味しい。冷たいお茶が火照った喉を冷やしつつ潤していく感触がひどく心地よかった。


 余談だがまりりんと聞くと私はいつもマリリン・モンローを思い出してしまう。いや、本当にどうでもいい。


「は、これってまさか、」


「どうしたの、絢ちー?」


「あたしと琴ちゃんの、間接キッス……!?」


 妙なことを言い出した絢ちーを、私は頬の熱さを自覚しながらハリセンで叩く。


「あらあら」


「まりりん、そのリアクション違うからね?」


「て言うか琴音、アンタそのハリセンどこから出したのよ……?」


「ポケット」


「アンタのポケット、どうなってんのよ……」


 確かに。どう見てもハリセンなんて入らないだろう。ちなみに正解はカバンの中。何故入っていたかは、私にも分からない。世の中は、不思議でいっぱいだ。


「おいそこの三人、早く席付けよ〜?」


 担任の久保先生が苦笑しながら私たちに言った。……びっくりした、気が付かなかった。


「「「す、すみません!」」」


 さすが幼なじみの親友、息もぴったりだ。私は変な感心をした。




 昼休み。


「琴ちゃん、一緒にご飯食べよ」


「オッケー」


 私は一人のクラスメイトの事を目で追いながら返事をした。


「琴ちゃん、また黒峰くんのこと見てた〜」


「ち、ちち、ちがうわよ!」


 図星だった。手を振りつつ誤魔化しながら、無駄なことであると理解しつつも必死で否定してみる。


「あはははっ、隠しても無駄だってば!」


「絢ちーまで!ち、違うって言ってるでしょっ!?」


「その割には琴ちゃん、顔が真っ赤だよ〜?」


「うっ……」


「よく言った、鞠歌!」


 先程から話題に上っている黒峰騎士くろみねないとくんは、私の片思いの相手だ。騎士、と書いてナイトと読むそうだ。特徴的な名前と引き締まった無駄の無い身体とハンサムな顔、ストイックな性格が相まって、女子からの人気はそこそこ高い。ただし無口なため、ちょっとというかかなりとっつきにくい性格をしている。


 むしろそこが私にはいいと思うのだけれど。


「……恋は盲目と言うかなんというか」


「ま、あばたも笑くぼって言うぐらいだからね〜」


「うるさいわね、聞こえてるわよっ!?」


 私が言うと、絢ちーとまりりんは呆れたように肩をすくめた。




    †‡†




 放課後。


 学校を出て皆と別れた私は、駅とは反対方向に歩いていた。シロによると「こっちの方向から、気配みたいなのがしてくる」のだという。経験から言うとシロのこういう勘はよく当たるので、今日は寄り道することにした。


 シロの指示どおりにしばらく歩くと、


「ここだよ、琴音」


「うん、私にも見える」


 空間に歪みのようなものが生じているのが確認できた。見たところ、陽炎に似ているように思える。


 普通の人には視えないけれど、魔法少女としてシロと契約した私には視える。その歪みの向こう側に居る、幽魔が。幽魔は、魔界に住む低級モンスターだ。形は人型や四足獣型等さまざまで、身体の一部を変化させることも出来る。どうやら不定形らしい。人型が最も多い。


「行くわよ、シロ」


「オーケー、いつでも」


 私は意を決して、その歪みの中に足を踏み入れる。


 〈歪みの向こう側の世界〉こと魔界と私たちの世界の狭間の世界、通称〈境界〉の風景は、いつも荒涼としている。この世界と同じようにビルやアスファルトの道路があるのだが、それらは崩れ、割れ、見る者に退廃的なイメージを与える。


 私がそんな感慨に耽っていると、


「琴音!来てるよ!」


 魔界からの侵略者、幽魔のお出ましだった。見ると、少し離れたところから無数の赤い瞳がこちらを見つめていた。地味に怖い。夢に出てきたらその夢は悪夢になるであろうことを保障する。


「琴音!」


「分かってる!変身!」


 私は首から下げている銀色の十字架のネックレスに、そっと口付けをした。その瞬間、私の身体が光に包まれる。そして光が消えた時、私の服は白を基調として要所要所にピンクのラインをあしらったコスチュームへと変貌を遂げていた。この間3〜5秒間。アニメの魔法少女ものだと一人あたり一分以上かかったりするが、そんなにかかっていたら普通は敵にやられてしまっていることだろう。髪の毛の二つの小さなツインテールを結ぶ髪留めも、ピンクのリボンに替わっている。プリ〇ュア的な名乗りは上げないで、そのまま幽魔と対峙する。




Bパートに続く!

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