転校してきた目的
転校してから一週間後・・・・。
教室からピアノを弾く音が聞こえてくる。
周りに誰もいない場所にある、ベンチに座りながら、リズムを取ってタイミング良く
声に出して歌った
「隠しもしなく なった愛♪」
事実を。
「別れのトラック 押し寄せる♪」
悲しさを
「消えない思いは 傷となり 貴方と共に歩む道♪」
目を瞑って、思い出す。
「いつからか傷を 包帯でー 隠す様 になったのか♪」
目をゆっくり開ける
「分かってはいるけど 分からない」
そして複雑な笑みを浮かべて俯く。
「偽りつくした現実と夢♪」
ターンと最後のドレミの和音が鳴る。
パチパチ
来るはずも無い拍手が後ろからする。
振り向けば、体育祭で私と戦った女性が一人姿を現わす。
「貴方は・・・あの時の!」
「こんにちはリリ・ハルスさん、良い歌いっぷりです。あっ私カイラス・リベン。貴方にやられた四天王の一人です」
笑顔で歩み寄って来るのが怖くて、ベンチ飛び越えて、ベンチの後ろにまわる。
あれもしかして私、殺られる?
「ど・・・・どうもです」
そろりと顔を出すと、彼女に爆笑される。
「そんな怯える必要あります?悲しいです。私より強い人が」
(悪い人じゃあないのかな?)
立ち上がり、面と向かう。
「・・・・・」
「・・・・・・」
彼女が先にベンチに座るので私も続いて座る、最初は、気まずかったけど
戦闘の事とかの話を持ち出してくれたから、こっちも気が緩んだ。
ああ、私は
転校して初めて笑ったかもしれない。優しい人、この学園にいるのが勿体ないくらい。
お互い馴染んで来た時に、失礼かもしれない事を聞いた。
「どうしてそんなに優しいの?この学園には勿体ない位にさ」
「敗者の気持ちを知ったから、自然と優しくなれた」
決して明るいとは言いがたい声で、呟く彼女に、私は察したけど
何も言えなかった・・・どう返したら良いか分からなかった事が少し悔しい。
「次は私の番だね・・・貴方はどうしてこの学園に来たの?」
「それは・・・・奪われた大事な人を取り戻しに来たんだ」
「どういうこと?」
「双子の弟がいたんだけど・・・。彼は少々特殊な人間なのがまず最初に言う事。
それで弟は私を庇って死んでヴィラスという化け物に成り果てたのが始まり」
"ヴィラスとは
負の感情の集合体もしくは、こぼれた魔力・術力の塊。生き物で遊ぶことを生きがいとしている悪で生物全体から殺されるべき化け物のこと"
「暴走させないように、無理矢理契約し、私の能力で抑えて事なきを得たんだけど、しばらく経った後に現われた奴が持つを箱に弟を封印するだけして去っていたんだ!!ああもう!思い出したら苛ついてきた!!」
"契約者
ヴィラスと契約できる者、ランクがあり、S,A,B,C,Dの適正ランクがある。B以上が安定しだす。
契約者はヴィラスと契約可能で基本は一人一体"
乱暴にポケットからこの学園の紋章のストラップを取り出し見せる。
「これが行方の道しるべ。ヴィラスハンターが落としていったもの。」
「!!・・・・なるほど、犯人は此処に居ると」
「そうそう」
ストラップをしまう。
「・・・・・・」
キンコーンカンコーン
終わりのチャイムが鳴り響く。
「そろそろ戻らないと、じゃあね、リリ・ハルスさん、また何かあれば・・・此方でも調べてはおくよ」
「!!あ・・・ありがとう、ほぼ初対面なのにこんな」
ニコリ笑って
「いいじゃない別に、甘えられる時に甘えといた方が良いよ」
なんて言って去って行った。
誰も居なくなったし、
「・・・・・。私も戻ろ」
私の居場所では無い教室に向かった。
教室に入ると、昨日まで埋まっていた教室の席が、一つだけ空席になっている。
相変わらずシカト状態だから聞かないけどさ、
昨日だっけ?、私に向けてバケツの水をひっくり返した子がいない気がする。
何でだろう?何かあったのかな?
なんて、いじめっ子のを事心配するなんてとんだお人好しだな私も。
気にせず授業受けよー。
椅子を引いて、席に着く。