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ノーライフ・ライフ  作者: 黒留ハガネ
二章 蠢く者達
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五話 春

 長い冬が終わり、春になった。

 堀と土塁が完成し村の防備も整っている。食料はギリギリだったがなんとか足りて、餓死者凍死者が出る事もなく。ヴァンパイアが一人シルフィアの寝込みを襲ってエルマーに真っ二つにされていたがまあ何事もなく冬を越せてなによりだった。

 で、雪溶けと共に正式に種族毎の役割分担を決定。

 人間は専ら種まきと水やりと近場での狩猟。あとは皮をなめしたり、薪を集めたり、家を増築改築したり、要は普通に生活してもらう。しかし税の類を飢饉が起きた時のための蓄え以外一切とらないのは良心的ってレベルじゃねー。それもはじめ数年は免除だしさぁ。超優良労働者・ゾンビがいるからこそできる荒業だ。

 アニマルゾンビ・スケルトン、スケルトンは村の周囲での侵入者撃退。基本的に村に入ろうとする野生の獣を追っ払うのだが、有事の際の防衛(壁役)も担っている。

 シルフィア、エルマーを除けば一人になってしまったヴァンパイアは村に残り魔法を使った雑用。俺の研究で魔法が必要になった時は応援に来たりもする。

 ちなみにそのヴァンパイアはラキという少女で、シルフィアの信用を得て魔術訓練を始めている。クリエイト系魔術を身につけて離反反抗されると色々致命的だから、魔術を教えるというのは最上級の信頼の証だ。まあゾンビとリッチは離反もクソもないから最初っから魔術訓練させてんだけどな!

 そして余ったゾンビ、レッサーヴァンパイアは森の探索を開始。

 泉や湿地の場所、植生、各動物の生息域。東の森は王国―――今は帝国―――の東端だが、更に東には何があるのか。諸々調べてもらう。時間がかかる重要な仕事だ。

 一応統一規格の目盛りがついた簡易オリジナル測量器具も渡したから……それなりに正確な地図ができる……はず。専門知識もない素人仕事に期待はできんが、まあ何キロミールも狂った地図にはならんだろ。

 調査で見つかった新種の植物や動物は逐一ゾンビのテレパスで俺に報告され、目録に追加される。そして可能なら現物を村へ輸送させ、何かに使えないか調べるのだ。

 原生植物で主食になりそうな穀物があればそれを活用したいし、薬用になる植物、砂糖を作れそうな植物があれば是非欲しい。いや俺は食べれんが、村の人間が獣の肉をお湯で煮ただけのスープを飲んでいたり果物を丸かじりしたりしているのを見ているとなんか切なくなってくる。彼等には文明的な食生活を堪能してもらいたい。

 ああ塩も欲しいな。調査の結果海が遠いと分かれば岩塩を探すはめになるのだろうか。というか岩塩あるのかこの辺りは。

 大量に持ち込んだ羊皮紙も供給が無いからいずれ不足するだろうから紙が作れる植物の発見も急務だった。いやね、パピルスならあるが使い勝手が悪すぎるんだ。ちょっと水に濡れるとすぐダメになるしさ。

 欲しいものは多い。欲しい物が全て発見できるなんて思っちゃいないが、幾つかは見つかってくれると非常に助かる。探索隊の活躍に期待したい。

んでもって話は変わり研究の方だが、まーた新種のノーライフが出腐った。今度は名称変更ではなく新種。

 アワレにもずんばらりんとエルマーに真っ二つにされたヴァンパイアの首を落とし、せっかくだから死体でクリエイトスケルトンをしようとしたら妙なモンになった。

 骨にならない。腐りもしない。ゆっくりとだが負傷が自動再生する。自我はスケルトン並に薄く支配力が発生している。そんなノーライフ。

 なんぞこれ。

 不思議に思ってアニマル・レッサーヴァンパイアを首チョンパしてクリエイトスケルトンしてみると同じような状態になる。

 ゾンビからの再復活とヴァンパイアからの再復活では違う変化をするようだった。

 ゾンビとヴァンパイアの誕生の過程で違うのは魔力固定が不完全か完全か。もしや不完全固定か完全固定かで復活の際の性質が決まるのか、と思いアニマルゾンビやら新しく創ったアニマルレッサーヴァンパイアやらをかき集めて試してみたらビンゴだった。

 ヴァンパイアを不完全固定で復活させると、命名グールに変化する。

 グールは自動再生能力(弱)があり、チョンパした首がくっついて一見ゾンビの様に見える。前述した様にゾンビと違いスケルトン並に自我が薄く、しかし支配力は発生している。命令の効きが鈍いのはスケルトンに同じ。また魔力の自然回復ができず、魔力が切れると腐敗が始まりやがて骨になる。

 どうやらスケルトンに見られる超再生能力が腐敗の進行を止めているようだった。常に腐敗を止めるために再生し続けているため、何もしていなくても魔力の消費が早いという理屈だ。スケルトンと比較して倍ほどの早さで減っていた。

 一方ヴァンパイアを完全固定で復活させるとこちらは命名リビングデッドになる。

 特徴は魔力が自然回復しない。身体能力が高い。ヴァンパイアと同様に腐敗していく(防止策も同じ)。そして自我がはっきりしていて支配力が発生していない事。

 身体能力が高い、というのは魔力を消費して自動で行われる強化が原因らしく、こちらもスケルトンと比較して倍ほどの早さで魔力が減っていく。複数種の動物で実験した所、魔力密度にもよるようだが凡そ二倍前後の身体能力を発揮していた。

 首チョンパで死んでリビングデッドになるのだから復活時点で首と胴体が泣き別れになっている訳だが、目から得た情報で体を動かしているらしく頭がとれていると体の動きが滅茶苦茶だった。首を体に縫い付けてやると普通に動いたので、これからリビングデッドの首は復活後すぐに体に縫い付けようと思っている。

 ゾンビを不完全固定するとスケルトンになるのは当然として、完全固定するとこれは命名デュラハンになる。

 支配力・自我はスケルトンと同様、再生能力が無い代わりに身体能力が高い(リビングデッドに同じ)。ただし腐敗はしない。

 こちらも首はとれているのだが、行動を視覚や聴覚情報などに頼っていないらしく首がとれていても体は普通に動く。頭を潰しても動くもののやっぱり魔力が尽きれば停止する。で、リビングデッドと区別をつけやすくするためデュラハンの首はもげたままにしておく。

 首無しでふらふら動く死体は見ていてすんげぇホラーだった。夜道でばったり出くわしたら悲鳴を上げてしまうかも知れない、と呟いたら横で聞いていたロザリーが私も夜道でロバさんに出くわしたら悲鳴を上げてしまうかもと言っていた。いいだろ別にノーライフがノーライフ怖がっても。

 それでまあそんな感じに新種族が発見された訳だ。しかし一番使い勝手が良いのは今のとこゾンビなので種族ごとの研究の掘り下げは後になるだろう。わざわざ実験のためだけに使えないノーライフを増やしても管理が大変だ。

 いや実験後にさっさと処分すりゃいいんだけど、本格的に実験をするとなるとどうしても人間が必要になる訳で。たった百三十人の人間をバカスカ殺してノーライフにしたら流石に暴動が起きるわ。特に後から村に加わった難民連中は研究のために命を云々の契約をしてないからさ。

 大罪人が出たり寿命が来た人間が出たりしたら実験に協力していただく予定。そのへんは人間達を刺激しないよう、のんびり行こうと思っている。

 もう一つ冬の間に分かった事だが、ノーライフの動力源は魔力らしい。

 ある時リッチが魔法で水を煮沸していて魔力を使い切ったら動かなくなった。

 うわこりゃ死んだか、と慌てたが数分で何事もなかったかのように再起動。試しにもう一度魔力を空にさせ、無魔力空間を作って閉じ込めたら十分以上経っても再起動しなかった。しかし無魔力空間を解除すると数分で再起動。

 従ってリッチは魔力で動いている事が分かった。十数分ではなく二時間三時間と無魔力空間に入れておいた場合も再起動できるかどうか興味があったがそれは試さないでおく。本当に動かなくなったら困る。

 ゾンビやヴァンパイアに魔力を捨てさせても同様の結果になり(魔力を体外にポイ捨てするだけなら魔力操作訓練は必要ない、魔力覚醒直後の俺でもできた)、ある程度保有魔力を減らした後で極端に激しい運動をさせてみた所魔力回復が遅くなったので、魔力が運動エネルギーとして使われているのだという結論に至った。

 物理的に有り得ない体質になろうが、運動エネルギーが無限に沸く事はない。当然っちゃ当然の話だ。まだ魔法や魔力の原理・性質については不明な部分ばかりだからやりようによっては無限にエネルギーを取り出せるのかも知れんがそれはともかく。

 魔法を使わずとも魔力をエネルギーとして使う事ができる。これは実に興味深い。

 考えてみればスケルトンの超再生も保有魔力密度に関係無く魔力を消費して起きている魔法現象な訳で、研究次第では魔法行使に必要な最低密度の引き下げも可能、かも知れない。どういう道順でそれを実現するのかのビジョンはさっぱりだが、まあこれも気長に行くつもりだ。

 ちなみに後日エマーリオの研究資料の走り書きに推論としてだが俺が発見したのと全く同じ事が書かれているのを見つけて吹いた。死んだ後もその頭脳を見せつけてくれるエマーリオがもうどうしようもなくエマーリオだった。




 内政と研究の折衷で話を進めていこうとしたのに研究ばっかになっていたでござる。話についてこれているでしょうか。

 あ、NAISEIではありません内政です。現代知識はそれほど利用しません。急激な発展もしません。次話からは内政・ストーリーメインにできるといいなと思っています


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