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黒の悪魔が死ぬまで。  作者: 曖 みいあ
第一章:あの日、再び
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猫舌とケチャップ



「まだ俺の分残ってる?!」


「…ギリギリ、ね。」


バタバタと玄関から戻ってきたアオ兄。

すっかり息が上がっている。…本当に、焦って戻ってきたらしい。


「セ〜フ!なんだ、ヨウったらやっぱり優しいのねん。」


…「あと1分、遅かったら食べてたよ。」


え〜。ヨウ君ったらつめた〜い。

なんて口を尖らせつつ。アオ兄はニコニコと手を洗って、俺の正面の椅子に腰掛けた。



「いっただっきまーす!

 ...うん、冷めても美味しい!いや、やっぱ冷めてるから美味しい!」


とっくに冷めた野菜スープを、嬉しそうに頬張るアオ兄。

そんな姿を見て、


「ぶっ。」


ついさっき、全く同じ感想を持った猫舌の自分を思い出し


(やっぱり兄弟だな)

と、我慢できずに笑ってしまった。


「え?何?俺顔に何か付いてる?」


不機嫌だったはずの俺に突然笑われ。

アオ兄は、焦ったような困ったような顔になった。


…それがまた面白くて


「付いてるよ。思いっきりケチャップが。」


今朝の一連のイジワルを思い出し、ちょっとした仕返しを続けた。




「えー!?どこどこ?どこについてんの?!」


近くにあった布巾で、ゴシゴシと顔を拭うアオ兄を見つめる。


アオ兄…


…最近ますます、死んだ父さんに似てきたな。



「そんなんじゃ…いつまで経っても、取れないよ。」


幼い頃に死んでしまった母さんの顔は、正直あんまり覚えていないけど。

7年前のあの日、黒の悪魔による大惨事、リビ山での【黒の誕生】に巻き込まれて死んだ…父さんのことは。今でもはっきりと覚えてる。


…今のアオ兄の目元なんて、まんま父さんのそれだ。



「もうさすがに取れたよね?ね?」


アオ兄は、チカラも見た目も性格も…すべて揃った”完璧なお兄さん”って、周りは言うけど。


実際のアオ兄は、俺より少し子供っぽい所があって。


…いや、少しどころじゃないかも。



そんな、俺の前では”完璧な兄”だけではないアオ兄を見ながら、

俺はいたずらが成功したような、満足した気持ちになった。


「はいはい、ケチャップ…だったっけ?取れた取れた。

それはそうと…早く食べなきゃ、昼までに薪割り、終わらないよ?」


そう、にこやかに告げて。ひとまず、

”顔面ケチャップ探しの旅”からは、解放してあげた。



「…はっ!

 今日って、薪割り担当も俺じゃん!?」


新しく出てきた”薪割り”というワードに、ハッとしたアオ兄は、

俺に追いつかんばかりの勢いで、必死にパンに食らいついた。





ーーーー【黒の再来】まで、あと9時間と58分ーーー


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