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ノーライフ・ライフ  作者: 黒留ハガネ
三章 魔力の深奥
75/125

二十五話 最早小説ではなく単なる設定の羅列な話

 今回はアホみたいに複雑かつ単調な、残りの設定を七、八割ぶちまけるだけの話(?)です。全国三千人のノーライフ・ライフ読者の内一人理解してくれれば御の字。誰も理解できなくても何も不思議ではない、ぼくがかんがえたうつくしくちみつなまほうせってい。まともに読もうと思うチャレンジャーは相応の覚悟をお願いします。

 あとがきに物凄く簡単にまとめてあるので、本文をまるっとスルーしてそこを見るだけでも充分です。

 キング・クリムゾン! 実験という過程は消し飛び、研究成果という結果だけが残る!

 法暦七十二年のパリスチール発見からの数年は、正に疾風怒濤だった。

 里の図書館の蔵書が五割増しになるほどの研究過程や試行錯誤の山をぶちまけるのはそれだけで一苦労だ。概要・結果だけを示してみよう。

 手始めにまずオドとダークマターの性質から。魔質によるエネルギー消費ペース、八種類のダークマターのマナ結晶の体積あたりの重量が異なる事などから以下のように定義された。


八型……(物質):(概念):(運動)


NNN型……1:1:1

YNN型……2:1:1

NYN型……1:2:1

NNY型……1:1:2

YYN型……2:2:1

YNY型……2:1:2

NYY型……1:2:2

YYY型……2:2:2


 ダークマターは物質器、概念器、運動器からなる。どの器も架空質量は等しく、それぞれの器は自身の架空質量の静止エネルギーと同一のエネルギーを保有できる。器一つあたりのオドは0.0000000000117Jで、NNN型の総オドは0.0000000000351J、YYY型の総オドは0.0000000000702Jとなり、dm八型の存在比は均一であるから、通常、ダークマターの平均オドは0.0000000000525Jとなる。

 そしてダークマターは器が3:3:3になるような形で結合体を作りやすい。NNN+YYY、YNN+NYY、NYN+YNY、YYN+NNYの組み合わせを1:1の比で混ぜてマナ結晶にすると、混ぜずに別個でマナ結晶にした場合よりも格段に総体積が小さくなる。dmが結合し、dm間の距離が短くなっているからだ。このような組み合わせの結合体を魔法基と呼ぶ。

 ちなみに魔法基の総オドは必ず0.000000000105Jで、これは陽子一個の静止エネルギーに完全に一致する。面白い符合だ。


(dm)……(省略記号)、(名称)


NNN-YYY……A、アンスール

YNN-NYY……H、ハガル

NYN-YNY……E、エオロー

NNY-YYN……W、ウィルド


 魔法基はルーン文字にちなんでこのように簡易表記されるのだが、その名の通り魔法の基となるもので、この組み合わせによって魔法の性質が決定される。魔法の発動においては、連続して結合した三つの魔法基が一つの基礎的な意味を持ち、この三つの組み合わせを魔法コードと呼ぶ。魔法コードは4P3で64種類存在する。

 これを踏まえた上で「魔力」の構造を具体的に見てみよう。



YYY

|

NYN

|

YYN

|

NNY―NYY―魔法基

|

YNN

|

YNY

|

NNN



 形質魔力や純魔力と呼ばれる自然状態の魔力の基礎構造は全てこのようになっている。八種類のダークマターが結合して作る構造体に更に魔法基が結合したもので、これを魔法糸と呼ぶ。この魔法糸が無数にYYYとNNNで繋がり、魔法糸重合体と呼ばれる、長い、基礎構造が連結したものを作る。

 このままでは一本の線のような状態なのだが、これに相補的に対となる魔法糸重合体が結合する。

 魔法基は魔法基と結合する性質がある。この時魔法基一個に対して結合する魔法基は一個で、必ず特定の種類の魔法基と結合する。この結合を魔法結合というのだが、魔法結合はA-HまたはE-Wの組み合わせでしか起こらない。従って例えばAHEWWH、という魔法糸重合体があった場合、それに相補的にHAWEEAという対の魔法糸重合体が結合し、さながらDNAのような二重螺旋構造を作る。この二重螺旋構造を魔法鎖といい、魔力は全て魔法鎖である。形質魔力だとか、純魔力だとか、そういうものは魔法鎖の魔法基の配列の違いに過ぎない。生物分野の知識があればDNAの塩基配列を想像すると分かりやすいだろう。魔法鎖の構造はアレと酷似している。

 さて、魔力の性質の違いは全て魔法基の配列の違い、と言った。ではどのような配列でどのようなどのような性質を示すのか? これはまだ謎が多いが、基本的な法則と一部の例は分かっている。

 魔法鎖では魔法コードが基礎的な意味を持つ。魔法コード一つが最も基礎的な意味を示し、魔法コードが連続する事で意味を複雑化させていく。特定の魔法コード列はAAHEWだのと表記せず、もっと簡単に「~鎖」と表記される。まあ魔法コードの解析が不十分で、「こういう意味を持った魔法コード列がある」という事しか分かっていないから「~鎖」でしか表記できないだけなんだがそれは置いておくとして。

 人間が持つ形質魔力、これは形質魔力鎖だ。形質魔力鎖の構造を更に細分化すると、「起動鎖―生体鎖―記憶鎖―共有鎖―仲介鎖」となる。形質魔力は起動鎖~仲介鎖までの一本の形質魔力鎖が複数集まったものを指す。

 大雑把に言えば、起動鎖は魔法を発動させる魔法鎖、生体鎖は肉体情報を記録した魔法鎖、記憶鎖は肉体情報の中でも記憶や思考を記録した魔法鎖、共有鎖は同一の形質魔力間で情報を共有する魔法鎖、仲介鎖は物理刺激と魔法的刺激の仲介をする魔法鎖だ。

 魔力覚醒とはこの形質魔力鎖に特殊な魔法鎖が組み込まれる事によって起こる。特殊な魔法鎖とは勿論秘薬薬草成分に含まれる魔力覚醒を促す魔法鎖……覚醒鎖の事だ。覚醒鎖は魔感鎖と魔操鎖から成り、魔感鎖は生体鎖と結合して個体魔感鎖を作る。魔力的刺激を受けると仲介鎖に影響する微弱な信号を出す。魔操鎖は生体鎖と結合して個体魔操鎖を作る。魔力覚醒後の形質魔力鎖の構造は「起動鎖―生体鎖(―個体魔感鎖―個体魔操鎖―)生体鎖―記憶鎖―共有鎖―仲介鎖」と、こうなるわけだ。

 仲介鎖は個体よって構造・種類に差異はない。肉体(主に脳波)・記憶鎖の変化を受けて自身の一部の魔法コードを変化させ易く、特定の魔法コード列をとるとエーテルに影響を与え、信号を出す。この信号が示すのは『範囲指定』『操作』『開始』AHEWFUSRGY『起動活性』『存在活性』の十五種類であり、エーテル存在下で超高速で伝わる。この信号は信号を発した仲介鎖が結合している共有鎖と同一の共有鎖を持つ魔力鎖しか受容できない。魔感鎖、個体魔感鎖からの信号を受け取り、物理的刺激を発する。魔感鎖からの信号によって発する物理的刺激よりも個体魔感鎖からの信号によって発する物理的刺激の方が大きい。仲介鎖を構築する魔法糸重合体は他の魔力鎖と微妙に構造が異なる。

 個体魔感鎖は仲介鎖の信号を受け取り、「起動鎖の隣に移動する」「魔力鎖内を移動して実働鎖を構築する」反応を示す。魔力的刺激を受けると逆に仲介鎖に影響する信号を出す。

 個体魔操鎖は仲介鎖の信号を受け取り、「自身と連結している魔力鎖を待機状態にする」「自身と連結している魔力鎖を特定方向へ動かす」反応を示す。

 構築鎖(魔法構築材料情報鎖)は個体魔感鎖、個体魔操鎖を持つ情報鎖を指す。

 共有鎖が組み込まれている魔法鎖は魔法や法術として発動している・発動していないに関わらず、dm発動値以上のオドを保有している場合に限り構造が近似した共有鎖間でエーテルを通して信号を発しあい、情報を同期する(連結した記憶鎖を変化させる)。構造が近いほど同期の精度と量は上昇する。100%一致でオド伝播(距離に関係ないオド量の平均化)を起こす。同期情報もオド伝播もエーテルを介しているため、無魔力空間にある(通常魔力が無い空間にはエーテルもない)共有鎖とは同期も伝播も起こさない。仲介鎖と同じ様に信号を出して共有鎖間で情報を伝達しているのだが、仲介鎖が発する信号とは比較にならないほど種類が多い。

 記憶鎖は詳しく説明すると脳波によって高速で変化し続ける魔力鎖だ。形質魔力鎖の中でも存在鎖を特に多く含み、死亡しても拡散するまで多少時間がかかる。ノーライフの記憶鎖は脳波に近い挙動を取る。

 存在鎖は結合した魔力鎖の密度を魔力帯性に依らず保つ。魔法鎖に組み込まれているだけで効果があるが、仲介鎖の存在活性信号を受けると効果が上昇する。保有数には個人差があり、これが多いほど体外に帯びる魔力量が多くなる(保有魔力量が多くなる)。魔力鎖中に占める存在鎖の量が多いほどその魔力鎖の固定強度は高い。

 これで形質魔力の構造とその性質については大体終わりだ。ちなみに大学の授業ではこの部分の解説に六時間かける。

 いい感じに頭がショートしてきた所でもっと行こう。仲介鎖の発する信号については以下のようになっている。




『範囲指定』……発信地点を基準とした特定の位置座標にある個体魔操鎖に作用し、その個体魔操鎖と連結している魔力鎖を待機状態にする信号の総称。

『操作』……『範囲指定』の信号によって待機状態になった魔力鎖の中の個体魔操鎖に作用し、個体魔力鎖と連結している魔力鎖を特定方向へ動かす信号の総称。

『開始』……『範囲指定』の信号によって待機状態になった魔力鎖の中の個体魔感鎖に作用し、個体魔感鎖を魔力鎖の起動鎖側の端に移動させる

AHEWFUSRGY(魔力基指定)……個体魔感鎖に作用し、魔法基・法術基を作らせる

『起動活性』……起動鎖を活性化させる

『存在活性』……存在鎖を活性化させる。


 秒間信号発信頻度:秒あたりの信号発信数

 仲介鎖の信号を何度も発していると秒間信号発信頻度が上がっていく。

 秒間信号発信頻度が増えればそれだけ短時間に多くの情報が送信できるという事であり、精密な魔力操作が可能になったり、存在鎖の固定強度が上昇したりする。

 秒間信号発信頻度が上がった仲介鎖の構造は肉体に反映され、以後、より高い秒間信号発信頻度を発揮する仲介鎖が作られるようになる。

 存在鎖とそれに連結した魔力鎖の固定強度は存在活性信号で上昇するが、上昇した固定強度は一瞬で元に戻る。従って継続して固定強度を上げたければ信号を連続して発し続けなければならない。信号の発信頻度が上昇すると固定強度が上がっていく。存在鎖が最大値まで活性するとそれ以上発信頻度を上げても固定強度は上がらなくなる。


※固定強度:どの程度まで魔力密度差、魔力帯性に抗って魔力密度を保つ事ができるかの指標


 ex.

 通常の固定強度が50とする。

 固定強度は一秒あたり30下がる(49以下にはならない)とする。

 存在活性信号一回につき固定強度は1上がるとする。

 秒間の信号発信頻度が30以下の場合、固定強度は50のまま。

 信号頻度31なら固定強度51になり、32なら52になり、80なら100になる。


 信号は波のようにエーテル存在下の空間を伝わっていく。操作信号は、発信地点から遠ざかるほど弱くなっていく。同じ信号が連続して発信された時、信号の波が重なり合った部分の信号の強さが上がる。操作信号以外の信号は距離による減衰がほとんど無い。


 魔力操作は操作信号の発信頻度によって熟練度が変化する。

魔力放出は操作信号によって魔力鎖を体外で移動させる。魔力量が多い(=存在鎖の量が多い)ほど遠くまで伸ばせる。


 ex.

 存在鎖量8・操作熟練度1=操作可能距離1

 存在鎖量8・操作熟練度6=操作可能距離6

 存在鎖量8・操作熟練度9=操作可能距離8

 存在鎖量8+存在活性信号補正1・操作熟練度9=操作可能距離9


 存在活性信号頻度が低い状態で魔力を伸ばすと固定強度が下がり拡散する。操作信号頻度が低い状態で魔力を伸ばすと途中で有効な操作信号が届かなくなる。




 上記の形質魔力鎖と信号を使って魔法の発動メカニズムを説明すると、




①「使用したい」という意思をもって使用する魔力を意識する

②脳細胞の電位変化を受けて仲介鎖が変化し、範囲指定信号が発せられ、使用する形質魔力鎖が待機状態(開始信号を受容できる状態)になる。

③「こんな魔法を使う」とイメージする

④脳細胞の電位変化を受けて仲介鎖が変化し、開始信号が発せられ、範囲指定信号によって待機状態になった形質魔力鎖の中の個体魔感鎖に作用し、個体魔感鎖を魔力鎖の起動鎖の真横に移動させる

⑤個体魔感鎖が魔力基指定信号を受けて③のイメージを再現する魔法コードを構築しながら仲介鎖側へ移動していく

⑥魔法コードの構築が共有鎖まで進み、共有鎖の構造が破壊されると信号を受け取れなくなり、構築が終了する。ここまでで個体魔感鎖が構築した魔力鎖を実働鎖と呼ぶ

⑦仲介鎖からの信号が途絶えると個体魔感鎖が実働鎖から剥がれ落ちる

⑧個体魔感鎖が剥がれ落ちると実働鎖と連結している仲介鎖が起動活性信号を出す

⑨起動鎖が起動活性信号を受け取り、起動鎖から仲介鎖の方向へ実働鎖を発動させていく

⑩魔法が発現する


 注:魔法が発動するとオドとdmが分離する。dmはdmの移動性に従い即座に大気魔力の方へ移動する。dmに保持されていないオドはどんどん劣化(?)してエネルギーを喪失していくため、発動待機状態の魔法は威力が減衰していく。この時喪失したエネルギーは仮想空間(魔法におけるエネルギーや質量の消失において、消失したように見えるエネルギーや質量が一時的に格納されていると考えられている空間)に移動している。魔法が発動するとオドはdmに型をとられたような形で存在し、魔法の効果を発揮する。


 注2:条件を認識して発動する魔法は実働鎖に改めて共有鎖の構造が構築し直されていて、その共有鎖と魔法の行使者の共有鎖の情報同期によって条件を満たしているか否かが判定される。


 注3:通常の魔法はイメージが不正確であるため、効果を発揮しない無駄な魔法コードが八分の七を占めて、効率は約八分の一になる。同じ魔法でもイメージの微妙な違いによって魔法コードが若干変化するため、何度も同一の魔法を使用していると、より無駄なコードを減らせるイメージが無意識下で選択され身についていき、ほんの少しずつ無駄なコードが減っていき、結果的に効率が上昇する。


 注4:ゴーストの場合はそもそも絶え間ない魔力鎖の変動によって生前のような思考を再現しているので、脳細胞の電位変化ではなく、脳細胞の働きに近い挙動を取る記憶鎖から仲介鎖へ影響して魔法を発動している。



 となる。余談だがこのメカニズムの解明は二十二の論文が土台になっていて、このあたりの授業をしていると生徒の八割は口を半開きにして死んだ魚の目になる。

 魔力と魔法についてのメカニズム説明が終わったところでゴーストと法術についての話に移ろう。

 魔力覚醒した生物が死亡すると、生体魔力帯性から無生物魔力帯性に切り替わり、魔力が拡散する。

 その際に最も早く拡散するのが生体鎖(生体鎖は形質魔力鎖の凡そ十分の九を占める、頭部の体積が凡そ全身の十分の一であるからその関係)。死亡と同時にほとんど全ての生体鎖は拡散してしまう。

 拡散しなかった残りの形質魔力鎖(魔法コードに占める存在鎖の割合が多い魔力鎖)は握りこぶし大の魂のような形状をとって肉体の外に排出され、その段階で仲介鎖の操作・存在活性信号頻度が一定以上に達していると記憶鎖と個体識別鎖によって記憶を元に生前の体の形に変形する。

 量が十分の一になった形質魔力鎖で生前と同じ体を構築するため、最終的に量は生前と同じで、密度は十分の一になる。

 ゴーストに内臓や骨などの中身が無いのは内臓や骨の情報を記録していた魔力鎖である生体鎖がほとんど丸々欠損しているからである。ゴーストの思考回路は絶え間ない記憶鎖の変化によって再現されている。

 ゴーストが魔力を切り離し特定の物質Aの中に長期間放置すると、形質魔力鎖の共有鎖・生体鎖の一部がAの情報を記録したものに変化する。

 短時間では共有鎖の同期によって形質魔力鎖は変化しないが、長時間経過するとまず生体鎖の一部がAの情報を記録したものに変化する。すると共有鎖も変化し易い状態になり、変化していく。共有鎖の構造が本体のものとある程度異なるコードになると別個体となる。

 つまり「生体鎖の変化→共有鎖の変化→新たな個体の発生」である。

 例えば炎の精霊の場合、生体鎖と個体識別鎖にもともと炎鎖を持っており、魔法を構築する際にその魔力鎖を利用する形になるため該当魔法の威力が上昇する。

 同じ素体から同一の物質を使い分身体を作ったとしても、環境によって微妙に構成が違う。同じ空気でも場所や四ヶ月かけて作られる中での風、湿り気などで変化し、全く同一の形質魔力、ひいては共有鎖にはならない。

 仮に全く同一の形質魔力・共有鎖になるように調整した場合、後から発生する個体に自我が発生する時期になると、先に発生していた個体が後の個体の形質魔力を自分のものとして扱えるようになる。

同条件で後発の個体を無魔力空間を隔てた場所で作った場合は普通に自我が発生するが、無魔力空間から出て 先発の個体と魔力情報が伝播できる状態になると瞬時に自我は消失し、後発の個体は先発の個体の形質魔力として扱われるようになる。

 精霊は自らが記録した物質と同調を起こし、自身の移動に伴い該当する物質を移動させる。ものによっては記録した現象を再現する。

 同調の原因となっている魔力鎖を同調鎖と呼ぶ。同調鎖は自身が組み込まれている形質魔力の魔力密度によって効果が増減する。形質魔力に含まれる同調鎖の割合を増やしても減らしても、魔力密度に変化が無ければ同調率もほとんど変化しない。魔力密度が高くなると同調鎖に接するdm量が増える=同調の出力上昇。

 同調鎖は構築鎖が変化した法術鎖であり、記録されている物質にのみ軽度の物理依存を示す。

 同調鎖は自身に接している形質魔力鎖から時間毎に一定の割合のペースでオドを受け取り、消費する法術鎖。つまり、1dmにつきα(J/s)のペースでエネルギーを受け取っていると仮定した場合、同調鎖に1dmしか接していない場合は出力はα(J/s)となり、5dm接していれば出力は5α(J/s)になる。

 従って密度が高いほど移動のために消費できるエネルギー量が増えるため、精霊の移動速度は密度が高まるほど上昇する。

 気体と個体・液体では魔力密度に対する有効同調鎖消費エネルギーが違う=同調鎖の数は同じだが同調の際に消費されるエネルギー量(同調率)に違いがある、と考えられている。

 霊体ノーライフについてはこんな所か。

 既に出たかも知れないが、法術を発動させているのは魔法鎖では無く法術鎖と呼ばれる魔力鎖(魔法鎖と法術鎖の総称)だ。

 法術鎖は法術基から成り、法術鎖は魔力基(dmが二つ結合したもの)の内、概念器の絶対量が4になるように組まれたもので、下の様に分類・表記される。



(dm)……(三器保有量)……(省略記号)、(名称)


NYN-YYN……3:4:2……F、フェオ

NYN-NYY……2:4:3……U、ウル

NYN-YYY……3:4:3……S、ソーン

YYN-NYY……3:4:3……R、ラド

YYN-YYY……4:4:3……G、ギューフ

NYY-YYY……3:4:4……Y、ヤラ



 この法術基が魔法基の代わりに使われた魔力鎖が法術鎖である。法術鎖は自身のコードが示す魔法現象を継続的に発現し続ける。ちなみに法術基にも魔法基と同じように相補性があり、法術結合はS-R、F-Y、U-Gの組み合わせでしか起こらない。

 法術鎖は物質と同化するようにして存在する事がある。物質と同化した状態にある法術鎖は魔力操作・密度差などの影響を受けない事がある。例外が多く分類が難しい。

基本的に継続的に多くエネルギーを消費している法術鎖ほど物質と同化する傾向にある。

 法術の基礎はそんな理論だ。で、法術の恩恵を受けている存在の筆頭に挙げられるゾンビ、及びヴァンパイア、スケルトンについて魔力構造的視点で見てみよう。


【ゾンビの誕生メカニズム】


 体外に出した形質魔力は魔力操作を止めると拡散するが、体内の形質魔力は魔力操作をせずとも魔力帯性に従って体内に留まり続け、拡散せず、形質魔力であり続ける。

 生物が死亡した際、生体魔力帯性から無生物魔力帯性へ移行し、肉体が新しく生産する形質魔力の質も変化するのだが、生命活動が行われていない、という事以外は肉体の性質にさして変化が無いため、死体が新しく生産する形質魔力は密度こそ生前よりも格段に下がるが質的には生前とあまり変わらない。

 魔力固定で自然魔力帯性の密度差による形質魔力の拡散を防いだ場合、「生きた肉体の情報を記録した形質魔力」が「死んだ肉体の情報を記録した形質魔力を生産しようとしている肉体」の中に留まり続ける。

 両者の形質魔力の性質には前述の通り大した差は無いため、形質魔力は崩壊して新しい形質魔力を構築するという通常のプロセスを踏まず、ゆっくりと構造を変化させるというプロセスを取る。構造の変化の初期過程で創造者の形質魔力が混入する。

 ゆっくりとした変化の過程で一部の形質魔力鎖が法術鎖の形態を取る瞬間があり、その瞬間に形質魔力鎖は法術鎖として肉体に固定される。法術鎖の固定は肉体的な物が早く、若干の時間を置いて思考法術鎖も不安定ながら固定される。思考法術鎖の固定が終わると意識を取り戻し、起き上がる。


 死亡から法術鎖の定着までの間に意識が無いのは、思考活動を行う形質魔力が死んだ肉体(=思考していない脳)の影響を受けているからである。法術鎖として定着すれば思考できるようになる。また、死んだ肉体の影響を受けない状態になっても自発的に思考活動をはじめる(ゴースト)。


【ゾンビの魔力的構造】


 ゾンビは有体一次ノーライフであり、魔力覚醒している。

 肉体の変化を停止させる法術鎖が全身に存在し、肉体的には不変である。

 ゾンビの肉体に存在する法術鎖を、そのほとんどが肉体の維持に使われている事から維持法術鎖と呼ぶ

 形質魔力の内、維持法術鎖になるdmは生前の魔力密度に関係なく一定。

 頭部の法術鎖は絶えず微細に変化し続けて生前のような思考形態を再現しており、これを思考法術鎖と呼ぶ。思考法術鎖は維持法術鎖に含まれる。


 維持法術鎖による肉体の状態固定で消費されるエネルギーは生前の生命活動で必要としたエネルギーと等しい。以下は成人男性を基準としたデータ。

 一秒100Jのエネルギー消費を、維持法術鎖を構築しているdmのみで賄おうとした場合、およそ10000000000000dmあれば一秒間は維持法術鎖を発動していられる。計算式は、

 100J÷(1dmのMaxからdm発動値までのJ)=9973188571428dm≒10000000000000dm

 従って、維持法術鎖を構築するdm量=10000000000000dm

 また、この維持法術鎖をオド伝播によって余裕を持って維持するためのdm量(形質魔力量)は、1000000000000000dm程度。


 思考法術鎖は法術コードを変化させる事で思考を再現している。

 思考法術鎖は絶えず変化し続けているため不安定で、首より下の比較的安定した法術鎖と(物理的に)繋がる事で辛うじて拡散せずに済んでいる。思考法術鎖は自身と同一量以上の法術鎖と繋がっていなければ崩壊する。

 思考法術鎖から発せられた信号は脳波と似た性質を示し、この信号が発せられている限り肉体は生前と同じ生体魔力帯性を保つ。従って首を斬られるなどして思考法術鎖が首から下の比較的安定した法術鎖と切り離されると、思考法術鎖が崩壊・拡散し、信号が途絶える。するとまず物質魔力帯性に切り替わり、形質魔力が拡散する。この時点で維持法術鎖は分解しないが、形質魔力からのオド伝播が途絶えた維持魔力鎖のdmは一瞬でdm発動値を下回る。この瞬間から法術鎖は効果を発揮しなくなる(A)。

 形質魔力が枯渇した状態で完全な無魔力空間にゾンビを置いておいても上記と同様に維持魔力鎖のdmは一瞬でdm発動値を下回り、法術鎖は効果を発揮しなくなる(B)。

 A、Bのようなdm発動値を下回った状態が続いていても、しばらくは法術鎖が維持される。ただし法術鎖の効果が切れているため肉体は腐敗していく。法術鎖は物質に依存して存在しているので、腐敗が進むと物理的な体組織の崩壊に伴い法術鎖の構築も崩壊し復活不可能になる。

 Aの場合は思考法術鎖が失われているので首が落ちた時点で死亡確定だが、Bの場合ならば思考法術鎖が維持されえいるため再起動可能。

 思考法術鎖はdm発動値以下になると思考活動を停止するが、脳細胞の活動と似た性質を示す信号はdm結合値以上であれば出し続ける。


※形質魔力を使い切った場合は思考法術鎖と維持法術鎖は連結したままなので両方拡散せず、生体魔力帯性は保たれ、やがて形質魔力が充填されて起き上がる。


【ゾンビの再生能力】


 維持法術鎖は欠落した部分(欠落した魔力鎖)を埋めようとする性質がある。欠落した魔力鎖を埋めるのは欠落した魔力鎖と同じ魔力鎖でなければこの性質は働かない。つまりバラバラのdmや構造の違う魔力鎖を組み替えて欠落部分を埋める事は無い。

 ゾンビの肉体の欠損は即ち維持法術鎖の欠損である。上記の性質に従って法術鎖は欠損を埋めようとし、欠損した部分にはまる法術鎖を引き寄せる。この時引き寄せられる法術鎖は維持法術鎖であり、物質に依存しているため、法術鎖が引き寄せられると同時に肉体も引き寄せられる事になり、結果的に肉体が再生する。

「欠落した部分を埋めようとする際に働く法術鎖を引き寄せる力」は距離に反比例するため、例えば切断した指を遠くへ放り投げたりすると法術鎖を引き寄せる力は働かない。大雑把に切断面に指をくっつければ法術鎖を引き寄せる力が働いて誤差を修正し、元通りになる。


 法術引力:欠落した部分を埋めようとする際に働く法術鎖を引き寄せる力


 欠損を埋める、とあるが、厳密に言えば欠損部の断片(断面)に適応する法術鎖を引き寄せているだけである。

 ABCDEFG(完全な維持法術鎖)

 これが抉られ

 A(  )G

 となった時、引き寄せられるのはAと繋がっていたB、Gと繋がっていたFのみである。

 だが、BCDEFは一つ繋がりの法術鎖であるので、BとFを引き寄せるとBとFに繋がっていたCDEも一緒に引き寄せられる。



 ABCDEFG(完全な維持法術鎖)

 ABCEFG(Dが欠損する)

 再生:ABCEFG+D→ABCDEFG(Dが単独であればそれを優先して使い欠損部を埋める)

 腐敗防止:ABCEFG+AAAADAA→ABCDEFG+AAAAAA(Dが単独で無かった時、Dを含む魔力鎖があればそれを剥がして使って埋める)


【ゾンビの支配権】


 ゾンビの維持法術鎖には誕生時に魔力固定を受けた者、つまり創造者の共有鎖や記憶鎖がある程度混入する。この創造者の共有鎖と記憶鎖はゾンビ側からのアプローチでは構造の変化を起こさず、創造者の共有鎖が発する信号でのみ変化を起こす。従って共有鎖を通じて送った命令・思考をゾンビは変更されるまで保持し続ける(創造者の共有鎖と記憶鎖はゾンビの思考法術鎖に喰いこんでいる)。

 ただし命令・思考が保持され続けてもそれを実行する記憶鎖の活動は三日程度しかもたない。単調な同じ行動をとり続けるのは三日が限度だが、定期的に命令を更新したり、別の行動を命じたりすれば三日以上命令通りの行動を取らせる事ができる。

 創造者の共有鎖はゾンビの形質魔力鎖に組み込まれているので、ゾンビ側からも共有鎖の信号を発信できる。

 イメージの伝達が曖昧なのは共有鎖の構造が異なっていて情報を正確に送受信できないから。


【ヴァンパイアの魔力的構造】


基本的にはゾンビの物と同一だが、維持法術鎖の一部が欠落し易くなっており、放置していると維持法術鎖の一部が欠落して機能しなくなり、体の状態変化固定が崩れて腐敗していく。この欠落部分は他者の形質魔力に含まれる、欠落部分に相当する魔力鎖を摂取する事で一時的に埋める事ができるが、欠落し易い状態は変わらないため、放置していると再び欠落を起こす。

この欠落部分の魔力鎖は元々崩壊し易い魔力鎖であり、完全固定で復活したヴァンパイアは復活の過程で魔力鎖を壊してしまっている。

吸血・食肉によって腐敗を防止できるのは、体内に取り込んだ血肉が記憶鎖の信号によって生体魔力帯性を持ち、形質魔力を生産し、生産された形質魔力から必要な魔力鎖を維持法術鎖が受け取っているから。半日~数日経つと血肉は腐敗して形質魔力を生産しなくなる。



 ここでスケルトンの項に入るための前置きを一つ。



【魔力回復プロセス】


 保有魔力0の状態から純魔力を形質魔力に変換し終えるまでにかかる時間は密度に関係なく約12時間

 純魔力は最大保有dm量に対する割合で形質魔力に変換されていく

 自然状態では大気魔力から形質魔力に変換した魔力を順次体内に取り込んでいく。


 生物は生きている限り無生物魔力帯性以上の魔力密度、即ち生体魔力帯性を持つ

 本来の物質としての自然帯性を超過するための要求されるプロセスとして、自然状態では純魔力は体内に侵入できず、形質魔力にしないと体内に取り込めない。が、この侵入を拒む力は極めて微弱であるため、魔力操作が可能ならば無いも同じ。


ex.魔力を全て体外に出してからの自然状態での魔力回復プロセス

①無生物魔力帯性であると人体をみなした場合の密度・量の純魔力が瞬時に体内に入る

②体内に入った純魔力が形質魔力に変換される→法術鎖への平衡移動開始

③体外の純魔力を形質魔力に変換し、順次体内に取り込んでいく

④12時間で生体魔力帯性生体の最大密度・量まで回復終了



【スケルトンの魔力的構造】


基本はゾンビに同じ。ゾンビとの違いは下記のようになる。

肉が腐り落ちて骨だけになり体の体積が減っているため、保有魔力量も減っている。

法術引力が働く際にオドを追加で消費し、より強力な引力を発するようになっている。

思考法術鎖が全身に散らばっている。

思考法術鎖と維持法術鎖がより緊密に連結している。

思考法術鎖の出す信号が変化し、【魔力回復プロセス】で触れた「侵入を拒む力」が強力になっており、無生物魔力帯性分の魔力すら体内に侵入できなくなっている。この「侵入を拒む力」は魔力操作でなければ破れない。

「侵入を拒む力」を超えて体内に侵入してきた純魔力ならば形質魔力に変換可能。

維持魔力鎖がdm発動値を下回ると思考法術鎖が崩壊するようになっている。思考法術鎖と維持法術鎖が緊密に連結している事と関係していると思われるが詳細不明

創造者と共通の共有鎖の量がゾンビよりも少なくなっている

思考法術鎖が全身に散らばっているせいか思考能力が著しく低下しており、魔法の行使に必要なレベルのイメージができないため魔法は使えない。


スケルトンが骨だけになるのは骨以外に含まれる維持魔力鎖が機能しなくなるから。なぜ機能しなくなるのかについては不明




 以上。試行錯誤やら実験を省いて概要と結果しか出さなかったのにこの量。大量の発見のせいで大学の授業年数が一年伸びたぐらいだ、そんなものだろう。


 今回の本文は大部分が手元の設定資料のコピペなので所々変な部分があるかも知れません。こんな設定が小説の皮を破り捨てて踊り狂うような話はこれっきりです。


 ここまで真面目に読んだ方はお疲れ様でした。

 真面目に読もうとして途中で挫折して下までスクロールしてきた方もお疲れ様でした。

 最初から読むのを諦めてさっさとあとがきにやってきた方はおまたせしました。

 要約タイムです。


・dmは二つ結合して魔力基と呼ばれる結合体を作る。

・魔力基はAHEWFUSRGYの十一種類がある。

・魔力基は三つ結合して基礎的な意味を持つ。これを魔法コードという。

・魔法コードが更に複数連結して魔法鎖(魔力鎖)になり、形質魔力や、純魔力、魔法を作っている。

・法術を構築する魔力鎖は法術鎖と呼ばれる。

・要するに魔法コードを解析すればあらゆる魔法を効率100%で使えるようになったり、複雑な条件付をした魔法を使えるようになったり、新しい法術を開発したり、人体改造したり、色々できるようになる。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] FUSRGYがどこから来たんですか? それにAHEWFUSRGYが十じゃないですか? [一言] ふぃつくしいぃぃ
[一言] つまり…疑似永久機関も魔道銃も空中戦艦も作れる…ってコト!?
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