↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノーライフ・ライフ  作者: 黒留ハガネ
三章 魔力の深奥
PR
91/125

四十話 魔法少女ロジカル☆アンゼ

≪じりりりりりりーん。朝です。起床。起床。起床。起床。起しょあうっ!≫

 エルフ王族の姫、アンゼロッタはベッド脇の机の上で気の抜けた目覚まし音を発していたエイワスをうつ伏せのまま手を伸ばし叩いて黙らせた。天蓋付きキングサイズベッドに顔をうずめたアンゼはそのまま動かない。ぐしゃぐしゃになった長い金髪がシーツの上に広がり、窓から差し込む朝日を反射してキラキラ煌いている。そのまま数分、ピクリとも動かない。エイワスが控えめな声量で言う。

≪マスター≫

「うるさぁい……ねかせろー」

≪……別にいいですけどね。どうせラキが起こしますし≫

 エイワスはひとりごち、それきり黙った。

 数分すると寝室のドアがノックされた。アンゼはぴくりと耳を動かし、もごもごと言う。

「ただいま睡眠中です。御用の方はピーッという音が鳴りましたら」

「失礼します」

 しかし最後まで言う前にドアが開かれた。金髪セミロングに巫女装束の若い女性が入り口で頭を下げ、静々と入ってくる。そのままベッド横まで歩み寄り、布団を抱きしめてダンゴムシのように丸くなるアンゼを丁寧に、しかし有無を言わさず引っ張り起こした。

「おはようございます、お嬢様」

「ちょっとー」

 寝ぼけ眼で文句を言うアンゼを抱きかかえて背もたれの長い椅子に座らせ、化粧机から櫛を出して優しくすき始める。アンゼは気持ちよさそうにとろんと目を細めた。ハイハイしていた時から仕えているだけあり、ラキにとってアンゼの世話はお手の物だ。アンゼのツボをよく心得ている。

「エイワス」

 やがて頭がはっきりしてきたアンゼはエイワスを呼んだ。エイワスは文机の上に置きっぱなしにされていた二丁の魔銃と一緒にふわりと浮き上がり、アンゼの膝の上に落着する。

 魔銃は二丁ともヒヒイロカネでコーティングされた拳銃で、片方がタキオン銃、もう一方が魔導銃になっている。タキオン銃にはミスリルが入っているため魔法や魔導の妨害に使える。魔導銃はアンゼの『杖』の役割も果たしている。

 精密加工技術の発達によって魔導回路が縮小し、更に小型魔核が開発されたため『杖』は多様化した。指輪型、腕輪型、ネックレス型、手甲型、本型、剣型など、マスターの好みに応じて様々な形状で造られる。魔核も製造初期段階で宝石と同じようにカッティングされ、より見栄えがよくなるようになっている。アンゼの場合は銃型で、銃身の付け根の横腹に魔核を嵌める穴がある。

 アンゼがエイワスを魔銃に嵌めて衝撃で外れないように金属の留め金で固定していると、ラキが髪をすき終わった。クセの無い金髪がさらりと流れる。が、頭のてっぺんから髪が一房ぴょこんと飛び出していた。ラキは諦め顔でそれを掌で数秒押さえつけるが、手を離した途端元気良く立ち上がる。ロバート曰く「魔法よりもファンタジー」なアホ毛で、漫画かアニメの登場人物かと思うほど重力に逆らっている。

「今日はどうします?」

「んー……おまかせー」

「ではサイドポニーにしましょうか」

 ラキは慣れた手つきでアンゼの髪をまとめてサイドポニーにし、リボンでまとめた。

「お似合いですよ」

「うん」

≪お似合いですよ≫

「もうちょっと捻って」

≪ふん、マスターにはその髪型がお似合いだ≫

「その言い方ソロモンに似てる」

≪!≫

 ショックを受けて黙り込んだエイワスをホルスターに押し込み、アンゼは立ち上がりクローゼットを開けて口笛を吹きながら服を選び始めた。ラキは静々と退室していく。

 五分ほどどれにしようか迷ったアンゼは黒のスカートに白のタンクトップ、紺のカーディガンに決めた。ささっと着替え、姿見で軽く全身をチェックし、腰に二丁の魔銃を入れたガンベルトを巻いて部屋を出る。

 ふかふかした赤い絨毯が敷かれた廊下を渡って食堂へ入ると既に家族は全員料理が並んだ長いテーブルを囲んで座っていた。

「おはよー」

 アンゼが朝の挨拶をすると家族からも口々に挨拶が返る。自分の席に座ると、すかさずラキが前菜を給仕した。

「今日は?」

「帆立貝のテリーヌ、コンソメスープ、フノジ海老のチリソース、ネッシイモモ肉のカルパッチョ、ウォルドーフサラダ、林檎シャーベット、ヌラァフ産赤ワインです」

「うぇー。ね、海老飛ばして」

 アンゼが顔を顰めてコソッとラキに囁いたが、対面に座っていたシルフィアに聞きとがめられた。

「ダメです。半分でいいから食べなさい」 

「ヤダ。不味い」

 頑固に言い張ると冷たい目で睨まれた。アンゼも負けじと睨み返し、二人の間に魔力が吹き荒れる。ラキはさり気なく壁際に下がった。

「テウルはおいしそうに食べてるでしょう」

 チラリと隣を見ると浅葱色の甚平を着たテウルが我関せずといった風情でもくもくと海老をフォークで突き刺しては口に運んでいた。テウルは先祖帰りしてロバートに似たらしく、美形な父や母、アンゼロッタと違い凡庸な顔立ちをしている。しかし頭脳はエマーリオレベルとまではいかないがかなりのものだった。いつも何か頭の中で理論を検証したり構築したりしているため口数が少ない。

「テウルも我慢して食べてるだけだって。ね?」

 テウルはテーブルの下で足を踏まれ一瞬ビクンと痙攣した。抗議しようと顔を上げると笑顔で脅迫するアンゼと目が合う。渋々ギリギリ嘘にならない肯定をする。

「……そこまで美味しいとは思わない」

「ほらー。父様も海老嫌いでしょ?」

「うん? いや俺は海老好きだ」

 話を振られたエルマーは娘の懇願する目線に気付かず気楽に言った。アンゼは空気読めこんちくしょー、と思ったが、夫の援護で勢いづき魔王の風格を漂わせ始めたシルフィアにいつの間にか魔力で包まれている事に気付いて冷や汗を流した。今の状況は胸にナイフを突きつけられ首根っこを押さえられ、全身を縄でグルグル巻きにされたに等しい。

「さあ、無理やり食べさせられるのと自分で食べるのとどっちがいい?」

「どっちも食べるんじゃないですかー! ヤダー! ラキ助けて!」

「申し訳ありません」

「エイワス! エイワスは私の味方だよね! あんな脚ワサワサの甲殻類食べるなんてどうかしてるよ!」

≪バランスよく食べないと身長伸びませんよ≫

「裏切り者っ! 海老食べるぐらいならチビでいいもんね!」

「ラキ、もう口の中に押し込みなさい。抑えてるから」

「かしこまりました。失礼します、お嬢様」

「かしこまらないで! 失礼しないでー! にゃあああああああああ! ……もごごごご……」

 シルフィアに魔法で拘束されたアンゼはしばらく口にエビチリを突っ込まれてもがもが言っていたが、やがて観念してコンソメスープで口の中のモノ喉の奥に流し込んだ。

「こら、しっかり噛みなさい」

「無理。リバースする」

「……まあ良いでしょう。ラキ、また海老煎餅作ってあげなさい。アンゼもそれなら食べれるでしょう?」

「……え、アレ海老入ってたの?」

「入れました。言いませんでした?」

「言わなかった。ラキの馬鹿! 料理上手! 美味しかったまた作って!」

「はい。海老増量しておきますね」

「それはやめて」

 ぎゃあぎゃあと喧しい朝食を終えた後、アンゼは歯磨きをしてから自室に戻った。軽くナチュラルメイクをしてから鞄の中の教科書とノートを確認してから留め金を閉じて肩にかけ、早々に屋敷の玄関に向かう。玄関ではテウルが靴箱にもたれかかり分厚い専門書(『エーテルコンピュータは何故実現しないのか?』)を読みふけっていた。

「お待たせー」

≪遅い。まったく女って奴は……化粧しないと死ぬのか?≫

 テウルの右手の中指に嵌った指輪からテウルの声色を真似た声がした。

「なんでソロモンが答えるの」

≪そうです。自分のマスター差し置いてでしゃばるんじゃないですよ≫

≪マスターの心の声を代弁しただけだ≫

「と、ソロモンは供述していますが?」

「…………」

 テウルは無言で本を読みながら玄関のドアを開け、ついでにドア枠を指輪で殴った。ソロモンが悲鳴をあげる。

≪ひぎい。暴力反対≫

 テウルもアンゼもエイワスも無視した。

 二人と魔核二個は徒歩で大学へ向かった。基礎学習院に通学中なのだろう、小さな子供達が折りたたみ傘を振り回しながら元気良く二人を追い抜かして駆けていく。アンゼは自分もあんな時があったなあ、と目を細めて見送った。あんな時と言っても一年前なのだが。アンゼもテウルも現在大学一年生。十六歳だ。

 エルフィリアの人口は六百人弱で、里の広さも相応だ。アンゼ達が住む屋敷はエルフィリアの中心部にあり、大学も中心部にあるため、徒歩二分で到着する。門をくぐって大学の敷地に入り、昇降口から講堂に入る。講義室の戸を開けると既に何人か来ていて、隅の方でカードゲームに興じていた。

「攻撃カード『ICBM』発動。『放射能大怪獣』に固定100ダメージ。ターンエンド」

「防御カード『核シェルター』セット。控えのモンスターはあらゆる攻撃を無効化する」

「げ」

「何?」

「……いや」

「そう? モンスターカード『ブルスコファー』『モルスァ』セット」

「それ何系?」

「科学ロボ系」

「『放射能大怪獣』で攻撃。『道頓堀おじさん』に40ダメージ。ターンエンド」

「フィールドカード『サリン』セット。フィールドに出ている生物系モンスターは控えも含めて全員即死する」

「あー、一ターン遅かったのか」

「そう、さっさと使えばよかった。でも『放射能大怪獣』は即死ね」

「『モルスァ』出す」

「盾?」

「分かってるじゃん。体力多いから時間稼ぎさせてもらうぜ」

「どっこい、ここで人物カード『エマーリオ』発動。このターン相手に与えるダメージが全て二倍になり、相手の手札を全て捨てさせる」

「ゲェー! チートだ!」

「でもデッキに『ロバート』と『シルフィア』と『エルマー』入れられなくなるよこれ」

「ハメ方次第だねぇ」

「うん、高火力デッキと相性抜群なのだよ。おはよう姫」

「はよ」

 アンゼが横から覗き込んで言うとゲームをしていた二人は手札から目を離さずおざなりに挨拶した。

 世界は違ってもカードゲームはやはり特に若年層にウケが良く、基礎学習院でも大学でもデッキを持ち込んで休み時間に遊ぶ生徒は多い。捕獲された魂(偽)経由で地球から齎された知識と技術によって初歩的な携帯ゲーム機も開発されており、邪神育成シミュレーションゲーム「いあいあ@ハスター」、王道RPG「ファイナルフィクション」、ハンティングアクションゲーム「Monster Hotter」などのソフトが人気を博しているが、そちらは学校への持ちこみは禁止になっている。

 アンゼは椅子を引き寄せ背もたれを抱きかかえるようにして座り、カードバトルの観戦を始めた。アンゼの低い身長に反比例して育った胸が背もたれに押し付けられ潰れて変形している。対戦者二人はチラチラと横目にそれを盗み見ながら対戦を続けたが気もそぞろだった。

 対戦が終局に近づいた頃、講義室の中央付近で突然罵声が上がった。講義室にいた全員が振り返り声の出所を探す。

 机の上に『杖』が三本置かれていて、そこに嵌った魔核同士で言い争いをしていた。

≪なんだとー!? こ、このクズ石! C級品!≫

≪はぁー!? Cじゃないもん! Bだもん! 自分がAだからって調子に乗ってぇ……! 発色と性能は関係ない!≫

≪はいはい負け惜しみー。まーけおっしみー。負け石の遠吠えー≫

≪負け惜しみじゃない。ロバ核だって等級Cマイナスだよ? 泥水みたいな発色なのに安定性は魔核随一!≫

≪……ふーんだ、オールドマインカットのクセに生意気な。オールドマインとかおっくれってるぅー!≫

≪見栄っ張りマルキーズに言われたくない!≫

≪まあまあ落ち着いて≫

≪≪ラウンドカットは黙ってろ!≫≫

「おいやめろ恥ずかしい」

「すみませんねウチの魔核が」

「いえいえ。ほら謝っとけ」

 『杖』の持ち主が慌てて回収に出向いて頭を下げあった。魔核達は憤懣やるかたない、といった雰囲気丸出しでいかにも仕方なさそうに謝り合う。アンゼのふとももあたりからエイワスが小馬鹿にした声を出した。

≪まったく、これだから生まれたての魔核は。思慮分別が無い≫

「エイワスもそんなに年齢違わないでしょ」

≪私はマスターが生まれる三年前に製造されたので十九年モノ。奴らは大学進学祝いに買われた新参、精々五年モノでしょう。十四年差です≫

「そういえばそうだったね。生まれた時から一緒だもんね……ねえ、私の赤ちゃんの頃ってどうだった?」

≪マスターは赤子の時から元気いっぱいでしたね。はいはいも掴まり立ちも歩くのもテウルより二ヶ月は早かったですよ≫

 そのまま思い出話に浸っている内に時間が過ぎ、始業のチャイムが鳴る。生徒達はそれぞれ机に広げたカードを片付けたり音楽プレイヤーをしまったりし、講義室に入ってきたロザリーに朝の挨拶をした。














「えー、従ってマナ結晶の体積あたりのdm数からdm一個の体積である1.47×10^(-19)mm3が求められるわけだけどー、これはあくまでもdm一個が占める空間の最大体積でありー、物質元素が原子核と原子核を接触させて結合しないのと同じでー、プリントの図12にあるようにー、dm粒子間にある程度の間隙をもって結晶構造を作っていると想定されているんだねー。だからテストに解答書く時はー、1.47×10^(-19)㎣じゃなくて1.47×10^(-19)㎣『以下』って書かないと減点だからー、覚えておくようにー。数値変わらなければ単位は㎥でもいいけどねー。というかむしろそっち推奨かなー。はいじゃー午前の講義はここまでー」

 ロザリーがのんびりと講義の終了を告げると、生徒達は一斉に後ろに仰け反って伸びをしたり机に突っ伏したりした。一限六十分、午前三コマ。密度が高い講義に既に気力を搾り取られてしなびている生徒もチラホラといる。午後の講義までの一時間は栄養補給の時間だ。

 アンゼは携帯食料を取り出してモソモソ齧りはじめたテウルを放置し、講義室を出て食堂へ向かう。広々とした食堂にはおばちゃんが作るチャーハンの食欲をそそる良い匂いが漂っていた。食堂の入り口に貼られた本日のお品書きをじっくり読む。アンゼが昼食を選んでいる間に腹を空かせた男子学生が数人食堂へ入っていった。

「うん、ラーメンにしよっと」

≪またですか≫

「昨日は塩。今日は醤油」

 食券を買い、おばちゃんに渡す。二十秒ほどその場で待ち、お盆に乗ったラーメンとお冷、箸を受け取って席を探した。食堂の椅子の数はどう考えても大学の全生徒数の倍はあり、席はよりどりみどりなのだが、一人で食べるのも寂しい。アンゼは一人で天麩羅をもっさもっさと貪っている女性を見つけてその対面に座った。

「こんにちは、アイリス先生」

 アイリスは挨拶を返そうとしたが、口が掻き揚げでいっぱいだったので頷くだけにした。

 アイリスは十八の生得的法術と、後天的に付与された不老法術、計十九の法術を持つホムンクルスだ。肉体年齢は二十歳で止まっている。金髪ショートカットに明るい色合いの碧眼の長身美女で、胸も身長もアンゼとは対極。

 ホムンクルスは得てして実験対象として扱われるものなのだが、アイリスは有用な論文を複数発表した功績によりエルフと同等かそれ以上の人権を認められており、暇な時間を大学教員の職務に充てている。

 テーブルに備え付けの胡麻をラーメンにかけているアンゼにお茶を啜って一息ついたアイリスが尋ねた。

「お嬢は将来どうする?」

「また唐突ですねー」

「学業成績は良いし、時々シルフィアさんの仕事手伝ってるみたいだし、エルマーさんと戦闘訓練もしてるみたいだし。研究か里長か防人かちょっと興味がね」

「えー……まだ決めてないです。テウルはロバー塔に就職希望みたいですけど」

「ああまあテウルはね。ロバー塔でも期待されてるみたいだし」

 アイリスがうんうんと頷いていると、通りがかったロバートが苦言を呈した。

「だからロバー塔はやめろと何度言えば。研究塔と言え。魔法塔でも可」

「あ、大御祖父様」

「ロバートちはー。何か用?」

「いや通りすがり」

 それだけ言うと食堂の壁をすり抜けて去っていった。プライバシー保護の観点からエルフの家には緊急時や犯罪捜査時などを除いて侵入禁止になっているロバートだが、大学にはそういった制限がないためよく出没する。授業で分からない所を質問すれば淀みなく答えてくれるし、人畜無害なので徘徊する辞書のような扱いをうけている。

 アンゼはラーメンをずるずる食べながらアイリスと談笑し、食べ終わると食器を返して次の授業の講義室に移動した。

 講義室にはテウルがいた。独り言を言っているかと思えばソロモンと何やら小難しい話をしているようだ。

「仮想空間に入ったエネルギーは現実世界のどこからでも取り出せるわけだから空間的連続性が」

≪するとトラペゾヘドロンの一見空間跳躍のように見える情報伝達も距離の概念がないもしくは相対性理論が成り立たない特異な空間であると仮定した仮想空間を介して≫

「むしろダークマターを構成する魔法的素粒子が……アンゼいたのか。どう思う?」

「え、いや途中からしか聞いてないから分かんない。仮想空間の話?」

 尋ねるとテウルは濁流のように言葉を吐き出して説明を始めた。しかしまだ習っていない専門用語が多すぎて理解できない。話についていけなくなった所で魔法を使って自分の頭上にヒヨコを出して回して分かりませんアピールをしたが、テウルは気付かず話し続ける。

「――というわけなんだが。どう思う?」

「ごめん最初から聞いても分かんなかった」

「…………」

 寂しそうな顔をされた。











 午後の講義も終わると、テウルは図書館に直行し、アンゼは屋敷に帰った。自室に入るや服を脱ぎ散らかして下着姿になり、綺麗にメイキングされたベッドにダイブした。

≪マスター、はしたないですよ≫

「いーでしょ誰も見てないんだから」

≪私がいます≫

 アンゼは煩く小言を言う魔銃をホルスターから抜いて枕の下に押し込んだ。寝転がったままベッド脇の机から魔法で読みかけの本を引き寄せ、抱き枕を抱えうつ伏せになって読み始める。

 ガイアの地球は放射能に汚染され文明がボロボロになっており、そんな世界からエーリュシオンにやってくる魂(偽)が持っている知識もたかが知れている。しかし稀にアタリが居て、第三次世界大戦前の水準の高度な科学知識を修めていたり、娯楽小説を読み漁った経験があったり、音楽収集家だったりする魂(偽)が捕獲される事がある。そういった有用な情報を齎した魂(偽)は情報の対価としてホムンクルスの肉体を与えられ擬似転生する事があり、アンゼが読んでいる本はそういう擬似転生を果たしたホムンクルスの自伝だ。ガイアでは海賊をしていたらしい。

 ページを捲っている内にだんだん窓の外が暗くなり、文字が読みにくくなってきた。

「エイワス、明かり」

≪明かりが欲しいならいい加減に出して下さい≫

「あ、ごめん忘れてた」

 枕の下から魔銃を引っ張り出し、ベッドの縁のスタンドに引っ掛ける。エイワスは魔銃に組み込まれた魔導回路を走らせ、光魔導を使った。部屋が暖かな光で満たされる。

≪まだ服着てなかったんですか、だらしがない。風邪引いても知りませんよ≫

「うるさいなぁ……静かに読ませてよ」

≪そろそろ夕食です。下着姿で食べるつもりですか≫

「うー」

 アンゼは渋々本にしおりを挟んで起き上がり、ベッドの上から魔法でクローゼットを開けて適当に服を一着引き寄せた。腕の中に飛んできた服を見て首を傾げる。

「なにこれ。作務衣? こんなのあったかな」

≪半年ぐらい前にテウルが着ていたのを見て羨ましがってたでしょう≫

「……ああ! そういえば仕立てたはいいけど一度も着てなかった」

 アンゼは作務衣を着て、軽く乱れた髪を整えてから夕食に向かった。

 朝と同じく贅沢なフルコースメニューを平らげたアンゼはラキから海老煎餅をもらい、自室に戻って大学のレポートを書き始めた。アンゼはエルフィリアどころか世界を掌握しているロバート一族であり、コネもツテも豊富だ。レポートに必要なデータはいくらでも手に入る。ただし考察は自分でしなければならないので延々とデータと睨めっこになる。自ら考える事に意義があるためエイワスのアドバイスもなく、アンゼは海老煎餅を消費し尽くす真夜中まで机に張り付いて頭を抱えていた。

 エーリュシオンの魔法少女の一日はこんなものだった。



 なぜか台詞が凄く多くなった。なんでだろう

 アンゼのアホ毛はニャル子さん並。

 召喚魔法出そうと思ったけど上手く話にからませられなかった。生物をゾンビ化してトラペゾヘドロン経由で召喚・送還すれば可能です。

 三章はこれで終わりです。研究の話も全て終了。これから間章を数話挟んで四章に入るのですが、もうちょっとプロットを固めないと書けません。次回更新はしばらく間が空くと思います。

 完全に蛇足だけど日本の大学の一般的レポート形式について調べたらこんなの見つけた。こういうの大好きだ

 http://hamusoku.com/archives/7049394.html


【アイリスの法術一覧】Pはパッシブ、Aはアクティブ


A破壊の右手……右手でデコピンすると衝撃波が出る。威力は人が踏ん張っていてもよろめくぐらい

A閃光の紋章……念じると額に蛍光灯ぐらいに光る紋章が浮き上がる。ゴーグルしないと自分も眩しい

A凍て付く息……暑い日もひんやりする程度に涼しい息がでる

A印度の炎……口から火を吐ける

A神眼……こめかみを強く押すとサーモグラフィーの視界を得る

A天駆ける脚……一歩だけ宙を踏める(インターバルは十秒)

A水の祝福……水中で酸素の代わりに魔力を消費して活動できる

A雷雲の落とし子……体に電気を溜め込み、人差し指から放出できる。充電限界量は静電気のパチッてなるやつ四回分

A聖なる風……足の指先から前方斜め30℃の角度で思わずスカートを押さえてしまう程度の突風が出る

A熱き血潮……ヘソをそれなりの高温にできる。茶を沸かせる

A百獣を統べる者……東の森に生息する最もポピュラーな種のネズミを一匹だけ操ることが出来る。操作するためには一度接触する必要がある

P悪魔の顎……歯がチタン合金並に硬い。顎もけっこう頑丈

P神秘の鎧……体表を覆う不可視の膜。常に体表の温度を27℃に保ってくれる。冷暖房要らず

P不滅の肉体……程度にもよるが怪我をしても一時間ぐらいあれば大体修復再生する。致命傷を受ければ普通にそのまま死ぬ

P狂戦士……身体能力が強化されている。見た目は枯れ木でも力は筋肉達磨。別に理性を失ったりはしない

P鷹の目……視力が8.0で固定されている

P覇者の風格……魔力密度が非常に高い。なんかすっごいオーラが出てる感じがする

P神速……反射神経と動体視力が平均的な人間の1.2倍


P不老法術(維持法術)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本当に面白い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。