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5:聖戦の始まり その3

 ―炎の巨人の戦斧がレイダンに直撃する寸前。


光臨神舞(ラ・ラ・サクル)


 離れた位置にいるオルレアン王が神聖魔法を唱える。


 金色に輝く幾何学模様の魔法陣が自分の周囲に展開した。


 次に神が所有する神剣を一時的に借り受け、現世に召喚する。

 パチパチと魔法陣から煌めきを放出しながら、神界から現世へとソレが姿を現した。

 神剣と既に展開してあるサークルが融合し、剣の生えたいわゆるチャクラムの形に変化する。

 緩やかだった回転は速度を上げていく。


 キュインキュインと回転音が加速度的に増していく。


 突然、音が止まる。


 次には炎の巨人がバラバラの輪切りに切断され、崩れ落ちた。

 異形の死を確認した後、剣がサークルから分離した。


「助太刀感謝致します」

「なに、君が盾で私が剣、・・・相応の役目だよ」


 レイダンは自分の持つ破邪の光を持つ剣とはまた違う美しさを持つ神剣を見る。


「神々しいですね」

「ああ。これが神が打ち、神だけが持つ事が許される神剣。それを私は今借り受けている。とても名誉な事だ。・・・試してみようか」


 一振り。


 膨大なエネルギーが大地を切断。

 数km先まで届くその破壊力に、2人は高揚する。


「・・・これなら高みの見物を決め込んでいるクズどもを殺せるかな」

「行きましょう」


 2人の背中に白い翼が生える。

 元々存在しない部位なのに、自然と翼の動かし方が分かる。


 異形達の増援だろうか、神の遺棄地を目指し空を駆ける途中、空中戦が始まった。


 鳥型の異形が嘴を開き、光線を放った。

 オルレアン王は回避を選択するが、光線の追尾が背中を襲う。

 パリンと燐光と共にサークルが砕け散る。

 予想外の攻撃に意識がそちらに向いてしまう。

 その隙に、異形達が漆黒の羽根を小刻みに震わせて射出する。

 一本一本が意思を持つように飛び回り、オルレアン王の体を包み込み視界を奪う。


「今ダ!!」


 号令に猛毒を塗った槍を握る他の異形達が一斉攻撃を行う。

 だがそれもサークルに無効化されてしまった。


「ッ!? 躱セッ!」

「遅いッ!」


 殺気を感じ取った異形が仲間へ警告する。

 オルレアン王の背後から現れたレイダンの横薙ぎに反応出来なかった異形達が細切れにされ風に流されていく。


「ッキェエエェェエエッ!!!」

神鳴(カミナリ)


 堕ちる仲間たちに怒りを燃やし怒声を上げる異形の神速の槍さばきを回避しつつ、オルレアン王が魔法を唱える。


 雲ひとつない空に神界が顕現。

 大気を爆縮させながら、そこから数え切れないほど無数の女の手が現世に侵入し、神性を持つ雷を幾度も落とす。


 轟音を放ちながら落ちる雷に紙一重で回避を続ける。


「ギッ!!!」


 砕かれた大地が散弾の様に一匹の異形の体を直撃した。

 対したダメージでは無かったものの、バランスを崩す。

 体勢を立て直す間もなく、自身の数倍の大きさの雷にのみ込まれた。

 やがて同じ様な状況に落ちた者や、気力と体力が尽きた異形から次々と飲み込まれていく。

 時間にしては恐らく1分ほど。

 目を覆うほどの光と轟音が止んだ後、そこには異形1匹として残っていない地獄に生まれ変わった。


 いや、違う。

 荒れ果てた大地からピョコンと可愛らしく芽が飛び出す。

 それを皮切りに凄い勢いで芽が芽吹き、育ち始める。

 やがて花や植物が辺り一面に咲き誇る聖域へと生まれ変わった。


 そこから離れた場所にいた異形達は、仲間を殺した災厄とも言える攻撃から、怒りや恐怖もなく、ただ安堵した。


 だが王の次の一言がソレすらも無に変えた。


喝采(ア・プロダール)


 空に静止していた女の手が霧散し、今度は無数の口が神界から顕現する。

 艷やかな口が開き、大きく深呼吸・・・そして吐き出す。


『              !!!』


 死の喝采が異形を襲う。

 声にならない声は大気を通さず、直接脳に死を伸ばす。

 どれだけ耳を塞いでも意味はなく通り抜ける死にある者は頭を掻き毟り、ある者は頭部から脳を取り出そうと頭に剣を突き立て、ある者は自分の叫び声で旋律を掻き消そうと発狂する。

 耐えようと足掻く者たちは例外なく、誰もが最終的にはガクガクと体を震わせ、穴と言う穴から出血を伴いながら死に至った。






「ッ、〜〜ッッ゙!!」


 浮遊島から戦況を伺っていた王を守護する異形が10人の内の1人、カラスがカオナシにも関わらず怒りに顔を歪め、額に血管を浮かべる。


「貴ッッ・・・様ァァァッッ!!!」

「お仲間が殺されて怒ったのかな?」


 高機動を誇る鳥型の異形が続々と死に絶える堕ちていく姿に、カラスが咆哮し、オルレアン王は嘲笑する。


 空を高速で駆けるオルレアン王でさえまだ米粒程にしか見えない浮遊島から、カラスが一息で距離を詰める。


「ッ?!!」


 驚愕に防御の構えを取る間もなく、接近を許した。

 生えた白い羽根を重ねに重ね、切れ味のみを追求した羽根剣が神を降ろした肉体を捉える。


 肉が切る感触が手に伝わり、ほんの少し遅れてパリンと防御のサークルが弾ける音が耳に入る。


 肩から腰へ斜め切りに振り下ろされた剣が体を両断する。


 ズズズとずり落ちる体を・・・


「おっと、危ない危ない」


 薄く笑いながら瞬時に再生した。


 血に染まった煙を体から吹き上げ、ボロボロになった服を破くと傷一つない上半身があらわになった。


「効かないよ?」


 煽りにカラスが再び攻撃に移ろうと構える。


「ん?」


 その時、尋常ではない殺気にその場にいた全員が視線を上に向けた。


 やはり見上げる先は神の遺棄地であり異形達の浮遊島。


 そして、


 その更に上に浮かぶ、異形の王。


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