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恋人

 日付が変わった夜中、昨日眠れなかったからか士郎はベッドの上で着替えもせずにうとうとしていた。

 もう脳がキャパシティを超えていた。考える事が億劫になったのだ。妹は妹なのだ。実妹か義妹かどうかは今の士郎には関係なかった。仲のいい理想の兄妹でいたかったのになぜ兄の気持ちがわからないと士郎は思っていた。

 やがて士郎が眠りにつくまで時間はかからなかった。


「ちょっと起きなさい、士郎!」

 真砂子の怒声で士郎は目が覚めた。

「な、なんだよ母さん」

「あんた優希に何言ったのよ」

「え?」

「落ち込んでいるのよ。元気がないの。あんたのせいじゃないの?」

 確かに心当たりが無い訳ではなかった。昨日の拒絶……あれか?

「とにかく優希に謝りなさい、はいすぐ行った!」

「わ、わかったよ」

 母の剣幕に士郎は従うしかなかった。

 真砂子によると優希はリビングにいるらしい。早速向かう。

 リビングに着くと優希がソファーに座ってうつむいていた。

「どうしたんだよ優希」

「お兄ちゃん」

 優希の目からぽろぽろ涙がこぼれていく。

「なんで泣くんだよ」

「だってお兄ちゃんわたしの事嫌いなんでしょ」

「はあ? なんでそうなるんだよ」

「わたしの告白に否定的だもん」

「俺がお前の事嫌いな訳ないだろ。たった一人の妹なんだから」

「じゃあ恋人になってくれる?」

「いや、それは……」

 士郎は答えに窮した。

「無理なんでしょ。お兄ちゃんと一緒になれないならもう生きる意味が無いよ」

 ここまで想われているのは予想外だった。だけど士郎はまだ納得していない。

「だけどお前、俺がお前の事『妹』として好きな事わかるだろ」

「わかるけど……」

「恋人にはできないけど、妹として愛している。それじゃ駄目か?」

「……」

「じゃあわかったよ。これからお前の為に別の恋人を一切作らない。それで駄目か?」

 妹を失いたくないからとっさに出た言葉だ。だが本心でもある。

「……本当に恋人作らないの?」

「ああ絶対作らない」

「……なら許してあげなくもないよ」

 優希が泣き止んだようだった。

 ふと士郎は考えた。言葉だけじゃ説得力足りなくないか?

「お前俺とキスしたいって言ってたよな」

「うん」

 士郎が優希の腕をつかんで、手の甲に軽く口づけする。

「お、お兄ちゃん」

「これが家族的妥協点だ。今はこれで許してくれよ」

「……わかった」

 優希の表情が暗くなくなったので士郎は安心した。大切な妹を失いたくなかったのだ。

「ほら元気出せ、俺はお前か一番大事なんだからな。」

「うん、お兄ちゃん」


 続く。


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