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『家族』
家出した。
今日、俺は家出をしてしまった。
辛くて、居場所がわからなくなって俺は家出した。
誰も追って来ないだろう。
俺は所詮その程度の存在なのだから……
そろそろ、街の境界線というところ。
俺の目の前に京がいた。
俺の家出の元凶、諸悪の根源。
「何やってんの??
こんな朝早くに家を出てさ」
かなりいらついているようだ
「家出」
俺はそう告げると、彼女を無視して先に進もうとする。
「どうして??」
「あの家には、俺の居場所がない」
「そう……」
「ほかの『家族』にもよろしくを伝えといて」
「このあと、どうすんの??」
「さぁ、多分。
以前、世話になっていた人のところに行く」
「そう……
私さ、アンタのこと大嫌い。
心底、大嫌い。
でも、でもさぁ、いなくなるとさみしいよぉ」
彼女が泣きながら告げる、俺に。
「俺は所詮、俺は外からの来訪者だ。
『家族』にはなれない。
ごめんな」
俺は街を去った、振り向きはしない。
思い出は全て、京にあずけたから。




