交わらない
「レン!元気にしてたか?大丈夫か?
お前、その隊服…ほんとに、ホワイトノーブルに…?
それにお前…
禁色の情報を流してた内通者だって…ほんとなのか?
そうだ!ヒマリは!無事なのか?!
ホワイトノーブルに、何かされてないか!?」
俺は、まさかこんな所で
レンに会えるなんて、思ってもいなかったから
頭に浮かんだことを、何も考えずに、
息継ぎをするのも忘れて、まくし立てるように話しかけた。
「…。」
「レン…?
どうしたんだよ?ヒマリは…。」
「お前がっ!!
今更、ヒマリの心配なんかするな!!!」
黙って聞いていたレンが、突然、
大声で叫ぶように、俺に、そう言った。
「…はっ?それ、どういう…。」
再会を喜んでいた俺は、
予想外のレンの反応に動揺する。
「しらばっくれるな!!
【黒の再来】の瞬間…俺とヒマリは、見てたんだ。
ヒマリの叔父さん…シゲ叔父さんが…
お前のチカラ、真っ黒の稲妻に貫かれて、黒焦げになるところを!」
「なっ!それは違うっ!あれは…!」
「うるさい!この目で…
黒焦げになっていく叔父さんを、ヒマリと見てたんだ!」
レンは怒りで、声が震えたまま、俺に向かって叫び続ける。
「ヨウ…お前、”禁色”のヒマリを、狙ってたんだってな!?
お前が、ヒマリのような”禁色”を集めて
真の復活を企む、【黒の悪魔】だったなんて…。
7年も一緒にいたのに、全然気が付かなかった…っ!」
レンは、憎悪を隠そうともせずに、俺を睨みつける。
「だけど、残念だったな。
ヒマリも俺も…
もう、ホワイトノーブルで、真実を知ってる。
二度と、お前の嘘には、騙されない。」
今まで一度だって見たことがない、
レンの、憎悪に染まった鋭い視線に。
俺は、無意識に後ずさりしながらも、必死で弁解する。
「違うんだ!
あの日…叔父さんはっ!ブレイズに、殺されたんだよ!」
「ブレイズ…隊長だって…?」
俺の言葉に
少しだけ、レンが驚いた顔をした。
「そうだよ!
悪いのは、全部ブレイズなんだ!
俺たち、騙されてたんだよ!」
俺は、なんとか分かってもらおうと、
必死になって、叫び続ける。
「ホワイトノーブルが、悪い組織なんだ!
ブレイズが、あの日、ヒマリを狙ってたんだよ!」
俺の叫びを、黙って聞いていたレンは…
今度は、悲しそうな顔で言った。
「嘘をつくにしても、
もう少しマシな嘘をつけよっ!!!
ブレイズ隊長は、俺たち2人を…
お前の攻撃から守って、逃してくれた恩人だぞ…?
隊長が守ってくれなかったら…
今頃2人とも、叔父さんみたいに…死んでたんだぞ?」
悲痛な叫びの後、
レンは、俺から視線をそらすように、顔を伏せた。
「嘘じゃないっ!ほんとなのに…っ!!」
レンと…交わらない、気持ちと視線。
俺は、どうしたらいいのか焦って
ふっと、シオンと握ったままの手が、視界に入った。
「そ、そうだっ!
シオンと…こいつと、手を繋げば!
心の声が、読めるようになるんだよ!ほら、繋いでくれれば…!」
俺は、まだ、距離のある
顔を伏せたままのレンに、近付いていく。
すると、顔を伏せたままで、
レンが、冷たい声でつぶやいた。
「…そうやって、俺に近付いて…どうするつもりなんだ?
あの、真っ黒の稲妻で…俺も、黒焦げにするのか?
ヨウの顔して…これ以上…頼むから、やめてくれ。
お前は…もう、ヨウじゃない。ただの【黒の悪魔】だ。」
そう言い切って、顔を上げたレンは…
今にも、泣きそうな顔をしていた。
「レン…っ!違う、んだ。
ほんとに、俺じゃ…っ!!!」
俺も、同じように。
今にも泣いてしまいそうになって、上手く言葉が出てこない。
そんな俺の手を、握ったままだったシオンが
握ったままの手に力を込めて、そっとつぶやいた。
「…ヨウ、落ち着いて。
よく見るんだ。彼の、気持ち。」
(レンの…気持ち…?)
意識の外に追いやられていた、
レンの周囲を舞う、薄紫の付箋に、目をやると
【ヨウのこと…信じちゃ、だめだ。】
【ヒマリは、俺が守る。】
【禁色の情報を流した内通者?なんのことだ?】
【ホワイトノーブルは、黒の悪魔を倒す、正義だ。】
【ヨウが…悪魔なんだ。きっと…。】
【ヨウを、信じたい、のに…!】
「レンは…内通者じゃない…。
ホワイトノーブルの裏の顔も、”知らない側”…。
それに、俺のこと…まだ…!」
俺が、ポツリと吐いた言葉を聞いて、
無表情だけど、満足そうに、シオンは言う。
「ちゃんと、彼の気持ちを受け止めて。
そして、ヨウの気持ちは
頑張って、言葉にしないと…伝わらないよ。
…俺と、叔父さんみたいに。」
「シオン…!」
そうだ。ついさっき
俺が、シオンに言ったんじゃないか。
『声に出した方が、想いは伝わる』って。
(声に出したほうが…。
よし、だったら…!!)
俺は、初めて…実践で、
チカラを使う、覚悟を決めた。
その時
「レン!
違うわ、ホワイトノーブルの方が、
【黒の悪魔】を復活させて、世界を牛耳ろうとしていて…!」
後ろで聞いていたミチカが、
身を乗り出して、レンに声をかける。
それを聞いたレンはまた、
ゆっくりと顔を顔を伏せて
「ミチカも、【黒の悪魔】の味方か…。
…報告通り、だな。
モモナとアザミも、”そっち側”なんだろ?」
冷静な声で、淡々と話す。
次に、顔を上げたレンは、
もう、泣きそうな顔では無くなっていた。
「お前ら全員…
ヒマリのこと、狙ってんだな。
ヒマリを…
【黒の悪魔】の生贄になんて、絶対させない。
俺が、ヒマリを守る。」
レンが、真っ白な隊服の袖をまくり
右腕を、陽の光の下に晒し、声を張り上げた。
「勅令するーー!」




