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ノーライフ・ライフ  作者: 黒留ハガネ
四章 コインの裏表
109/125

十一話 魔王城にのりこめー^^


 どんよりと曇った空から雪が舞い降りる。時折谷間を駆け抜ける風に煽られて、ずらりと並んだ討伐隊の装備の側面を白く装飾した。

 進軍七日目の昼、無事に魔王城前に到着した。魔王城の現在地は両側を切り立った崖の際だ。魔王城前でうろついているスケルトンやゾンビ、岩を積み上げて作られた物見櫓のようなものの陰から様子を伺う大量のデュラハンやリビングアーマーを見る限り、数の上では互角に思える。

 古来、城攻めには最低でも攻撃側に防衛側の三倍の兵力が必要だとされている。もっと言えば城攻めなどするべきではない。どうしても城攻めが必要な場合でも、圧倒的兵力差を見せつけて降伏させるか、調略内通で内側から崩すかがセオリーで、三倍の兵力で攻めるのは最終手段だと言える。

 ところが魔王の下で死霊魔法により拘束・統率されたアンデッドは降伏しないし、調略が効く相手でもない。三倍の兵力も用意できなかった。ここまで来て撤退は論外。やるしかない。


「諸君!」


 最後の戦いを前にして、小岩の上に仁王立ちするサフカナが演説を始めた。その立ち姿は進軍前と変わらず堂々としていて、気負いを感じさせない。まるで戦場こそ日常だと言わんばかりだ。


「諸君は何のために戦うのか!? 世界のためか! 家族のためか! 国のためか! あるいは名誉のためか! 答えは皆違うだろう! しかし! 『勝利する』! この一点において我々の目的は一致すると私は信ずる! 諸君の中にはあの魔王軍を見て不安を抱える者のいるかもしれない! 勝利は難しいと感じているやも知れん! しかし考えてもみるが良い! 魔王は我々を全滅させなければならないが、我々は魔王一人を滅ぼせばよいのだ! これほどの優位があろうか! さぁ、魔王の首を獲れ! ――――狩りの時間だ!」


 皇帝と共に戦士達が武器を空に突き上げる。雪崩を起こしそうな大声が谷間を揺らし、戦端が開かれた。











 ゼルクラッドの目には、数人の近衛を供に先陣を切る皇帝の、腰だめに構えたエクスカリバーから魔力が溢れ出るのが見えた。

 一閃、光の奔流が放たれる。神々しさすら感じられるそれの直撃を受けたアンデッドが数十体まとめて吹き飛んだ。


「押し開け!」


 皇帝の号令に合わせ、穴の開いた戦線に戦士達がなだれ込む。火球や氷槍が宙を飛び交い、炸裂した魔法が地面を抉り岩を割った。意気軒昂な討伐隊に反し、魔王軍は寒気がするほど静かだ。

 ゼルクラッドは詠唱しながらデュラハンが振り下ろした錆びた剣を右の刀の背で受け流し、そのまま流れるように鎧の隙間に突き込んだ。捩じって傷口を広げ、同時に左の刀で切り付ける。しかし刃が途中で止まって食い込んだ。デュラハンは自分に突き刺さった二本の刀をがっしりと握りしめ、覆いかぶさってくる。ゼルクラッドは咄嗟に体を入れ替え、横から大剣を振りおろしてきたリビングアーマーにデュラハンを斬らせた。真っ二つに唐竹割りにされたデュラハンが痙攣しながら崩れ落ちる。


≪ゆうていみやおうきむこうほりいゆうじとりやまあきらぺぺぺぺぺ≫


 甲高い割れた声でぞっとするような呪文を呟きながらじりじりとリビングアーマーが迫る。リビングアーマーは高位のアンデッドで、特徴は一切の攻撃を無効化するフルプレートアーマーと、余裕で音速を突破する目にも留まらぬ突進。まともに相手にできない。

 が、そんなリビングアーマーもゼルクラッドが唱えていた土属性の詠唱を完成させると、足元に空いた落とし穴に為す術もなく落ちていった。半分になったデュラハンをその中に蹴り入れると、ちょうど隣に転がり込んできたレインが自分に組み付いていたスケルトンを巴投げで引きはがし、穴に投げ落とした。更に周囲にいた精霊使いや戦士が次々とアンデッドを穴に投げ込んでいき、そのまま流れるように誰かが唱えた土属性魔法であっというまに埋め立てられた。連携訓練の賜物だ。


「ハッハー! ざまあねぇな! 墓地に逆戻りだぜ!」

「余裕だな、レイン」

「あたぼーよ!」

「……頼もしい限りだ」


 強がるレインの盾を握る手が震えている事には触れないでおいた。二人は同時に振り返る。跳びかかって来たオオカミのアニマルゾンビをレインが盾で弾き、空中で体勢を崩したアニマルゾンビはゼルクラッドの二刀で四分割された。自分の動きに合わせられるほどに成長したレインに、ゼルクラッドは訳も無く嬉しくなった。戦場でなければ酒でも酌み交わしたいところだ。

 しかしここは戦場である。二人はすぐに別れ、アンデッドの群れと切り結んだ。常に隙間なく張られた防御系精霊魔法と巧みな連携で、討伐隊は大きく戦線を崩す事もなくじりじりと魔王城に近づいていく。

 皇帝は最前線でゾンビやデュラハンを千切っては投げ千切っては投げしていた。剣の一振りでぽーんと五メートルもゾンビが飛んでいくのは一体どんな膂力をしていれば可能なのか。


 討伐隊の戦士達は即死でもない限り水属性使いのヒーリングで何度でも戦線に復帰し、戦い続けた。どちらが不死身なのか分からない、と益も無い事を考えながら、ゼルクラッドはまた一体ゾンビの首を刎ねた。刃が欠けて曲がった刀に密かに古代魔法をかけて万全の状態に修復し、横合いから掴みかかってきたスケルトンに袈裟斬りを入れる。

 ちらりと上を見ると、魔王城の一角から言葉にするのも悍ましいレイス達が次々と湧いて出て、その身の魔力を火球に変えて討伐隊の頭上に絨毯爆撃をしているのが分かった。今の所爆撃は全て風や水の壁に防がれているが、爆音と強烈な光は確実に人間の精神を摩耗させている。弱いスタングレネードを浴び続けているようなものだ。事実、前衛を支える戦士達の動きは精彩を欠いてきている。


 ゼルクラッドに危機感が募った。魔王城前に到着し、陣形を包囲に切り替えつつあるが、想定よりもアンデッドが粘っている。肉体よりも先に精神がおかしくなるかもしれない。退却とまではいかずとも、一度魔王城から距離を取るべきだと思ったが、作戦指揮は皇帝に一任されている。ゼルクラッドはただの一兵卒として戦うだけだ。


「おっとぉー、ゼルクラッド発見! 魔王様のお達しだ! お気の毒ですが冒険の書は消させてもらうぜー!」


 唐突に、戦場に似つかわしくない明るく快活な声がした。

 魔王城の窓からひょいと出てきた金髪の男は、ゼルクラッドと同じように二本の刀を持っていた。魔王城の中から現れた時点でアンデッドなのは間違いない。しかしゼルクラッドの目には、魔力が結界のように幾重にも男の体を覆っているのが分かった。明らかに他のアンデッドとは違う。


 そのアンデッドは、まるで散歩でもするように気軽にゼルクラッドに向かって歩いてきた。二刀アンデッドの異様さに気付いているのはゼルクラッドだけだ。ゼルクラッドのそばに侍る精霊達も気付いているようだったが、緊張した顔で二刀アンデッドを見るだけで何も言わない。

 言葉からしてゼルクラッドを狙っているようだが、それ自体は何も驚く事ではない。狙われる心当たりは多すぎる。


 二刀アンデッドは隙だらけだった。緊張も警戒も全く見られない。手に持った獲物を除けば、街中の雑踏に紛れ込んでも違和感はないだろう。防具も市井の人間が日常で着るようなもので、防御力があるようには見えない。

 ゼルクラッドは先手をとって打ち込もうとして、踏みとどまる。隙は大きいが、丹念に観察してみると、打ち込みに対してギリギリ返し技を放てない事もない、というレベルに抑えられている。試しに構えを変えてみると、二刀アンデッドは微妙に歩き方を変えた。

 確信する。わざと隙を作って誘い込んでいるのだ。

 恐ろしい腕前のアンデッドである事を悟るが、それならば馬鹿正直に斬りかかる事はない。ゼルクラッドはサラマンダーに言った。


「あのアンデッドに全力の一撃を頼む」

「熱い血燃やしてけ!」


 会話にならないのは慣れたもの。後退して距離をとりながら詠唱を始める。唱えるのは火属性Lv3スペル「フレイムトルネード」。当たれば骨まで燃え尽きる。

 詠唱開始と同時に二刀アンデッドが走り出した。地面を滑っているのかと錯覚するほど見事なすり足で、上体に全くブレがない。進路上にいた精霊使いと戦士が数人、二刀アンデッドが持つ剣に吸い込まれるようにして片手間にバラバラに切り裂かれた。

 足止めに数本投げナイフを放つが、ほんの半歩進路をズラすだけで失速すらなく躱された。


 達人級だ。それもゼルクラッドがこれまで会った事のある様々な「最強」と比べてさえ、頭一つどころか、大人と幼児ほども差がある。

 既に隙は消えていた。見ただけで分かる、体幹が信じられないほど安定している。城砦が迫ってくるような底知れない威圧感。

 呼吸が乱れる。剣の柄を握る手に汗が滲み、足が震えた。頭の中で危険信号が大音量で鳴り響く。気を抜けば背を向けて逃げ出してしまいそうだった。

 それを信念でねじ伏せ、あと数歩で間合いに入る、というところで詠唱を完成させた。


「フレイムトルネード――――!?」


 ゼルクラッドは驚愕した。二刀アンデッドの魔力の結界に触れた瞬間、サラマンダーが押しつぶされるようにして消滅したのだ。呪文を行使する精霊が消えたため、当然魔法も不発に終わる。

 コマ落ちしたような動きでゼルクラッドの眼前に迫る二刀アンデッド。ゼルクラッドは自分の魔力が結界に押し出されて消えるのを感じ、視界の端でウンディーネとシルフとノームも消滅するのを見た。


「首おいてけ!」

「くっ!」


 二刀アンデッドが首を狙って放った二連撃を、ゼルクラッドはなんとか受け流した。しかしあまりにも強烈な斬撃は完全にはいなしきれず、体勢は崩れ、刀が宙を泳ぐ。直感した。このままでは次の一撃で自分は死ぬ。

 ゼルクラッドは歯を食いしばって神速を使い、同時に古代魔法で身体強化をした。漲る力、モノクロになる視界、消える戦いの音。力づくで刀を引き戻し、死の刃を受ける。火花が散り、丸太で殴られたような衝撃を受けて吹き飛ばされた。


 地面を数度バウンドして転がり、素早く立ち上がる。自分の肋骨が折れ、肺に刺さっているのをどこか他人事のように感じた。刀はあろうことか鋭利な断面を晒して柄のすぐ上で断ち切られている。口の中に液体がせりあがるのが分かったが、神速の影響で味覚が封じられているため胃液か血なのかは分からない。


 ギリギリで死亡は回避したものの、何も解決していない。死神は変わらずもののついでに進路上の人間を切り刻みながら人外の速度で近づいてくる。戦線に穴が空き、頭上に張られた精霊魔法も崩れ、爆撃が防御を抜けて地面に着弾し始めた。たった一体の強力なアンデッドのせいで討伐隊は壊乱しかけている。


 ゼルクラッドは二刀アンデッドに皇帝が斬りかかっていくのを見て心臓が止まりそうになった。よせ、と叫ぶ前に二人は接触し、聖剣と死者の剣が交差する。

 エクスカリバーは空を切り、皇帝の首から血が吹き出し、腹には刀が突き刺さり背中から飛び出す。ところが皇帝は致命傷を意に介す事なくそのまま返す剣で二刀アンデッドの首を狙った。


 驚くべき事に、二刀アンデッドと皇帝はほんの一瞬ではあるが鍔ぜり合った。それだけで皇帝の類稀な技量と力、胆力が分かる。が、やはり実力差は目を覆うほど。次の瞬間には皇帝はあっさりエクスカリバーを弾き飛ばされ、血をまき散らしながら錐もみ回転して高々と吹き飛び、崖の下に落ちていった。


 それを見て、皇帝の安否ではなく士気の低下を真っ先に心配したゼルクラッドは責められるべきではないだろう。戦線が崩壊しかけている現状、総大将が生死不明となれば士気まで低下し、最悪潰走まであり得る。

 現状、魔王城はところどころ流れ矢ならぬ流れ魔法で崩れてはいるものの、大きく崩落はしていない。何よりもアンデッドに弱る気配がまるでない。魔王は健在だ。ここで撤退すればなんのための戦いだったのか分からない。


 不幸中の幸いか、乱戦のせいで皇帝が一蹴された事に気付いた者は少数だったらしい。それも時間が経てばすぐに広まる。なんとか事態を好転させなければならない。皇帝を助けに行き、生存を知らしめるか? 魔王の首級をあげるか? 精霊魔法も古代魔法も失い、大きなダメージを受けたゼルクラッドにはどちらも困難だった。

 考えた時間は数秒あったかどうか。もっと差し迫った「不幸中の不幸」が文字通り目前にやってきていた。


 二刀アンデッドは自分を狙っている。逃げたら更に被害が広まるだろう。

 ゼルクラッドは覚悟を決め、予備の刀を抜いて構えた。ダメージのせいで体幹が安定しない。刀の切っ先はふらつき、眩暈がした。

 それでも何か一手。好転の足掛かりを作らなければならない。二刀アンデッドと刺し違えてでも一撃入れれば、いくらか状況は楽になるだろう。


 既に一度死を経験しているからか、具現化した死のような刃が迫るのを見ても精神は静かに凪いでいた。受けるのもいなすのも不可能。ゼルクラッドは前に出た。

 一刀がゼルクラッドが構えていた右の刀を割り箸のようにへし折り、そのまま胴を真っ二つにする。

 もう一刀が回避も許さず容赦なく首を刎ねた。

 直後、執念の成した技か、頭無しの体が振るった左の刀が二刀アンデッドの腹を切り裂く。

 それを胴から離れた頭から見届け、ゼルクラッドの意識は途切れた。


 崩れ落ちるゼルクラッドの首なし死体。その指に嵌った精霊の指輪が音も無く砕け、不可思議な声を発する。


《おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました。さいごの ふっかつを おこないます》












「はっ!?」


 気が付くとゼルクラッドは血しぶきと怒号に包まれた凄惨な戦場に立っていた。

 記憶が確かならば、翌日の魔王城攻城戦に備えて就寝したところのはずだ。それがなぜか戦場に立っている。ボロボロの防具に染みついた血のりと刀身のない予備の刀が激戦を示しているが、体は全く平常そのもので、魔力も充実している。消耗した装備と体がいかにもちぐはぐだった。まるで肉体だけ時間を巻き戻されたように感じる。


 状況は戦争を示している。釈然としないながらも頭でも打って記憶を飛ばしたのだろうと無理やり納得し、ゼルクラッドは混戦の中に飛び込んだ。精霊使いにトドメを刺そうとしていたデュラハンの背中に斬りつけながら詠唱する。


「天に吹き上がる焔の……ん? サラマンダー?」


 違和感に気付き、詠唱を中断した。いつでも傍にいるはずの精霊達の姿が無かった。見れば指に嵌っているはずの精霊の指輪もない。

 困惑が深まる。訳が分からない。一体何が起こっているというのか。


 ゼルクラッドは場当たり的に戦いながら飛び交う怒号と悲鳴に混ざった情報を拾い、大雑把に状況を把握した。

 途轍もなく強い二刀流のアンデッドが現れ、被害甚大。皇帝生死不明。二刀アンデッドは暴れるだけ暴れて今は姿を消しているが、陣形も指揮もガタガタで、押し返されている。


 頭を抱えたくなった。ほとんど最悪の状況だ。

 撤退だけなら難しくない。アンデッド達の動きは押し返す事に集中していて、包囲しようとする気配は見られない。魔王城の一角から湧き出してきて自分の体を火球に変え爆撃するレイスも散発的で、今から撤退に移れば半数は生き残れるだろう。

 しかし撤退してどうなるというのか。魔王軍の数は減っているようだが、討伐隊の数はもっと減っている。一度退けばもう魔王城に近づく事すら難しいだろう。ここでの撤退は敗退だ。

 完全に押し戻される前に何か一手打たなければならない。その一手があるか否かが決め手になる。ゼルクラッドは自分が今歴史の分水嶺にいる事を強く自覚した。


 精霊が消え、精霊の指輪もなく、連携も最早望めない。逆転の奇手と成り得るのはただ一つ、古代魔法だ。エマーリオの警句に従いこれまでひた隠しにしてきたが、事ここに至ってまで隠す必要があるだろうか。

 魔法を大っぴらに使うと不幸な事故で死ぬというが、事故が起こる前に普通に死にそうだった。


 自問する。ここで命を賭ける価値はあるか?

 そして自答した。ここで賭けなければ命の使いどころなど無い。


 冷徹な損得勘定と言うべきか、我が身を投げ打つ正義感と言うべきか。とにかくゼルクラッドは決断した。

 全身の魔力を集め、イメージする。狙いはレイスが湧きだしている魔王城の天守近くの一角。


「壊れろ!」


 古代魔法というものは応用の幅が呆れるほど広く、イメージさえできればエネルギー保存則を守る限り大抵なんでもできてしまう。

 ゼルクラッドが放った不可視の破壊の波は上空のレイス達を掻き消しながら魔王城に直撃し、その一角を轟音と共に吹き飛ばした。


「なんだぁ!?」


 大音声に溢れる戦場にあってもなお耳を打つ音に、生死問わず全員の目が魔王城に向いた。魔力の見えない者には何の前触れも無く魔王城の一部が爆発したようにしか見えないだろう。

 魔王城から身の毛もよだつ金切声が響いた。黒板を爪で引っ掻く音を百倍に増幅したような音とも声ともつかないそれを聞いた人間は半数が意識を飛ばした。アンデッド達も一斉に体をガタガタと震わせ、動きを鈍らせる。

 ゼルクラッドは悲鳴を上げながら魔王城から逃げ去る、魔王らしき禍々しい魔力の塊を見た。仕留めきれなかったが、どうやら賭けに勝ったらしい。


 安心するのも束の間、魔王城が破壊された箇所から亀裂が広がり、地響きを立てて崩れはじめた。何かに誘爆でもしたのか城内から次々と爆音が聞こえる。


「崩れるぞ!」

「魔王城が崩れる!」

「追撃はいい! 退け! 退けぇ!」


 討伐隊は金切声で前後不覚になった仲間に肩を貸し、雪崩をうって撤退を始めた。ゼルクラッドも逃げようとするが、まだ音波攻撃で脳がグラついていて上手く走れない。人波に突き飛ばされ弾かれて、どんどん外へ押しやられた。

 ゼルクラッドは討伐隊の最後尾を慌てて逃げていくレインを見つけた。肩を貸してもらおうとよろよろ近づく。しかしレインはゼルクラッドに気付いた様子が無く、手を伸ばしたゼルクラッドを突き飛ばしていった。


 ゼルクラッドは大きく目を見開き、叫び声をあげながら崖の下に落ちていった。


今回のあらすじ


ゼルクラッド「魔王を倒したい……」

ロバート「声が小さいよ! もっと大きい声で!」

ゼルクラッド「魔王を倒して世界を平和にしたい」

ロバート「ぜんっぜん気持ち伝わってこない! もう1回!」

ゼルクラッド「うおおお! 古代魔法だ喰らえオラァ!」

ロバート「はい死んだ! 今俺死んだよ! ちょっとだけ死んだ!」

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